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必要悪と覚醒

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 といえるのではないだろうか?
 それは、いわゆる、
「核兵器開発」
 と同じで、
「相手よりもさらに強力なものを開発する」
 というのが、スパイラルだった。
 つまり、最初にこっちが強力なものを作ってしまうと、相手は、
「後れを取ってはいけない」
 ということで、急いで開発を始める。
 そしてさらに、追い越されないようにと、同じようにさらに強力なものを開発しようとする。
 これがいわゆる、
「血を吐きながら続ける。悲しいマラソン」
 ということになるのだ。
 そもそも、開発目的が、相手よりも強力なものを作ったとして、どうなるというのだ。打ち込まれれば終わりではないか。
 しかし、
「一つの檻の中に、二匹のサソリを入れるのと同じことだ」
 と言われるのと同じで、
「確実に相手を殺すことはできるが、逆に、こっちも命を失うことになる」
 という相打ちになってしまうのが、必然であった。
 しかも、核兵器を持っている国は一つではない。もし、どこかが打てば、同盟を結んでいる国も打つことになり、結局、一発のトリガーを引いてしまうことは、全世界の滅亡を意味することで、完全に、
「サソリのバトルロイヤル状態」
 であった。
 ただ、不思議に感じるのは、
「ヘビが、自分のしっぽを、どんどん飲み込んでいく」
 というような意識が頭にあることだった。
 確かに、そのまま飲み込んでいくとどうなるのだろう? もちろん、身体が軟体動物のようにいくらでも、歪めることができると仮定した場合のことであるが、最期は食い切ってなくなってしまうことになるのだろうか?
 それこそ、
「メビウスの輪」
 を見ているようで、この発想が頭をよぎった時、いつも、
「異次元をイメージしているんだ」
 と感じるようになったのだ。
 そう、話は逸れたが、抑止力というものは大切なのだ。だからこそ、戦争にならなかった。初めてしまって、核戦争を引き起こせば、もう、元に戻ることはできないことを、人間は知っているからだ。
 しかし、知ってはいても、
「不測の事態」
 というものに逆らうことはできない。
 もし、どこかの国の支配者が、少し頭の弱い人間だったとして、今までの国家元首であれば、我慢できたものを、勝手に核ミサイルのボタンを押さないとも限らない。そのため、先進国で、核のボタンを持っている人は、自分の部屋だけの操作では決して、ミサイルが発射できないようになっている。
 そう、何か大切なものを金庫に隠そうとした時、一人が知っているだけでは不安だが、だからと言って、複数が知るのは、もっと恐ろしいと考えた時、
「一人が、ダイヤルの番号を知っていて、もう一人がカギを持つ」
 ということにしておけば、二人が一緒にならない限り、金庫は開かないわけだ。
 もし開いたとすれば、少なくとも、
「二人の共謀」
 であることは間違いないということだ。
 あるいは、何らかのトリックを使った。
「例えば、秘密の書類を隠した時には、すでに、カギは他の人に渡っていた」
 などという、いわゆる、
「時間差トリック」
 が必要になる。
 つまり、密室トリックと、時間差トリックとは、結構密接したところで絡んでいるということになるのだろう。
 畠山は、昔の探偵小説を読むのが好きだった。戦前くらいの時代の小説が、ドロドロした感じで、しかも、今とはまったく違う時代背景で、科学も発達していなかったので、トリックも結構、いろいろ仕えたであろう。
 今であれば、ほとんどのトリックが使えないかも知れない。
 特に、
「顔のない死体のトリック」、
 いわゆる、
「死体損壊トリック」
 と呼ばれるものだ。
 要するに、死体が誰なのかバレないようにするトリックで、よくありがちな謎解きとして、
「被害者と加害者が入れ替わっている」
 というものがあったりした。
 というのは、
「被害者になることで、自分が死んだことになれば、15年姿をくらましていれば、時効となる」
 ということがあったからだ。
 実際に、それを狙った犯罪も結構あったのだが、なかなか難しいだろう。
 15年という期間、逃亡しなければいけないのだ。お金の問題、精神的な問題、いろいろあるに違いない。
 ただ、今ではそれはまったくの不可能になった。
 まず、死体損壊して、例えば首がなかったり、特徴のある部分を傷つけていたとしても、今の技術で、
「DNA鑑定」
 をすれば、肉親のDNAと比較して、かなりの確率で、親族関係を証明できるというものである。
 さらに、この犯罪を不可能ならしめる確定といってもいい事実として、
「殺人の時効が撤廃された」
 ということだ。
 つまりは、いくら逃げ回ったとしても、死ぬまで、容疑者であることに変わりはない。大手を振って歩けることにはならないということである。
 そうなると、逃げるだけ無駄であり、死刑にでもならない限りは自首して出てきた方がマシだというものではないだろうか?
 そういう意味で、
「時効の撤廃」
 というのは、犯罪の抑止にもなるし、少なくとも、死体損壊トリックというものを、不可能ならしめるという意味で、重要な抑止だと言えるだろう。
 さらにもう一つのトリックとして難しくなったのは、
「アリバイトリック」
 ではないだろうか?
 前述のように、どこにでも、防犯カメラや、ライブカメラが設置してあり、車の中にも、ドライブレコーダがあるのだから、人がいなくて、目撃者が見つからないということは、ほぼありえない状態になっている。
 空き巣であっても、強盗であっても、カメラに写っている。中には、そんな防犯カメラを逆手に取って、曖昧な動画をわざと目立つように映すことで、
「カメラに写っている」
 という思い込みを犯させることで、錯覚させるという、逆のトリックもできるかも知れないが、それはかなり高度なもので、一般的なトリックに向くものではないだろう。
 そういうことを妄想していると、実際に受けているセミナーの話が、いつの間にかシンクロしていっていることに気づき、思わず苦笑いをしてしまった。
 それを感じながら時計をみると、思ったよりも時間が過ぎていて、気が付けば、そろそろ入場してから二時間。そろそろ、セミナーもお開きになる時間だった。
 そんな時間に、シンクロするというのも、面白いものだと思い、苦笑いが止まらない自分を感じたのだった。

                 反対派

 セミナーを聞いていると、自分がいろいろ考えていたこととシンクロしていたのを思い出した。
 そもそも、畠山という男は、今までにも何度かセミナーに参加してきたが、そのたびに、半分聞いていて、半分は別のことを考えていることが多かった。結局最後は、セミナーなど聞いておらず、自分の想像、いや、妄想で終わってしまうことが多く、話の内容をまったく覚えていないということの方が多かったのだ。
 それを思い出すと、
「俺って、セミナーに参加しても、何の意味もないんだろうな?」
 と思いはしたが、それでも、ずっと寝ている人に比べれば、
「まだマシなのかも知れない」
 と感じた。
 セミナーに参加して、眠くなることは、以前はあった。
作品名:必要悪と覚醒 作家名:森本晃次