風俗の果て
「高級店だったら、年に2度のボーナスの後くらいしかいけなかったものが、2か月に一度、あるいは、少し頑張れば、毎月でも行くことができる」
と思うのだ。
そこで、自分のお気に入りの女の子ができて、毎回指名していると、気分は恋人気分にもなれるだろう。
中には、
「普通の恋愛など自分にはできない」
と思っている人にとってはありがたい。
毎月でも遭えるというのは、風俗だと分かっていても、嬉しいと思う。それを、
「癒しだ」
と思うことで、毎日の活力になるというものだ。
ただ、中には、風俗ということを忘れて、
「マジ恋」
をしてしまう人もいるだろう。
本当に好かれていると勘違いする人、もっともっと会いたくて、借金をしてでも通う人とさまざまであろう。
ただ、こういう色恋ということになると、ひょっとすると、
「キャバクラ」
のような、業種の方が強いのではないだろうか?
マサムネは、あまり酒が飲めないこともあって、キャバクラに行ったことがないので、ドラマやVシネマでくらいしか知らない。
さらに、マサムネがキャバクラに行かないのは、昔のピンサロを思い出させるからだ。
あれはまだ若い頃、結構減ってきてはいたが、いわゆる、
「ポッキリ」
に誘い込まれたことがあった。
暗いカーテンで仕切られただけの部屋に連れ込まれ、そこで、バニーの恰好をした女の子、いや、おばさんといってもいいような女性が登場。たぶん、30代だろうが、当時まで二十歳そこそこだったマサムネにとっては、十分におばさんに見えたのだ、
ビールを一本だけ持ってきて、
「私も飲む」
といって、乾杯すれば、それで一本が終わってしまう。
そこで女は、
「おかわりは?」
というので、言われるままに頼み、元々ムラムラしていたから誘われて入ってしまった店なので、女の子に触ろうとすると、条件によって、追加料金を言い出した。
「話が違う」
と思ったので、
「もう、帰る」
といって、会計をすると、まだ店に入って、15分くらいしか経っていないのに、
「25000円になります」
というではないか。
さすがにここでごねると、裏から怖いお兄さんたちが出てきて、
「フクロにされる」
ということが分かっているので、逆らうことはできない。
結局払うしかなかったが、それから、
「お酒を呑むお店で、性風俗を伴うようなお店は、ぼったくりが、あるいは、色仕掛けで金をむしり取られるかのどちらかだ」
という先入観を持ったのだ。
だとすれば、値段は高いが、時間と値段が決まっていて、疑似とはいえ、イチャイチャできて、恋人気分になれるソープの方が、よほど健全で、計画的に遊べると言えるのではないだろうか?
昔の、ピンサロや、キャバクラに比べて、性風俗が濃いということで、敬遠する人もいるかも知れないが、よほど健全である。
そういう意味で、昔、同じように、ピンサロなどに騙された経験のある人間にとって、ソープランドという業界は、実にありがたい。
しかも、自分の好みに合わせて遊ぶことができる。コンセプトを持ったそれぞれの店があるということは、実にありがたかったのだ。
ちまたでは、
「コンセプトカフェ」
というものもブームである。
メイドカフェであったり、本当に、店をそのように改装しているカフェである。
ちなみに、ソープはあまりにも改装してしまうと、
「新規参入」
と見られたりするので、そんな印象がないように、ちょっとした小道具や、衣装で雰囲気を出したりしているのだ。
コンセプトカフェも実は嫌いではない。メイドカフェには何度か行ったが、すぐに飽きてしまった。
それよりも、一時期、いろいろなコンセプトのお店に行って、実際に抱いていたイメージとかなり違った感覚になったことを新鮮に感じたこともあった。
意外と共通していたのが、どこの店舗も、
「芸術的なことに、造詣が深い」
ということであった。
特に絵画などが趣味の客も多く、店のスタッフにも、絵を描くことを趣味にしているという人も多かったりする。
そういう意味で、
「芸術での繋がりが深い」
というのも、意外と知られてはいないが、マサムネには嬉しいことだった。
そのおかげで、マサムネも、少し絵を描いてみることにした。そして実際に描いてみると、そんなに難しいわけでもなく、意外と馴染みやすかったし、何と言っても、自分としては、
「上手に描けている」
と感じたものだ。
鉛筆デッサンなので、スケッチブックと、鉛筆と消しゴムさえあれば、いつでもどこでもできるというものだった。
「安上りで簡単にできる趣味を与えてくれたコンセプトカフェは、仕事の疲れを精神的に癒してくれる場所」
ということになったのだ。
そして、ソープランドは、疲れを癒してもらうというよりも、自分から癒しを求めていくとことであり、恋人に会いに行っているような感覚にしてくれるところであった。
30代の頃
ソープランドも、しばらく同じ店に通い始めると、しばらくは続くが、1,2年を周期に、他の店に行ってみたりもしていた。
それでも、一つの店に固執している時はその店だけに通うようにしている。
もちろん、お気に入りの女の子がいるというのが前提であるが、毎回その子だということもなかった。
当然お気に入りの女の子も、たぶん分かっているだろう。だが、敢えて、
「前に、他の子に入ってみた」
などという野暮なことは言わない。
本当は、正直にいう方がいいのかも知れないが、マサムネはそれを野暮だと思うようにしていた。心のどこかで、
「金を払って遊びにいくところだ」
という意識があり、それを免罪符にして、自分なりに言い訳しているのだろう。
そんな自分が、正直になったところで、きっとすぐに見破られるに違いない。敢えて触れないことの方が、相手も気が楽だろう。お気に入りとしては、他の女の子に入られるのを、
「プライドが傷つけられた」
と感じるに違いないからだ。
そのプライドは、どこからくるものか、女性も考えるに違いない。下手に慌てふためいて、そこで、
「女の子」
を出してしまうと、それは、果たして、本当のプライドを忘れてしまうのではないだろうか?
お気に入りの女の子には、そうはなってもらいたくない。
そうなると、
「言わなくてもいいことを、いちいちいうのは、正直ではない」
といえるだろう。
ただ、身体は正直なもので、相手がいくらお気に入りといっても、毎回では飽きてしまう。
その飽きが来ないように、時々他の女を抱いておくという意識を持ったとしても、それは男として無理のないことで、却って、お気に入りのためだというものだ。
あくまでも、お気に入りの前では、
「万全な状態でいたい」
という気持ちがあるからで、この気持ちがある限り、言わないことの方が、お互いのためだと思うと、それが一番の正解なのだろう。
お気に入りの女の子も、当然自分だけを相手にするわけではないし、こちらが思っているほど、自分のことを思ってくれているわけではない。
ただ、マサムネとしては、