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最後のオンナ

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 あの時の女も、最初からあんなオンナだったわけではなく、やはり誰かに洗脳されかかり、そういうマインドコントロールの組織のようなものに取り込まれていたのかも知れない。
 ちょうど、デリヘルを最初に利用した時。ちょうど、そんなマインドコントロールを受けている時だった。
 だから、勝手な妄想をデリヘルに抱いてしまい、
「デリヘルなんて利用しないようにしよう」
 と思うのだった。
 相手の女の子が悪かったというわけではない。むしろ、よすぎるくらいだ。最初は、
「のめり込むことがなくてよかった」
 と、感じたのだ。
 だが、勝沢は、その時の経験が、
「よかったのか、悪かったのか?」
 と聞かれると、正直分からない。
 自分が誰かの弱みを握り、それをネタに相手を脅すなど、今までの自分では考えられないことだった。
 しかし、そんな恐ろしいことができるようになったものだ。きっと、その相手というのも問題ではなかっただろうか?
 しかも、その時の心情を思い出してみると、自分がどんな気持ちだったのかなかなか思い出せない。まるで、何かに吸い寄せられるように、悪の道に入り込んでいるかのような気がして仕方がなかった。
 その相手というのが、偶然で出会ったのだが、その偶然というのが、勝沢に、怪しげな気持ちを抱かせる、そんな雰囲気だったのだ。
 相手の女は、最初、とにかく怯えているばかり、そんな状態で、勝沢のSっ気が花開いたといってもいいだろう。
 最初、洗脳された時、
「俺が、こんなに女にびくつくなんて、思いもしなかった」
 と感じた。
 それまでは、彼女がほしいという感覚よりも、どちらかというと、余計な詮索をされたくないという思いから、それまでは、あれだけ欲しいと思っていた彼女をいらないと思うようになった。
 そもそも、風俗に行くようになったのは、
「彼女なんか作ると、自分の時間が脅かされるから嫌だ」
 と思っていたはずなのに、実際に、自分のことを好きになってくれるような女性ができると、それまで自分の時間と思っていたものが、
「この人のためだったら、俺の時間をやってもいい」
 というくらいまでに感じていたのだ。
 だが、実際に、付き合ってみると、女の方の束縛はひどかった。
 一緒に温泉に行ったりして、癒しの時間を共にできる相手だということは嬉しいのだが、自分がやりたいことを犠牲にしたり、何と言っても、何度か抱くと、正直、その身体に飽きがきたのだった。
 前述のように、ぽっちゃり好きの勝沢だけに、その時の彼女が小柄で、スリムだということもあり、
「胸は贔屓目に見て、Bカップ」
 という、いわゆる、
「ちっぱい」
 だったのだ。
 抱き心地もそれほど心地いいとは思えず、正直、身体の相性は、よくなかった。
 勝沢が、どうしてぽっちゃりが好きなのかというと、自分がスリムだったからである。
 身長は、そこそこ高いのだが、裸になると、肋骨が浮かび上がるかのような感じで、そこが自分にとってのコンプレックスだったのだ。
 だから、
「キレイなお姉さん」
 というと、その条件に、スリムだというのが、前提になると思っていた。
 もちろん、個人で感覚が違うので一概には言えないが、自分の中で、
「キレイなお姉さんタイプは苦手だ」
 と思っていたのは、自分の体形に対するコンプレックスだったのだ。
 豊満な身体は、何といっても包容力がある。それだけに、自分が包まれている感覚を快感だと思うことで、夢心地になるといってもいいだろう。
 実際に、今まで風俗で指名する女性も、ぽっちゃりが多かった。その包容力を堪能していたのだが、この時の彼女は何を思ったか、スリムな女性だった。
「風俗で、身体が満足させられるという感覚を味わえるので、彼女には身体ではない。別のものを求めよう」
 と思ったが、何を求めていいのかが、最初は分からなかった。
 だが、彼女と付き合い始めたのは、自分が好きになったというよりも、彼女の方が近づいてきたのだった。
「どうして、僕がよかったんだい?」
 と聞くと、
「あなたとなら、知的で高尚な会話ができると思ったの。私はそんなあなたに惹かれたのよ」
 というではないか?
「ああ、そうなんだ。俺が求めていたのは、そういう女性だったんだ。お互いに相性が合う人であれば、身体の関係だけではなく、付き合っていけるんだ」
 と感じた。
 しかし、実際につき合ってみると、彼女は、上から目線であり、しかも、理屈っぽいところがあり、話を聞いていても、話に脈絡が感じられない。
 要するに、
「考え方の相性が噛み合わない」
 ということだったのだ。
 性格的には似ているのかも知れないが、考え方が違っている。
 それを考えると、その女に対して、最初に抱いて知的なイメージは崩壊していた。
「妖艶な何を考えているか分からない雰囲気は、自分がもっとも、苦手としている女性ではないか?」
 と考えたのだった。
 そんな時、デリヘルで呼んだ女性が、少しぽっちゃりに見えた。ネットにて予約をしたのだが、その子が入ってきた時、お互いに、
「あっ」
 という声を発したかと思うと、お互いに気まずさがあった。
 その顔を見知っていたからだった。
「つかさ」
 という源氏名の彼女に対して、思わず、
「浅倉さん」
 というご存じの名前を呟くと、相手も、
「勝沢さん」
 と、勝沢の名前を口走った。
 勝沢はさすがに風俗慣れしていることと、自分の方が立場が上だということが分かっているので、すぐに気を取り直した。会社でも奇抜な発言や、風俗に通っているというウワサらしいものはあったので、彼女も、想定内のことではあっただろう。
 しかし、普段は真面目なOLだと、皆が信じて謳わないタイプのななせなので、絶対にないということはない風俗嬢との掛け持ちだったのだろうが、可能性としては、かなり低い状態での再会に、勝沢はビックリさせられたのだ。
「チェンジされますか?」
 と彼女は言った。
 さらに、
「チェンジされますよね?」
 としつこくいうので、
「いいや、君でいい」
 といって、ニンマリとした表情を浮かべると、ななせの顔に、急に恐ろしさがこみあげてきたのか、顔色が悪くなってきた。
「大丈夫さ。取って食おうなんてしないから」
 というのだが、その言葉に恐怖しか感じないだろう。
 そして、冷静になった勝沢は、自分の立場がおいしい立場であることに気づくと、普段よりも頭がさえていることに気が付いた。
「そうか、こういう時にためのチェンジというシステムか?」
 というと、ななせは、勝沢が何を言いたいのかピンときたのか、
「それだけというわけではないんですけどね」
 と答えた。
「確かに、前から思ってはいたんだよ。箱型。つまり、店舗型の経営方式だったら、待合室の様子を見ることで、自分の相手をする男性が、顔見知りであるかないかをそこでチェックできるだろうが、デリヘルのように相手のところに行ってしまうと、知り合いとの間で、こういう行為が気まずいと思った場合に何もサービスができないとなると、それも今度は客側が損になることになるからね。それで、ただで1回はチェンジできるようにしているわけだ」
 というと、
作品名:最後のオンナ 作家名:森本晃次