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風俗の果て

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 左右をキチンと見渡している。それが、その県での、
「交通常識」
 となっていた。
 もちろん、一部の人間たちのルールなのだが、なぜか、皆が守っている。自然と身についた常識だったのだろう。
 躁鬱のサイクルは、信号とは逆である。
「鬱状態から躁状態に変わる時、まるで、トンネルから抜ける時のように、光が差してくるのが分かると、そこから先、徐々に明るくなってくる。それが、信号機の黄色の状態である。しかし、躁状態から鬱に変わる時というのは、一気に奈落の底に叩い落される感覚であった」
 というものである。
 この発想は、
「躁状態が、青信号、鬱状態が赤信号」
 と考えてのことだが、この考えに異論がある人は、まずいないだろう。
 そう考えると、黄色信号の存在理由が、躁鬱と実際の信号機では真逆なのだ。
 奈落の底に叩き落される前に、心の準備として、黄色信号がある、信号機と、いきなり奈落の底に叩き落す躁鬱症では、まずそこが違っている。
 さらに、青になる瞬間に、いきなりの発射を容認する信号と、躁状態に持っていくために、ワンクッションある躁鬱症とでは、
「それだけ、躁鬱症というのは、精神においての葛藤を描いているのかということを表していて、信号はただのルール漬けにおいての、シグナルでしかない」
 ということになるのだ。
 躁鬱症は、それだけ難しい精神疾患であり、ひどい人ではノイローゼのようになり、薬物依存してしまったり、それが高じて、幻影を見るようになると、自ら気づかぬうちに、命を落としているかも知れないと言えるのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「躁鬱症というのは、本当はシグナルであり、何か他の問題を引き起こさないようにするための、警鐘のようなものではないか?」
 というような、飛躍した考えに至ってしまう。
 だが、決して無理な発想ではない気がする。
「躁鬱症が、堂々巡りを繰り返すというのが、負のスパイラルでない限り、ずっと現状維持をしているということで、悪くもならないが、よくもならないということになり、そう考えることが、警鐘という発想を生むのではないだろうか?」
 と、考えられるのであった。
 そんな躁鬱症であるが、
「発展形の躁鬱症が堂々巡りを繰り返しているのであれば、自己嫌悪も堂々巡りを繰り返しているのではないか?」
 と思った時、この発想が、前述の、
「負のスパイラル」
 に結びつくもので、
「グルグル回りながら落ちていく、螺旋階段のようなものが、負のスパイラルだというのであれば、まさに自己嫌悪は、負のスパイラルなのではないだろうか?」
 と考えられるのだった。
 そんなことがあってから、マサムネはフリーでは行かなくなった。気になる女の子がいれば、最初から予約を入れておく。もし、それが初めての女の子であっても、自分が選んだのだから、もし地雷だったとしても、その責任は自分にあるというものだ。
 実際に、それから地雷を踏んだこともあった。
「ああ、失敗した」
 と思う時は、パネマジだったことを認識した時だ。
 マサムネは、女性を見る時、風俗の女性に限らず、見る視点は変わらない。
「顔と雰囲気から、その女の子の性格を見抜くようにしている」
 ということで、人は、
「女性は顔ではない性格だ」
 というが、マサムネにしてみれば、
「顔を見て、その人の性格を判断しているのだから、その言葉は半分当たっているが、半分外れている」
 と言いたいのだった。
 ただ、風俗のお店ではなかなか難しい。お見合いなどのように、顔をハッキリと見れるわけではないからだ。ぼかしが入っていたり、口元や、目のラインを隠していることがほとんどだからだ。
 だが、それは当然のことである、なぜかというと、彼女たちの一番恐れているのは、
「身バレ」
 だからだ。
 中には、学生だったり、昼職と掛け持ちしている女の子もいる。親や上司にバレてしまうと、自分の立場が亡くなってしまう可能性があるからだ。昼職の中には、職務規定に、
「副業禁止」
 というものが謳われていれば、仕事が何であれ、退職理由になってしまうだろう。
 そんな状態において、女の子が身バレをしないように、
「箱型」
 と呼ばれる、店舗を持った店は、結構注意を施している。
 まず、どんなに混んでいない時でも、客は待合室に通される。
 どこにあるのか分からないが、マジックミラーなのか、小型カメラなのかが仕掛けてあり、女の子が見れるようにしているという。
 なぜそのようなことをするかというと、完全に身バレ防止である。
 女の子が、自分を指名してくれた男性を見て、知り合いではないと分かると安心してサービスができるからだ。
 ただ、これは店舗型でしか通用しない。デリヘルなどのように、ホテルに呼び出された場合は、こちらから赴くので、相手の様子を見ることはできない。
 デリヘルのような場合は、さらに恐ろしいことになる可能性もある。
 店舗型であれば、お部屋には、ベッドの近くに、緊急ブザーがついていたりして、何かあった時、ブザーを押して、スタッフを呼ぶこともできるが、ホテルへの派遣であれば、待っているのがどんな人間か分からない。
 テレビドラマや、Vシネマなどで、よくあるのが、女の子が危険な目に遭いかけるというようなシーンだった。
 それでも、デリヘルの方がいいというのは、どういう理由なのか分からないが、深夜というのもいいのかも知れない。
 そもそも、営業時間というのは、箱型のお店と、無店舗では違っている。
 風営法では、店舗を持っている店の営業時間は、
「午前六時から、午前0時まで」
 ということになっている。
 しかし、デリヘルなどの、派遣型は、
「24時間OKなのだ」
 ちなみに、風営法が、風俗関係の一番上の法律ではあるが、それはあくまでも、基本というだけで、実質的に守らなければいけないのは、
「各都道府県などが定める自治体における条例」
 というものに掛かってくるのだ。
 つまり、風営法で定められた範囲内で、各自治体が、風俗営業の条例を作成し、それが、その自治体範囲内での、
「法律」
 となるのだ。
 だがら、それぞれの自治体で、営業時間や様々な特別がある。
 例えば、
「この地区以外で性風俗の特別営業を行ってはいけない」
 さらには、県によっては、
「わが県では、ソープランドを開業してはいけない」
 などという法律が、その自治体ごとに決まっているのだ。
 さらに、風営法の基本としてあるのが、
「新規参入は許されない」
 という問題がある。
 だから、一つの店が、拡張といって、別館を作ったり、他の県で営業していたところが、地域拡大で、この地域に新店を作るというのも許される。
 ある店が撤退して、そこに新たに他の店が入ったとしても、老朽化は別であるが、そうでなければ、大規模拡張はできない。まるで、新規開店だと思われるからだった。
 そんな風営法と、各自治体における条例によって、風俗業界は成り立っている。マサムネは、風俗に通うようになってから、自分なりに勉強した。
「女の子との話題にも使えるしな」
作品名:風俗の果て 作家名:森本晃次