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必要悪と覚醒

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 と言われている事件であるが、自分の中では、この時代を正直、ブラックボックスにしていた。
 どうしても、戦国時代のような派手さがないということで、この時代を好きな人のような、
「古代へのロマン」
 が自分にはないのだと思ったのだ。
 古代ということがどうしても頭にあり、それほどきちっとした改革や発想のない時代だと勝手に思い込んでいたのが、一番の原因だったのだ。
「しかし、この時代にもきちんとした考え方や、制度が確立されていて、厩戸皇子、いわゆる聖徳太子の時代には、中国文化を取り入れ、政治的にも、冠位十二階、憲法十七条などと、改革的なことをした時代だった」
 といえるだろう。
 しかし、一番の大きなものは、
「中国から、仏教を取り入れ、蘇我氏とともに、仏教文化を育んだ」
 というところが一番の大きなところだったのだ。
 それをやったのが、厩戸皇子であり、蘇我馬子だったのだ。
 だが、厩戸皇子が亡くなり、時代は蘇我氏の時代になると、蘇我氏の独裁色が膨らんできたことで、他の勢力が、
「潰されないだろうか?」
 という怯えの中で、中臣鎌足と、中大兄皇子が立ち上がったのだった。
 そもそも、中大兄皇子は、
「やらないと、殺される」
 という立場にあった。
 厩戸皇子の子供である、山背大兄王が、蘇我氏に滅ぼされたことで、危機感が募ったのだ。
 しかも、そもそも、蘇我氏は、厩戸皇子の下で勢力を伸ばしてきたのだ。それなのに、一族を滅ぼすというところまでする蘇我氏を、皆怖がっていたといってもいいだろう。
 ただ、これは息子の入鹿が勝手いやったことで、父親の蝦夷は、反対だったのだ。山背大兄王を滅ぼしたことが、入鹿は自分の命を縮めたといってもいいだろう。
 蘇我氏が全盛期を迎えたことで、危ないと思った連中が組んだのが、乙巳の変である。
 蘇我氏の考え方としては、仏教を広め、朝鮮半島の国とは、平等に外交をするというのが、政治のやり方だったのだが、乙巳の変が起こり、蘇我氏が滅亡すると、ちょうど、朝鮮半島では、新羅と高句麗の連合軍が、百済を攻撃し、滅亡の危機に立っていた。そこで百済は日本に助けを求めてきた。
 中大兄皇子は、兵を百済に向かわせ、百済を再興させようとしたが、失敗してしまった。
 日本軍は大敗し。百済も滅亡する。
 そこで日本は、
「新羅、高句麗の連合軍が日本に攻めてくる」
 と考え、それまで難波にあった都を、筑紫に移し、そこで、守りを強硬なものにしようと考えた。
 筑紫に、水城という堤防を築き、大野城や「きい城(変換ができない)」、さらに、熊本県との県境近くにある、きくち城(これも変換できず)などの三つの、古代山城を築くことで、筑紫国に、
「大防衛前線基地」
 を築いていたのだ。
 これも、最初から、蘇我氏のように、
「対等外交」
 を行っていれば、こんなことにはならなかった。
 しかも、蘇我氏のやろうとしていたことは、順調に日本を海外に負けない国にしようという改革だったものが、蘇我氏が滅亡したことによって、
「時代が百年、さかのぼってしまった」
 と言われたのも、無理もないことだ。
 しかも、攻めてもこない半島からの侵略を恐れて、防衛に金と人を使ったことで、時代は逆行し、防衛にばかり気を遣っているのでは、繁栄するはずなどない。
 おまけに、都は、難波に戻し。さらにそこから、平城京に至るまでに、難波、飛鳥、信楽、大津、そして藤原京と、30〜40年くらいの間に、6,7回の遷都が行われたのだ。そのたびに、人員と金が使われるのだから、
「時代が遡った」
 と言われても無理もないことである。
 これが、古代における最大のクーデターであり、その後起こった、
「壬申の乱」
 という、古代最大の、内乱で、やっと、中国の政治に近づける、
「律令制度」
 を確立できるようになったといえる。
 大化の改新でも律令制度を目指したのだが、いかんせん、
「後ろ向きの政治で、それどころではなかったことで、中途半端な率用制度に終わってしまった」
 のであった。
 まず、歴史の一番最初の分岐点はここであり、自分で勉強してやっと、勉強する意義が分かったのであって、学校の授業では、
「ただの一つの事件」
 というだけで、通り過ぎてしまう。
 もっともそうでなければ、2000年という歴史を一年間の授業でできるはずもない。
 高校になって、専門的に選択した授業であれば、もう少し深いのだろうが、しょせんは、受験のための、
「暗記の学問」
 となってしまうので、それも難しいところであった。
 畠山が考える、
「時代の転換期」
 の他の三つは、
「平家の滅亡」
「本能寺の変」
「坂本龍馬の暗殺」
 と、たぶん、歴史が好きな人であれば、ほとんどの人が選ぶ分岐点に違いなかった。
 特に、キーワードが、
「クーデター」
 ということになれば、それらが大きなことになるに違いない。
 もちろん、時代時代に分岐になる事件、クーデターはあっただろうが、
「謎の多い事件」
 ということで、共通しているのは、それが分岐点だという証拠だからであろう。

                 F県K市

 そんな歴史が好きになった自分を思い返していたが、その時間が、昼休みが過ぎてから、2時間ほどしてからのことだった。
 それまでは、仕事もすっかり終わっていて、時間を持て余していた。
 そんな時、自分が歴史を好きだったということを思い出し、気がつけば、3時過ぎから、
「自分がどうして歴史を好きになったのだろう?」
 ということを思い出したおかげで、いつの間にか、定時近くになっていたのだ。
 その日は、夕方からセミナーがあるということで、仕事はどちらにしても定時に終わる予定だった。それだけに午前中でほとんどできたのは有難いことで、昼からの2時間が地獄だったが、その後はあっという間に過ぎたおかげで、
「帳尻が合わさった一日だった」
 といってもいいだろう。
「セミナーには余裕をもっていけばいいので、5時には会社を出てもいいぞ」
 と上司から言われていたが、考え事をしていたので、とても、5時に会社を出られるというわけにはいかなくなった。
 それでも、会社を出る時間は、決して慌てなければいけない時間でもないので、
「結果として、いつもの行動パターンの範疇になったな」
 と感じられるのであった。
 会社を出てから、駅まで、またしても、歴史のことを考えていた。
「そう、さっきは最初のクーデター、乙巳の変の話だったな」
 と思ったが、次に思い浮かべたのも、
「歴史が百年さかのぼった」
 といってもいい時代だと認識した、
「源平合戦」
 である。
 ただ、近年では、これを源平合戦とは言わない、
「治承・寿永の乱」
 というのだった。
 これは、表立っては、
「平家打倒に源氏が立ち上がった」
 という意味で、源平合戦と言われていたが、実際には、木曽義仲と頼朝軍の合戦も含まれているので、
「厳密には、源平合戦というのはおかしい」
 ということで、その時の年号を取って、今では、治承・寿永の乱というのだった。
作品名:必要悪と覚醒 作家名:森本晃次