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風俗の果て

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 といっても、さほど大きな変化があったわけではないが、通っていくうちに、その変化がどこにあるのかが、分かるような仕掛けになっていた。だから、自治体も、下手に止めることができなかったのだ。
 ただ一ついえば、幸いだったのは、
「オリンピック招致が、失敗に終わり、日本代表にすらなれなかった」
 ということである。
 全国でも有名な歓楽街は、大きな痛手ではあったが、すぐに2,3年もすれば、昔の活気を取り戻したが、新興のところは、跡形もなく消えてなくなっていた。数軒はあった無料案内所も、今はもぬけのから、ほとんどがテナント募集の、貸店舗となっていたのだ。
 廃墟のようになった街に、撤退後すぐ行ってみたことはあったが、あまりにも見るに堪えないほどの惨状に、二度と行ってみる気にはならなかった。まるで、
「無差別爆撃で焼け野原になってしまった街のようではないか?」
 といえるくらいだろう。
 そんなこともあって、しばらく風俗に行かなくなると、今度は、会社の女の子などに意識が行くようになった。
 そうなると、
「何で今まで、風俗ばかりに目を向けていて、すぐそばの女の子に目がいかなかったのだろう?」
 と、いまさらのように考えるようになった。
 会社の女の子に、懐かしさと新鮮さを感じながら、まるで自分が、数年間どこか知らない世界にでも行っていて、カルチャーショックを感じているかのように思えるのだった。
 そのカルチャーショックは、長いようでも短いようでもあり、ただ、20代から30代に向けて、あっという間だったということを思うと、想像しているよりも、長かったように思えるのだった。
 ただ、懐かしさの中に、今まで感じたことはあったのだが、それが何だったのか、思い出せないことがあった。しかも、それは、どこか気持ちの悪いもので、忌々しいといってもいいようなものだった。
 それが何かを思い出していると、
「そうだ、これって嫉妬のような感覚ではないか?」
 と感じたのだった。
「嫉妬って、そもそも、どんなことだったのだろう?」
 と、嫉妬を感じたことがあるから分かったはずなのに、自分で嫉妬だと気づいたくせに、その嫉妬がどんなものであったのかということを、正直そう簡単に思い出せるものではなかった。
「女に対しての嫉妬で、最期にしたのはいつだったのだろう?」
 と、懐かしくもないが、思い出そうとしてみた。
 すると、
「思い出せないんだよな」
 としか思えないのだ。
「そうだ、あれは学生の頃だったか、嫉妬というよりも、抜け駆けして、オンナとやった連中に対して感じた、おかしな思いだったな」
 というものだった。
 自分が、どんな女が好きなのか、実際には今でも分からないが、その頃は、それを必死に模索していたような気がした。
 今であれば、
「好きになった人が、自分の好きな人なんだ」
 というだけのことである。
 そんなことは分かり切っていて、
「それこそ、まるで歌の文句mpようじゃないか?」
 と感じることだろう。

                 童貞時代の忘れられない過去

 嫉妬するということは、学生時代には結構あった。その時は、まだ自分は童貞だったのだが、大学の科目で、
「単位が危ない人を中心に、教授が、これに参加すれば、単位はあげる」
 というものだから、単位が微妙な人は、こぞって参加した。
 別に高校の補修のようなものではなく、ただ教授が、
「学生と触れ合う時間がほしい」
 というだけで設けたものだった。
 費用はそんなに高くない、なぜなら、宿泊は大学の合宿所だったからだ。
 だから、費用といっても、2泊3日で、1000円という破格の値段で、まあ、結構楽しくやれるというものだった。
 夏だったので、夜になると、花火をしたりバーベキューをしたりであった。もちろん、参加費にすべてが含まれているので、それほど高いわけではない。
「これなら破格じゃないか? 罰ゲームどころか、思い出作りを安くできるという意味でありがたいというものだ」
 という人が多かった。
 だから、別に単位が危なくない人も参加自由であり、しかも、授業を受けていない人も、参加費さえ払えば、参加自由だったのだ。
 ただ、定員には限りがあるので、優先順位は、単位が危ない人、その次が、授業を選択している人だったのだ。
 ただし、そのおかげで、毎回賑やかで、楽しいということだった。そんなに厳しいルールがあるわけでもなく、
「点呼が一日に何度かあり、その時にいればそれでいい」
 というだけのことだった。
 そういう意味で、女の子の参加も当然いるわけで、普段授業の時話をすることもなかった異性と話ができるだけでも楽しい。
 お互いに。まるで、
「旅の恥は掻き捨て」
 と言わんばかりな気分になったことで、ついつ夜になると、何となく怪しい気持ちになっていた。
 参加してから友達になった二人組がいて、そいつらと一緒に二人組の女の子と仲良くなったのだ。
 その時、どうやら、男二人は最初から、オンナ目的で近づいたようだった。
 しかも、相手の女二人も、あさとく笑ってはいたが、あくまでも、男漁りが目的だったようだ。
 要するに、
「せっかくの、二対二の関係が、お前のせいで、一人あぶれるじゃないか」
 とでも言いたいのだろう。
 二人は、どうやら、夜這いを計画していたようだ。マサムネも少しおかしな気分になっていたので、
「てっきり、自分も」
 と思い、夢にまでみた、
「童貞喪失」
 が今日だったのだと感じた。
 しかし、世の中そんなに甘いものではない。しかも、他の人から言わせれば、
「こんなくだらないことで童貞喪失なんかしなくてもいいじゃないか?」
 と言われるだろうが、本人は、その気になってしまっていて、この怪しい雰囲気のど真ん中にいるのが自分でも分かっていた。
 そして、
「童貞喪失には、これくらいのアクシデント? いや、サプライズがあってしかるべきではないか?」
 ということで、
「まるで、俺は今日のために、今まで童貞を守ってきたのだ」
 という、おかしな気分になったことだろう。
 ある程度まで興奮がこみあげてきていると、自分だけが仲間外れにされることに、苛立ちがあった。興奮というものが、何に対してなのか? 身体の興奮が一番なのか、それとも、知っている男女が自分の知らないところで愛し合っている姿を想像するのが辛かった。
 お互いに、お互いを求め合い、一時の快楽に身を任せる。もちろん、その後付き合うことになるのかどうなのかもわからない。
 正直、
「一晩のアバンチュールなのだろう」
 としか思えないくらいになっていた。
 どちらにしても、この状況で、自分だけが取り残されるのは、分かり切ったことだった。よほど、教授たちにチクってやろうかと思ったほどだったが、
「そんな大人げないことをしても、自己満足にもならない」
 と思った。
 当事者からは恨まれて、まったく相手にされないだろうし、やつらに仲間がいて、彼らが自分の誹謗中傷を流せば、狭い大学内。あっという間に広がるかも知れない。
 そうなると、せっかくの大学生活を棒に振ることになるかも知れない。
作品名:風俗の果て 作家名:森本晃次