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風俗の果て

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 トイレに行くのも同じようなもので、他で済ませていても気になってしまう。気分が高ぶってきている証拠だろう。
 そして、女の子を待つことになるのだが、あれが、今から20年近く前だったので、待合室でも、平気でタバコを吸っている連中がいた。むしろタバコを吸わない方が珍しいくらいで、
「こんなに、気持ちが高ぶっているのだから、タバコを吸うようなやつらは、気持ちの高ぶりを喫煙で晴らそうとするだろう。煙たくて仕方がない」
 と思ったものだ。
 しかし、こっちも、気持ちが高ぶっている。いつものようなタバコへの嫌悪感は、そこまではなかった。そういう意味でも、待合室での時間、最終的には嫌いではないところまで来ていたのだ。
 残りの5分くらいが、前半と後半に分かれてはいたが、その分かれ目がちょうど半分だったというわけではなかった。実際に時計を見たので、自分でも分かっているのだが、最初が4分、後半が1分、とかなり時間に差があったのだ。
 それでも、半々に感じたのは、最期の5分というのが、最初から分かっていたわけではなかったからだ。
 最初の4分が過ぎた時、これを半分だとすれば、
「ああ、まだあと4分待つことになるのか?」
 と思っていたら、1分だったというわけだ。
 しかし、感覚的には、前半と後半で同じくらいの時間だった。それは、やはり、
「最後の時間が不確定だったということが原因でもあるが、やはり、最初から、前半と後半が同じ時間だということを、自分の中で最初から感じていたのが原因なのではないだろうか?」
 と感じたからだろう。
 そういう意味で、
「最期の時間がさらに続いていれば、どうだったのだろう?」
 とも感じる。
 しかし、それはあくまでも、結果論のようなもので、
「きっと、時間が違ったとしても、同じ感覚だったような気がする」
 と感じる。
 あくまでも、後半の時間の感覚を思い出す時、その基準となるのが、
「前半の4分間」
 だったのだ。
 だから、それを意識しなければ、最初から、1分であろうが、4分であろうが、そんなに変わりはない。要するに、
「実際の時間というよりも、架空の時間の方が、余計に長く感じるものなのではないだろうか?」
 ということになるのだと、マサムネは感じるのだった。
 マサムネが、そろそろムズムズし始めた頃、待合室の扉が開いて、
「お客様、お待たせいたしました」
 といって、店員が呼びにきた。
 他の客がいる時は、その客の前に跪いて、小声で案内していたのに、今度は入り口からあまり入ってこないところから普通の声で呼ぶのだ。
 ちょっと拍子抜けした感覚だったが、それ以上に高ぶった気持ちがちょうどいい時間で解消されたことはうれしかった。
「どうぞ、こちらに」
 といって、また受付に戻ってきた。
 ついこの間、同じようにしたから憶えているはずだったのに、感覚としては、まるで初めてのようだった。
「まずは、こちらに立って、注意事項をご確認ください」
 といって、事務的に、実に簡単に、店員が、禁止事項を軽く流しながら言った。
 ここで、変に強調してしまうと、せっかく客が気持ちを高ぶらせているのに、萎えさせることになっては、元も子もない。そのせいでその客が二度とこなくなったりすれば、これは大きな問題だ。
 しかも、これから女の子と相手をするのだ。男のほうだけではなく、女の子の方としても、いきなり萎えられてしまうと、
「私に魅力がないのか?」
 ということを感じないとも限らない。
 それが、普通に女の子の感覚なのか、それとも、この商売をしていての、いわゆる、
「プロ意識」
 というものによるものなのか、どちらにしても、女の子もあまり気分のいいものではないはずだ。
 それを思うと、店員も、そこまで執拗に注意することはなかった。あくまでも、建前として言っているだけだということは、よく分かったのだ。
 ただ、客としては、気持ちを再興に高ぶらせる瞬間となっているのは分かっている。
 というのも、女の子と対面してしまうと、そこからは、今度は別の時計が作動して、いよいよ別の世界にいざなわれるということが分かっているからだった。
 店員が分かっているかどうかまでは分からないが、客もそれぞれいろいろな人がいるだろうから。感じることは微妙に違うだろうが、女の子を前にすれば、皆一通り、そんなに変わらないのだろうと思うのだった。
 店員の説明が終わり、段取りもいよいよの時間になってきた。
「カーテンの向こうに女の子はいますので」
 ということで、興奮は最高潮、
 まだカーテンも開けていないというのに、
「この瞬間が、一番の楽しみなんだ」
 と、一瞬だけ感じるのだが、それも、カーテンを開けてしまうと、すべてが終わってしまう。
 そこにいる女の子がいくら想像した通り、いや、それ以上でも、見てしまうと、本当の最高潮の山を越えたことを感じるのだ。
 その時、感じた思いは、
「ああ、パネマジだった」
 という思いである、
 清楚風に見えたが、見た感じは、いかにもプロという雰囲気が醸し出された。
「第一印象だけで決めてしまっては、相手に可哀そうだ」
 ということで、さすがに、第一印象で、判断するのはいけないと思い直し、彼女に連れられながら、お部屋に向かった。
 その日は、最初に来た時から、ひと月ほと経ったところだったので、まだ部屋の雰囲気などは頭の中に残っていた。
 確かにあの時と同じ感覚の部屋が目の前に飛び込んできたのだが、しかし、
「前の時に比べて、一回り狭いような気がするな」
 と感じたのだ。
 今まで暗い通路を歩いてきたが、部屋に入ると明かりは普通だった。
 彼女の雰囲気はあくまでも、普通で、大げさに喜んだり、媚びてきたりというようなことはない。
 風俗雑誌などを見ると、
「女の子によっては、必要以上に媚びてきたりして、相手をその気にさせるかのような、素振りを示す人がいる」
 と書いていたが、彼女にはそんなことはなく、普通に接してくれた。
 少し寂しい気がしたが、それは最初だけで、気さくな方がお互いに会話がしやすいというものだった。
 好きな女の子は、
「落ち着きのある女の子」
 であったり、
「べたべたしてくるような女の子」
 と、正反対の子が気になったりした。
 ただ、タイプとしては、ぽっちゃり系の女の子が好きで、それは、
「抱き心地がいい」
 というのが一番の理由だといってもいいだろう。
 最初の時の女性は、結構気が強そうで、落ち着きがあり、こちらが童貞であることを明かすと、
「まあ、それは嬉しい」
 といって、いとおしそうに愛してくれたものだ。
 ただ、その間に、辛辣な言葉もあった。いや、辛辣というと彼女に失礼だ。風俗嬢として、
「お客としての最低限のマナー」
 を教えてくれたのだ。
 爪の手入れだとか、風呂か、シャワーを来る前に使っておく。そして、女の子を乱暴に扱わない。
 ということで、
作品名:風俗の果て 作家名:森本晃次