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時間を食う空間

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「いかにグレー部分をハッキリさせるか?」
 ということが重要なのだろう。
 そう思っていると、戦後の状況を研究してみたくなり、調べてみた。
 そもそも、戦後は、赤線、青線などと言って、遊郭に近いものが残っていたりしたが、
「豪華な銭湯」
 というか、
「きれいなお風呂場」
 という意味で、トルコ石などを使った、いわゆる、
「垢すり」
 のようなものを、女性が施術してくれるというサービスがあったようだ。それが、微妙な人気として起こっていたようなのだが、そのうちに、
「売春防止法」
 というものが施行され、赤線、青線が、立ち行かなくなったようだ。
 そこで、考えたのが、
「豪華なお風呂で、女性が、身体に泡を縫って、身体を密着させる」
 という、昔でいうところの、
「泡踊り」
 というサービスから、トルコ風呂というものが始まった。
 その頃に、失業した赤線、青線の女性が、このサービスと合体して、今のソープの原型である、
「トルコ風呂」
 という業界に発展し、それまでの、
「豪華なお風呂」
 の衰退期を何とか乗り切ったのだ。
 ここからが、トルコ風呂の世界であり、昭和の終わりに、トルコ人の学生が、
「いかがわしい場所に母国の名前を使うのは、やめてほしい」
 といって提訴するまで、続いたのだった。
 しかし、その問題が出てきてから、風俗営業の問題とも絡みあってきて、
「トルコ風呂」
 という名前を変えることと、法律を整備するということで、落着した。
 トルコ風呂は、やはり、
「泡」
 というイメージから、
「ソープランド」
 と呼ばれるようになった。
 昭和末期くらいのことだったので、トルコ風呂という名前を言っても、すでに知らない人の方が多いに違いない。
 ただ、ソープランドというのも、名前が変わり、風営法が整備されてからというもの、いろいろな形に変化や派生していったのは、今の業界を見れば分かるだろう。
 佐久間が、風俗遊びに興じていた頃は、すでに、いろいろな派生型が出てきていて、ヘルスであったり、キャバクラなどと呼ばれる業界もできてきた。
 ヘルスは以前からあったが、
「男性クリニック」
 などという名前の時もあったのを、知っている人は少ないかも知れない。
 そして、同じソープランドでも、以前とは違った趣向が多くなってきた。
 まず価格体系として、
「高級店」、
「大衆店」
「格安店」
 などというものができてきた。
 東京などでも昔は、
「高級店は吉原。一般向けは、玉ノ井」
 などと言って分けられていた頃が遊郭の時代にはあったようだが、やはり、昭和から平成に変わってからの、バブルが弾けた時代というのは、なかなか高級店だけではやっていけないということなのだろう。
 大衆店ともなると、昔のように、
「プロの技を味わう」
 というのも減ってきて、
「女の子とイチャイチャできれば、プロの技を求めないという意味で、素人っぽさを求める客も増えてきたことから、大衆店ができてきたのだろう」
 しかも、最近では、昔のように、
「借金のかたに、身売り」
 というような、そんなドロドロしたものではなく、気軽にソープ嬢になる女の子も増えてきているだろう。
 実際に、
「現役大学生」
 という子も少なくはなく、
「業界完全未経験」
 などという女の子がウケるようになる。
 そうなると、店は、それぞれに個性を持つようになり、店ごとにコンセプトを持つようになってきた。
「コスプレ専門店」、
「マット専門店」
「SM専門店」
 などと別に、
 学校や病院の、
「先生と生徒」、
 あるいは、
「看護婦と患者」
 などと言った、イメージソープも増えてきたりしたのだ。
 しかも、今はSNSなどというツールを使って、女の子と客とが繋がると、親近感を増してきて、本指名の客は、週一で通うという猛者もいるくらいである。
「どっからそんな金が出てくるんだ?」
 と思うが、昔に比べて、大衆店というのは、それほど格安になっているということであろう。
 値段も安くて、昔ほどの罪悪感を感じなくてもいいくらいの雰囲気もあり、若い人も気軽に遊べる場所になっている。今から思えば、
「ソープランドのランドの部分がまるで、遊園地のようで、なんだかな」
 と思っていた人も多かったのだろうが、今では、本当のランドという雰囲気なのかも知れない。
 さらに、最近では、お店に行かなくても、相手が来てくれる、いわゆる出張してくれるという、
「デリバリーヘルス」
 略して、
「デリヘル」
 なる商売も増えている。
 こちらは、店に行くわけではないので、ソープ街を歩く必要も、最近では減ってきたが、
「ポン引き」
 と言われる、客引きの連中に捕まることなく、気軽に楽しめるというものだ。
 自宅に呼ぶこともできるし、同居人がいたり、アパートなんかで、近所に見られたり、声を聞かれるのが嫌な人にとっては、ありがたいものだった。
 しかも、こちらは、風営法によれば、業務時間に制限はないのだ。
 箱型、つまり、店を構えている場合は、基本的に、午前6時から、午後12時までが営業時間としていいことになっていて、それ以外の時間の営業は違法である。
 しかし、デリバリーに関しては、24時間365日、無休であっても、問題はない。実際に、それをうたい文句にしている店もあるようだが、実際に、女の子が出れる時間があるなしで、開店休業の時間帯が生まれるのは、仕方がないと言えるであろう。
 昔から、店舗型しか使ったことのない佐久間は、デリバリーヘルスには、抵抗があった。
「気に入らなければ、チェンジができる」
 ということなのだが、逆に、
「それだけ、女の子に自信がないということなのか?」
 という風に勘ぐってしまうのだった。
 しかし、実際に写真を見る限りそうでもない。ただ、店舗型にしても、デリバリーにし
ても、
「パネマジ」
 というのは、しょうがないことだと言えるだろう。
「パネマジ」
 というのは、パネルマジックのことで、いわゆる、
「看板に偽りあり」
 と言われるものである、
 宣材写真を加工して、可愛く見せたりする、あのやり方である、
 それには二つの理由があった。
 一つには、
「お客さんにいいイメージを与えて、選んでもらおう」
 という昔からありがちなもので、人によっては、
「詐欺じゃねえか」
 と言いたくなる人もいるだろう。
 しかし、重要なのは、もう一つであり、
「パネル写真から、身バレしないようにするため」
 ということである。
 ただ、これは、箱型の店舗であればできることであり、なぜなら、待合室をマジックミラーのようにすればいいだけだから、何とか部屋に入る前に、
「今日は、お休みになりました」
 という苦しい言い訳もできるだろう。
 だが、デリバリーの場合は相手のところに行くわけだ。知っている家であれば、まずいとも思うだろうが、ホテルなどの場合はそうすることもできない。ある意味、デリヘルというのは、そういう危険も含んでいるということだ。
作品名:時間を食う空間 作家名:森本晃次