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最後のオンナ

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「そうですね、一番、説明に信憑性がある理由というと、そういうことになるんでしょうね」
 と、ななせは言った。
「それにしても、どうして君が、デリヘルなどやっているというんだ?」
 この質問は、本来なら、一番してはいけない質問だった、縁もゆかりもない、一度きりの相手だということであれば、そのことは、プレイには一切関係のないことだし、個人のプライバシーへの浸食になるからだ。
 女の子も一番言いたくない話であるのは、当然で、そんなことは、勝沢くらいになれば、当然のごとく分かっていることであろう。
 それでも聞くのは、勝沢の中で、
「彼女が聞いてほしいと思っているのではないか?」
 と感じたからだ。
 女の子としては、まず言い訳をしたいのではないだろうか? さっきまでは、つまり体面するまでは、立場としては、
「風俗嬢と客」
 という、縁もゆかりもないはずの相手同志だったはずだ。
 しかし、実際には、昼職の上司と部下だったのだ。これほど気まずいものはない。
 もちろん、これは、実の親と子だというのであれば、もっと気まずいだろうが、チェンジすればいいのだろうが、もっとも、問題はその後であろう。いくら、娘が成人していて、就いた職が風俗だというだけのことだが、さすがに親によっては、
「辞めさせよう」
 とするに違いない。
 上司にはそこまでの権限はないが、問題は昼職の方である。バラされてしまうと、ななせは、仕事をできなくなってしまう。今のままでも十分、精神的に痛手なのだが、まわりに知られさえしなければ、何とかなると思っていた。
 このショックも一時的なもので、
「昼職をクビになったら、どうしよう」
 という意識が強いだけだった。
 まるで今のななせは、
「俎板の上の鯉」
 のような状態で、目の前にいる男の言いなりにならないといけない状態だったのだ。
 勝沢はそのあたりのことは、最初から分かっていて、立場的には自分が絶対有利だと考えていたことだろう。

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 自分が呼んだデリヘル嬢が、会社の部下ということを考えると、本来なら、チェンジしてあげるのがいいのだろうが、勝沢は敢えて、チェンジをしなかった。彼女に何かを感じたからなのかも知れない。
 しかし、何を感じたのか、すぐには分からなかったが、少し見つめていると感じたのは、
「そうだ、ルナにどこかしか似ている気がするんだ」
 ということで、思わず口から、
「ルナ」
 という言葉が漏れた。
 すると、ななせは、急に怯えたようになり、
「ど、どうしてそれを?」
 というではないか。
「どうしてって」
 と言いかけて、勘の鋭い勝沢は、この狼狽えから、一つの仮説を立ててみた。
 それは、2段階によるもので、最初の段階は、普通に考えられることなのだが、それも、勝沢のように、風俗慣れしているから気づくものであって、普通の人だとなかなか気づくこともないに違いない。
 まず、勝沢が気づいたこととして、
「このオンナ、レズなんじゃないか?」
 ということだった。
「ルナ」
 という言葉は、レズビアンの隠語である。
 どこから来ているのか分からなかったが、想像するに、女性の身体には、男性にはない生理というものがある。それは、別名で、
「月経」
 と言われるもので、ほぼほぼ、月の満ち欠けに似ているということから、月が連想される。
 月のことを、ラテン語で
「ルナ」
 というが、その言葉を、そのまま、レズビアンの隠語にするというのは、
「ルナというのが、神話の世界では、月の神と言われているからではないだろうか?」
 と考えると、レズビアンというのも、神秘的なものであり、人間の営みが、男女のセックスが基本だというだけで、決して異常性癖ではないということを示しているのかも知れない。
 ただ、昔から、ゲイやレズというのは、隠しておく性癖として、自分がそうであるということを知られたくないという意味から、それだけで結婚するという人もいたくらいだ。
 いわゆる、
「偽装結婚」
 というものであろうが、それだけに、想像することすらタブーなのかも知れないが、逆にいえば、それだけ、人間の性癖として、古代から続いてきたものだと言えるだろう。
 レズの人からみれば、
「男女のセックスの方が、よほど汚らわしく見える」
 と思っているかも知れない。
 なぜ、自分たちレズやゲイだけが、異常性癖と言われなければいけないのか、納得がいかないに違いない。
 ただ、世の中の力関係としては、
「数の多い者が圧倒的に強く、いつの時代も、少数派は迫害されてきたのだ」
 といえるであろう。
 そんな状態を考えると、もう一つの妄想が頭に浮かんでくるのだった。
「まさかと思うが、ルナの相手は、このななせだったのではないか?」
 という妄想だった。
 だから、思わず、
「ルナ」
 と言った時に、必要以上にビックリしたのではないか?
 人間は核心を突かれると、条件反射のようになるという。さっきのななせは完全に条件反射だった。
 ルナと言われて、そこからレズの発想に行くまでには、いくつもの発想を経ることになるだろうから、ここまで一気に発想が浮かんでくることはないだろう。
 それを、条件反射のようになったのだから、勝沢の発想も無理のないことなのかも知れない。
 だとすれば、
「やりようによっては、ななせを自分のものにできるかも知れない」
 と感じた。
 さらに、ルナだって、同じではないか?
 そんなことを考えていると、勝沢の中の恐ろしい部分が顔を出してきた。
 勝沢は、この時以降。二人の女を蹂躙することに成功した。
 それぞれ一人ずつと遭うことの方が多かったが、たまに一緒に呼び出して、二人にレズプレイをさせて、それを見ているというレズ鑑賞や、二人に奉仕をさせる。ハーレムプレイのようなものも味わった。
「これこそ、男冥利に尽きる」
 と思っていたのだが、そのうちに、
「何か、これでも物足りない気がする」
 と思うようになった。
 それは、
「人間の欲望というものは、果てしないもので、追いかければ追いかけるほど、果てがないということを思い知らされる」
 と感じるのだった。
「二人を蹂躙して、いいなりにさせる」
 こんなおいしいことはないはずなのに、なぜか、すぐに飽きがきたのだ。
「これ以上の男冥利はないはずなのに、何に飽きが来たというのだ?」
 と感じた。
「何かのピースが一つ足りない」
 ということは分かっているはずなのだが、そのピースというのが、
「自分のことだ」
 と分かるまでに、少し時間がかかった。
 いかに、男冥利に尽きるといっても、相手が言いなりになっているのは、
「弱みを握られている」
 というだけのことだった。
 勝沢が、自分のための快感や、欲望を満たしているわけではなく、いわゆる、
「余興」
 として、演じさせているだけのものだろう。
 次第に、感動だったことが、自分の予想もしていなかったことで、独り歩きを始め、そのうちに自分が見えないところに行ってしまっているということに、そのうちに気づくことになる。
 それは自然に気づくというのが、一番平和なことなのだろう。
作品名:最後のオンナ 作家名:森本晃次