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風俗の果て

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 それまでは、付き合ったといっても、まるで、中学生カップルの延長のようで、
「お互いに未経験」
 ということで、お互いにそのことを相手に話をしていた。
 最初、お互いに、
「なんて正直な人なんだ」
 ということで、感動したのだ。
 それをお互いに会話の中で話したのだが、それも、どこかあざとさが感じられた。
 もちろん、それは後になってからのことだったが、お互いに初体験。中学生じゃあるまいし、大学生で初体験同士、あとになって思えば、少し滑稽なくらいだ。
 だが、その時は真剣だった。
 それだけに、どちらかのバランスが崩れれば、お互いの気持ちが行き違い、気持ちの崩壊はあっという間のことだったのだ。
 しかし、それを最初に分からなかったのは、無理もないことで、
「気持ちと身体のアンバランスが、どちらかが、平衡感覚を失うと、お互いの気持ちの崩壊もあっという間のことなのだ」
 といえるのではないだろうか?
 その時、すぐに別れることになった。
 別れを言い出したのは、相手からだった。その時、マサムネは、正直、
「助かった」
 と感じた。
 自分から言わなければいけないのであれば、果たしてどういえばいいのかって考えていたからだった。
 それに、マサムネに、
「オンナをふる」
 などという勇気があるはずもなかった。
「相手が、自分に対してしてくることに対し、それに対応する」
 というだけでも大変なのに、自分から、考えてするということに対しての責任を負うことができないとも考えるのだった。
「気持ちと身体のアンバランス」
 というものが、嫉妬という気持ちを生み出すのだとすれば、そこに何が待ち受けているのか、分かってくるのが、
「大人になるということ」
 なのかも知れないと感じるのだった。
 そんなマサハルが、40歳くらいになると、また風俗通いを始めた。
 元々、風俗通いを始めたきっかけとなったのは、大学の時の、童貞だった時、
「自分だけが取り残され、しかも、出かけた連中は、できたのかできていないのかすら分かっていない。そんなモヤモヤした感覚が、身体に何かくすぐったさのようなものを印象として残してしまったことで、風俗という、自分にとって、それまでアブノーマルだと思っていたことに嵌ってしまったのかも知れない」
 そんな風に思うようになると、それまで、半年以上も行っていなかった風俗に行ってみようと思うと、
「善は急げ」
 で、すでに足は向かっていた。
 そもそも、半年くらいしか空いていないのに、
「こんなに久しぶりだったんだ」
 と感じるのと同時に、逆に今までそのことを忘れていた自分に対しての矛盾を感じることがどこか滑稽な気がした。
 それもやはり、
「時間の感覚がまったく違ってしまっていることが影響しているに違いない」
 と感じるからだったのだ。
 半年も行っていなかったら、感覚としては、
「二年くらいは行っていないのと、変わりないよな」
 と感じることだろう。
 実際に行ってみると、まるで知っている空間とは違っていた。
 その一つには、今まで馴染みにしていた女の子が辞めていて、誰にしようか考えた時、
「一番最初に、辞めてしまった馴染みの子と迷った子にしよう」
 と思ったのだ。
 その子はまだ辞めていなかった。写真は若干老けて見えたが、自分では許容範囲だと思った。
 しかし、実際に会ってみると、
「あれ? こんな感じだ」
 と、少し落胆した。
 それは、想像と違っていたというだけで、決して、
「パネマジに引っかかってしまった」
 というほどではない。
 どちらかというと、
「逆パネマジ」
 といってもいいだろう。
 ただ、しいて言えば、写真の加工で、少し年齢が目立つような部分を隠しているところがある。年齢に上限を設けている人は、少し考えるかも知れない。
 それでも、パネマジというのは、正直必要なものである。
「どうして加工をするか?」
 ということには、2つ理由があるだろう。
 一つは陳列の意識と同じで、少しでも、おいしそうに見せるという意識である。
 そしてもう一つ、こちらの方が問題として大きいのだが、前述のように、
「身バレを防ぐため」
 ということが一番に挙げられる。
 店としても、雇っている相手の親にでも乗り込んでこられたら、大混乱である。さらに、女の子としても、下手をすれば、自分の人生計画が、音を立てて崩れていくことになるかも知れないからだ。
 特にバレるのが、親だけではなく、学校の先生だったり、昼職の上司だったりと、立場的にアウトとなってしまうと、本当に人生計画が狂ってしまうことになるだろう。
 いろいろな女の子がいるが、夢を持っている子もいる。
「いずれ、店を持ちたい」
 などと思っている子は、店で稼ぎながら、会社に勤めて実践経験を積んだり、学校で勉強したりと、人生設計をしっかり立てている人もいる。
 それを、崩す権利は、たとえ親といえどもないといってもいいのではないだろうか?
 ましてや、他人である、学校の先生、会社の上司など、もちろん、立場上しなければいけない処分を下しているだけなのだろうが、直接手を下したことに変わりはない。
 だから、その人たちを責めることもできず、結局、本人が、自分で守るしかないということなのであろう。
 そんな女の子たちに対して、店がどこまで守ってくれるかというもの難しい。確かにデリヘルのような派遣に比べて、待合室で見ることができるから事前に防ぐことはできるだろう、
 しかし、いくら禁止事項の中にあるといって、
「出待ち」
 をされたら、どうしようもない。
 店の前だと目立つので、そのビルの出口あたりで見張っているということもあるだろう。店によっては、女の子の出入り口を別にしてある構造のビルもあるかも知れないが、そのあたりの内情までは分からない。それを思うと、もし、相手が必死になって計画を立ててくれば、いくら店が守ろうとしても難しいこともある。
 それこそ、行き帰りを、ちゃんと送迎をつけるということをしても、大丈夫かどうか分からないのに、スタッフの人員から考えると、そんなことは実質的に不可能だ。
 ということになると、自然とその子は辞めていくことになる。
 かといって、デリヘルの方が今度はもっと怖いことになる。果たしてどうすればいいのかということになるだろう。
 ストーカーだったとしても、警察が、そんなに簡単に守ってくれるわけもない。今から十数年くらい前に、ストーカー被害に遭っていた知り合いが、警察の生活安全課に話に行ったのについて行ったことがあった。
 その時は相手が分かっていたので、最初に、相手に、警察が注意をすることから始まって、電話番号を登録し、
「この番号から連絡があった時は、110番扱いにするようにします」
 という手続きを取ってくれたりした。
 当時、GPSがあったかどうかまでは分からないが、ひょっとすると、それくらい、警察に分かるようにしていたかも知れない。
作品名:風俗の果て 作家名:森本晃次