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最後のオンナ

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 そんなルナがレズに最初に嵌ったのは、大学時代だというから、もう、20年近くも前のことだろう。
「私ね。元々、レズの気があったと思うの。それを先輩に見抜かれたのよね」
 というではなにか?」
「どうして分かったんだろうね?」
 と聞くと、
「どうやら、私は、隠し方が下手というか、露骨に見えたらしいの。レズを隠そうとして、必死に、男性に媚を売っている姿を見ると、その健気な様子が、却って滑稽だったって、言われたわ」
 という、
「それがレズの相手だったと?」
「ええ、最初に教えてくれた人。その人がいうには、素質があるっていうのよ。私には、何がなんだかわかっていなかったのね。正直自分ではレズだとは、その時感じていたわけではなかったからね」
 という。
「その人がルナにとっての、いわゆる先生だったわけだね?」
 と聞くと、
「ええ、そうね、だけど、その人は精神的な先生だったって言えるわね、あの人は決して、私を開発しようとはしなかった。しかも、レズだということを看破したくせに、その後はしばらく、レズについての話題を一切出さなかった。私としては、言われれば気になるじゃない? でも、一切触れようとしないから、却って気持ち悪いわけよ、そのくせ、その時から私に対しての視線がすごいの、だけど、それは私の勘違いだったのね」
 というではないか。
「どういうことなんだい?」
 と聞くと、
「その視線は、私の被害妄想だったの、別にその人は私をオンナとして見ていたわけではないのよ。それよりお、女性として見ていたというのかしら? その発想が私の中の隠れていた、女性に対しての女の部分を引き出すことになったのね、今でも、その時のその人の視線が私のレズ性を引き出したのが、本当にその人の死戦だったのかどうか分からないんだけどね。でも、私はそう信じているし、そう信じたいというところかしらね?」
 とルナは言った。
「ルナが、その話を今しているということは、その時の答えが、最近になって分かってきたからだと思ってもいいのかい?」
 と聞くと、
「ええ、そうなの。今までにいろいろな女性とレズをしてきたけど、最近になって、私を顧みることをさせてくれる人が現れたことで、自分でも、今までにない何かが現れたということを感じたのね」
 というのだ。
 その時から、自分では、
「レズに目覚めた」
 と思っていた。
 しかし、自分が、
「タチなのかネコなのか?」
 どちらなのか分からないということだった。
 レズビアン用語では、
「タチというのが、責める役」
 そして、
「ネコというのが責められる役だ」
 ということで、最初はいろいろ試してみたが、分かったこととしては、
「自分が相手によって、タチにもネコにもなれる」
 ということであった。
 それを知った時、一瞬不安がよぎった。それは、
「自分が器用貧乏で、どちらも行けることで、最終的に中途半端に終わってしまい、結局パートナーを見つけられ会いのではないか?」
 ということであった。
 実際に、それまで身体を重ねてきた、レズの相手からは、
「あなたとは、ペアになれる気がしないの」
 と言われ、一抹の寂しさを感じさせられてきた。
 だから、自分が与える方であっても、与えられる方であっても、徹することができないのであれば、
「この先、レズとして生きていくことは、自分でいばらの道に足を突っ込むようなものではないか?」
 と感じてしまうと思うのだった。
 そのせいで、レズということに気づかせてくれた、大学時代の先輩を、憎むことすらあった。
「あの時、私の余計なことを言わなければ、私がこんない悩むことはなかったおに」
 と感じたからである。
 しかし、その考えが一番いけないのだった。
 そもそも、人に言われたからといって、それは気づかせてくれただけのことであって、自分だって、そのことに感謝こそすれ、怒るなどということはなかったではないか。
 もし、あの時、
「余計なことを言われた」
 と思ったのだとすれば、少しは、
「あんなこと言わなければ、こんな気持ちになどなるわけはない」
 と思ったものだ。
 だが、その時の気持ちがあるから、今回自分の性癖が分かったことで、自分が器用貧乏だと思ったのだ。そうでなければ、もう少し楽観的に考えるだろう。
「楽観的に考えることが、レズの深みに嵌るということを、自ら知ったのだ」
 とルナは自覚したのだった。
 かといって、ポジティブに考えることが、いいというわけではない。
 ポジティブと、楽天的という言葉は意味としては似てはいるが、若干違っている。ネガティブならまだいいのだが、楽天的だということであれば、躁鬱症の躁状態のようであり、ハッキリと前が見えていない状態であり、下手をすれば、
「遠くの方は見えているのかも知れないが、目の前のことに気づくことはない」
 というような、前述の、
「灯台下暗し」
 と同じになってしまうのではないだろうか?
 つまり、
「まわりのことは分かったとしても、自分のことだけは、どうしても分からない」
 というような感じになりはしないかということである。
 しかも、自分がレズであるということを知らされたのは、自分で自覚したわけではなく、まわりから言われたのだ。
 普通であれば、人への助言というのは、あまりしないのが世の中なのに、敢えていうということは、それだけ、ルナのことが、気になったのか、心配に感じたのか、そのどちらかなのであろう。
 そんな、迷走を繰り返している時、ルナの前に現れた女性がいた。
 彼女は、同じレズだったが、完全にネコだったという。ただ、ネコというのはレズの間だけであり、実際に、女の子同志として話をしている時などは、完全に相手の女の子が主導権を握っていたという。
 だからこそ、その女性がいうには、
「そんなに、タチだネコだといってこだわる必要なんかないのよ、あくまでも、お互いの相性がどのように合うかどうかというところが問題なだけなんだからね」
 と言われたという。
 確かに、普段と行為の中で、これほど、豹変するといってもいいほどに変わってしまう相手も珍しい。彼女を知り合うまでも、回数はかなり少なかったが、レズを求めていたことは確かなようで、実は、地下でやっているレズのお店というのがあり、そこでは、ルナのような自分を分からない人が集まってきては、行為を行ったり、パートナーを探したりしていた。
 元々はバーのようなところで、
「なぜかうちには、引き寄せられるように、レズのお客さんが来るようになったの。だから、地下で、レズを救済するようなこともしているのよね。あくまでも合法ではないだろうから、地下ということね」
 といっていた。
 当然届けているわけでもないし、ただ、風営法に則った形をとっているので、大っぴらに違法だとは言い切れないだろうが、曖昧なところで、
「疑わしきは罰せず:
 ということで、違法行為にならずに、営業ができているのだが、
「類は友を呼ぶ」
 というのか、オーナーがレズということもあって、
「レズが集まってくる」
 ということで、裏の世界では有名だったようだ。
作品名:最後のオンナ 作家名:森本晃次