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最後のオンナ

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 などというものだと自分では思っている。
 特に、世界的なパンデミックが起こってからというもの、
「まわりと距離を持つ」
 あるいは、
「人と接しない」
 という行動制限などが起こってからは、ちょっと前からあった、
「一人カラオケ」
「一人焼き肉」
 などと、ソロ活がそれこそ、ブームになってきて、
「これって、遅れてきた、俺の時代なんじゃないか?」
 というようなことを考えたりもしたものだ。
 だが、
「一人でもいい」
 と思うようになったのは、風俗に通うことで、その個室という雰囲気が好きだからだろう、
 もちろん、女性と二人きりの部屋ということもあるが、待合室で待っている時間、そして、久しぶりに会ったその時のリアクション、すべてが新鮮だった。
 実は、たまに、初めての女の子を指名することもある。別の店でのことなのだが、それは、
「オキニにバレたくない」
 という思いもあるが、それよりも、
「他のまったく知らない店で、一から新鮮に知り合いたい」
 という思いがあるからだ、
 その時は、店に行く前から、店についてからも、そして待合室の時間であっても、そのすべてが新鮮で、待っている間でも、待たされているという感情ではなく、楽しみを感じているという待ち方をしていると、それこそが新鮮だというものである。
 だから、最近の勝沢は、
「新鮮」
 という言葉を、やたら使い始めた。
 それは、心地よい気持ちを総称していう時であったり、曖昧な気持ちを表す時、そして、自分でどう表現していいか分からない時にも使えるという意味で、
「便利で都合のいい表現」
 だと言えるだろう。
 しかし、そんな言い訳じみた意味ではなく、本当に、
「新鮮という言葉自体が新鮮なんだ」
 という、まるで禅問答なのか、笑い話なのかと思えるような、どちらとも取れるという意味で、幅広いというところに結局戻ってくるという、
「魔法のような言葉だ」
 といえるのではないだろうか?
 そういう意味でも、彼は、新鮮という言葉が好きだった。
 そんな彼女が話していたのは、ある意味、
「ビックリな告白」
 であった、
 それを言い方を変えると、
「カミングアウト」
 とでもいうのだろうか、彼女のカミングアウトは、
「私ってレズだったのよ」
 ということであった。
 レズというと、
「百合」
 という言葉でも表されるし、
「ルナ」
 という言葉でも表されるという。
「そうか、そういうことで、君は、ルナだったんだね?」
 と、勝沢は納得した。
 彼女も、勝沢なら気づくだろうということを最初から分かっていたのか、それを言われて、ニンマリと笑顔で応じたのだった。
「ええ、そう。お察しの通り、レズの隠語である、ルナという言葉を私は源氏名に使った。ひょっとすると、ゆりだったり、ルナという源氏名を使っている人の中には、同じことを考えている人が多いかも知れないわね。もっとも、自分から源氏名を選べる人で、最初から店で決められる人は、そうもいかないでしょうけどね」
 といって微笑んでいた。
「どうして、それを今の僕にいうんだい?」
 と聞くと、
「だって、あなたなら、きっと私のことをすぐにわかるだろうと思ってね。あなたに見透かされるくらいなら、こっちからさっさと明かした方がいいもの。これはあなたとの間の一種の知恵比べのようなものよ」
 と、今度は怪しく笑った。
 なるほど、ルナという女は、客とキャストというだけではなく、たまに、挑戦的なところがあった。
「私はね。あなたのような知的な男性を見ると、挑戦してみたくなるの。それは知的センスを争ってみたいというのか、私の抵抗のようなものというのか、あなたになら分かってもらえると思っているわ」
 確かにルナが挑戦的なところがあるのは前から分かっていた。
 その挑戦的なところというのがどういうことなのか、正直ハッキリと言えるところではなかったが、ルナの身体の相性も、どこか、ルナがこちらに合わせているようで、時々、身体をくねらせて、抗っているように感じた。
 これが、他の女であれば、じらして、こちらを挑発しているかのように見えるのだが、ルナは、抗って見えたのだ。
 それがどこから来るのか分からなかった。ルナという女性は、挑発はしてきても、抗うことはないと思っていたので、その態度は正反対だった。
 しかし、彼女がレズだと分かると、どこか、勝沢に対して、オンナにはありえない反応があり、それが抗うことを示していると感じていたのだろう。
 レズといっても、男を受け付けないという人ばかりではない。ルナのように、二刀流もいるのだ。
 しかも、ルナの場合は、仕事上。男を受け入れているだけだというわけではない。もし。そうであれば、きっと最初から、オンナがレズであるということは、勝沢くらいになれば分かるというものだ。
 勝沢にとって、
「レズの女性と絡むのは初めてだが、それが風俗嬢というのは実に俺らしい。なぜなら、俺が風俗嬢以外の女を相手にしないからだ」
 という分かり切っていることを思い出させた。
 それだけに、ルナからすれば、カミングアウトだったのかも知れないが、勝沢からすれば、カミングアウトでも何でもない。
「俺が、風俗嬢だけしか相手にしないという方が、ある意味よほどのカミングアウトなのかも知れない」
 と感じるほどだった。
 そのことを、ルナは知る由もないのだろう。
 今までの、レズ経験について、話し始めた。限られた時間内ではあったが、何度も相手をしてもらっている相手、その彼女のカミングアウトであれば、限られた時間など、関係ないと、勝沢は思うのだった。
 ルナは表記上の年齢は、25歳だった。
 ということは、
「大体、30歳残後うらいだろうな」
 と、勝沢は感じていた。
 店にも、嬢にもよるだろうが、
「大体公表年齢の5歳くらいは上だろう」
 と思っていた、
 ルナの落ち着きを見ていると、30代と言われても十分な気がしているし、話をしていて、時々年齢を匂わせる会話では、30代でなければ分からないような話も出ていたからだった。
 勝沢は、あまり、嬢の実年齢にこだわっているわけではない。ただ、気になるとすれば、会話を合わせたいと思う時、大体の年齢を知っている方が便利だと感じる。そういう意味で、ルナとの会話で30代を匂わせるのを感じたので、30代に合わせたような会話をしていたのだ。
 それに、35歳近くの勝沢からすれば、25歳と言えば、世代がひと昔違う、会話が10歳違いと5歳違いということの違いが分かっていれば、話の仕方も変わってくるというものだ。
 勝沢が、相手の女の子の年齢を気にしない人間だということを、ルナの方も分かっているので、敢えて、年齢を隠そうとはしない。しかし、自分から敢えて、年齢を明かすようなことをしないのも、ルナという女の魅力の一つなのだと思うのだった。
 彼女は、どちらかというと、そのさりげない態度で、相手に気を遣わせないようにしているというのが見て取れた。
 そのことは、勝沢も分かっているので、その気持ちが、恰幅の大きさを感じさせ、気持ちいいくらいに、相性が合うと感じていたのだった。
作品名:最後のオンナ 作家名:森本晃次