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最後のオンナ

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「俺に見る目がなかっただけで、デリヘルをこれ以降使うかどうか、不透明だ」
 と考えることであろう。
 その時来てくれた女の子は、正直、文句なしに見えた。
 服装の私服のセンスも、勝沢の好みだったし、声も雰囲気もすべてがストライクだった。
 だが、イチャイチャしていて、まるで夢のような時間を過ごしていると思っていたのだが、それよりも、相手が必要以上に、べたべたしてくるのである。
 イチャイチャは嫌いではないし、男として、冥利に尽きると思っている。だが、最初からグイグイくると、
「少しずつでも、距離が縮まってくれればいい」
 という思いの中で、どこか、すれ違いが起きているのを感じたのだ。
 それは、あくまでも、勝沢の思い込みであり、相手にすべてを望むのは酷なことだと分かってはいるが、
「どこまで、相手を思いやることができるか?」
 ということになると、結局、
「お金の関係でしかないんだ」
 ということを思い知らされる気がしたのだ。
「では、店舗型の店では、どうしてそう思わないのか?」
 と考える。
 店舗型というと、相手の部屋に、男性が遊びに行くというものであり、うがった言い方をすれば、
「彼女は不特定多数の男を自分の部屋に招き入れている」
 という感覚になり、人によっては、不潔なイメージを持つかも知れない。
 いや、そもそも風俗というのが、そういうものだと割り切っているから、通えたのだ。
 だが、風俗でも、デリヘルというシステムができて、
「男の部屋に、女の子がやってくる」
 というシチュエーションにワクワクしている人もいるだろう。
 デリヘルのシステムにはいろいろな意味がある。
「お店に行かなくてもいいということは、お店のスタッフと顔を合わせたくない人や、待合室で他の客と、気まずい気持ちになってしまうことを嫌だと思う人もいるだろう」
 と考える。
 待たされているとしても、自分の部屋という空間であることで、お店で待っている空気感とはまったく違うものがあるに違いない。
 実際に店で待たされている時というのは、最初の頃は嫌いだった。
「決まっている時間の前に、自分の気持ちの高ぶりが鈍ってしまったりすると嫌だな」
 という感覚になるだろうと思ったからだ。
 だが、通うようになってから、少し変わってきた。待っている間のドキドキも、楽しみのうちだと思うようになったのだ。
 待っている間というのは、前だったら、それこそ、貧乏ゆすりをしていたり、もし、タバコを吸うのであれば、何本も吸ってしまうことになるだろうと思えた。
 イライラが募ってきて、次第に堪忍袋の緒が切れてきているようで、一度キレてから、再度結びなおしてから、やっと、ご対面ということもあった。
 だが、女の子とご対面すれば、それまでのイライラはどこかに行ってしまっていて、彼女の笑顔が、最高の癒しだと、再認識することになるのだ。
 ご対面してしまえば、それまでのイライラが一気に消えてしまう。実に、
「男というのは現金なものだ」
 といえるのだろうが、それだけに、
「ご対面の時間の至高の悦びが、すべてではないか」
 と思うのだ。
 もちろん、個室に行ってからの会話や癒しプレイが一番のハイライトなのだ。何しろそこから拘束時間が発生しているのだから、当たり前のことである。
 だが、それだけをすべてだと考えるには、若干の寂しさがある。
 コスパという点からいけば、その時間でも十分なのだが、いやむしろ、十分でない店であれば、次からはいかないといってもいいだろう。
 もう一度その店に行きたいと思うのは、コスパもさることながら、
「あの子がいるから、また通いたい」
 と思うのだ。
 だが、前述のように、人間には飽きというものがあり、どんなに魅力的な人でも、すぐに飽きが来てしまう人だっているだろう。
「美人は三日で飽きる」
 というのは、まさにそのことで、自分が好きになった人のことを、一生好きでいられるか?
 ということを考えると、自分で疑問に感じてしまうのだった。
 そもそも、風俗の女性以外を好きになることはないと思っている。もちろん、そんなことを他人に話せる気はしないし、
「誰かに話して、分かってくれるわけもない」
 と思うのだった。
 それは、自分が、ある時、好きになりかかった女性がいたのだが、その女性のマインドコントロールに引っかかってしまい、相手が、してほしいことを洗脳されかかったのだが、結局洗脳できなかったことで、そのまま捨てられることになったのだが、それはそれでありがたかった。もし、そのままそのオンナと付き合っていれば、言いなりにされるままに、そこで人生が終わっていたかも知れない。
 そんな大切な人生の節目があったのだが、相手があまりにも、リアルさがなかったことで、余計に、
「まるで夢だったようだ」
 と感じるようになったのだ。
「俺があんなに簡単に、洗脳に引っかかるなんて」
 と感じた。
 その女がどんな手を使ったのか分からなかったが、オンナは寂しさから、自分を好きになってくれる男性を探していたようだ。
 どうして、お互いに引っかかったのか分からないが、女の張り巡らせた網に引っかかってしまったのだろう。そんな状態で、何か引っかかったのか、彼女が途中で急変した。そして次第に、勝沢を追い込んでいき、最期にはノイローゼ状態にしてしまい、もう少しでお金まで騙し取られるところだった。
 そこまではなかったのでよかったのだが、そのおかげで、普通の恋愛が怖くなったのだ。
 何が原因で女は怒りだすか分からない。こっちが気を遣っていても、結局、反対のことを考えていると、オンナというものは、孤独になれば、自分のことしか考えないといってもいいかも知れない。
 もちろん、究極の考えだが、その女は、相手を洗脳するという特殊能力で今まで生きてこれた。
 なぜなら、彼女は心の中に致命的な何かが宿っていたからだった。その何かというのが、不思議な力を作り出すのだが、それが利く相手というのは、限られているようで、勝沢威は利いたようだ。
 勝沢にとって、その女の魅力だと思っていたことが魔力だった。
 もっとも、最初から彼女のことを好きだったわけではない。一時でも、
「愛している」
 と感じたのは、ウソではない。
 ただ、それは正直一瞬だった。
 自分でも、本当に愛しているなどという感情があったのかどうか疑わしい、何しろ、愛情というよりも、恐怖と、洗脳による感情の起伏が、
「一体、あの時の俺は何を考えていたのだろう?」
 と、思われても仕方がない。
 恐怖は一気に駆け上り、自分が抜けられない恐怖に叩き落されたことに気づくと、
「俺は洗脳されているんだ」
 と感じると、さらに恐怖が駆け巡る。
 ただ、果たして相手の女に、勝沢を洗脳しているという意識があったのだろうか?
 勝沢はその時、自分でも分からない何かが取りついたような気がした。その取りついた何かのおかげで、その時、その女から洗脳されることで、身を滅ぼさず医済んだのと、お金を騙し取られずに済んだということでもあった。
「ひょっとすると、俺にも、誰かを洗脳する力が身についたのかも知れない」
 と思った。
作品名:最後のオンナ 作家名:森本晃次