時間を食う空間
などという政策を打ち出したものだから、今では。コンビニやファーストフードの店の接客は、そのほとんどが、外人どもではないか。
あいつらは、何が嫌といって、臭いのだ。
風呂に入る習慣がないのかどうか知らないが、臭い上から、香水などを振っていると、臭くてたまらない。しかも、日本の風土も分かっているのかどうなのか、
「留学生」
などという触れ込みできているくせに、程度の低さはあからさまではないだろうか?
あいつらのせいで、こっちがトラウマにされてしまっては、たまったものではない。
特に、受動喫煙禁止法が施行された中で、非常階段などでタバコを吸っている連中に、外人どもが多いのは、分かっている。
いや、それだけ外人どもが、進出してきたということなのか、
「ここまでくれば、侵略ではないか?」
と思うのは佐久間だけだろうか?
そういう意味では、トラウマというのは、外人どもにだけではなく、政府に対しても感じられるようになった。
トラウマというと聞こえはいいが、要するに、不満である、やり切れないという言葉がその上につく不満。それを感じているのは、佐久間以外にもたくさんいてほしいと思う。
せっかくパンデミックがあったおかげで、外人どもが入ってこなかったので、平和だったものが、今は夜中でも、バカ騒ぎをしている外人どもがいると思うと、怒りしかなかったのだ。
影の薄いその人は、外人というわけではないのだが、外人どもに感じた怒りを、その影の薄い人を思い出すことで、一度意識の中によみがえってきて、トラウマを感じさせられるのだが、逆にため込んでしまい、一見忘れてしまったかのように感じているが、その実ため込んでしまって、その放出医かなりのエネルギーがこみあげてくるのだとすると、これは、容赦できることではないだろう。
年を取ってくるごとに、いつも何かに怒っている気がする。考えてみると、怒りをぶつける相手を自分で必要としているのではないかと感じるのだ。
それは、まるで、軍隊が仮想敵国を持っていないと、士気が低下してしまうということで、必要とするものと似ているのだった。
佐久間も、一度トラウマを持ってしまうと、それをいかに発散させるか、いや、放出させるかが大きな課題であり、どうすればいいのかを、自分なりに、模索しているといってもいいだろう。
そんな中で、竹中老人と話していたあの、
「影の薄い男の正体」
というものは、知るべきなのかどうなのか、悩みどころであった。
分からないとモヤモヤはするのだが、だからと言って、知ってしまうと、自分の中の仮想敵国が徐々に消えていき、自分自身の士気が保てない気がしてくるのだった。
そんな中で、一つ気になっているのが、
「どうして、影が薄いと思うのだろう?」
ということであった。
正直全体的にしか、その人物を見ていない。全体的に最初から見るというのは、自分の見方だからだ。
全体的に見ることで、次のステップはなかったということは、その人を意識した瞬間というのは、
「本当に一瞬だったのではないか?」
と感じた。
それは、夢というものを感じているのと同じで、それこそ、夢というものが、どんなに長いものであっても、
「目が覚める前の数秒で見るものだ」
というではないか?
しかも、目が覚めるにしたがって忘れていく感覚。それと同じだと思うと、
「本当は見ていたにも関わらず、忘れてしまったと、思い込まされる夢もあるのではないか?」
と感じるのと同じように思えた。
つまり、夢を忘れてしまった感覚があるからなのか、
「ここで意識を解いてしまうと、もう思い出そうとしても出てこないかも知れない」
と感じたのだ。
それは、夢というものが、ちょうといいところで終わってしまって、もう一度寝て、その続きから見ようと思ってもできないのと同じではないかと思うのだ。
「夢というものは、潜在意識が見せるものだ」
ということであれば、ちょうどのところで覚めた夢の続きから見ることくらいできそうに思えるのだが、実際にはそんなことはできないのだ。
そういう意味で、夢というものが、一体どういうものか、そして、自分にとってのトラウマがどういうものなのか、五里霧中だったのだ。
それを、
「解決してくれるかも知れない」
として出現したのが、例の、
「影の薄い人」
だということではないだろうか?
「自分では、男だと思っているが、そもそも、本当に男なのだろうか?」
と、疑えばキリがない気がした。
それだけ、深堀しようとすれば、いくらでもできるようで、深堀に関しては、意識が制限されることはないようだった。
老人が、その人を連れてきたのを見たのは、その一度だけだった。
「実際に、自分が来ていない時、どうなんだろう?」
と思って、マスターに聞いてみると、
「佐久間君は前にも同じことを聞いていたけど、竹中さんが他の人と一緒に来たことは一度もないんだけどね。以前に一度、ここの一見さんと話はしたことがあったようだったけど、それも、佐久間君がこの店に来るかなり前のことで、この私でも、記憶が薄れるレベルの昔の話ですよ」
というのだった。
だから、聴いても無駄ということなのだが、それでも、
「その時のその人はどんな人だったんですか?」
と聞いてみると、
「私のような接客業だと、少々のお客さんでも、一度見ると何らかの印象には残るんですが、その人の場合は印象に残らないという感じの人でしたね。印象に残るというのは、自分と会話したわけではなくとも、一緒にいる人との会話の中から、あるいは一人の客だった場合は、逆にその発散するオーラのようなものが感じられると思うんですよ。でも、その人には、そのどれも感じなかった。もし、印象が薄いだけだとしても、印象が薄いというオーラがあるはずなんですが、そういう意味では、佐久間君が前に言っていたような、影が薄い人という言葉がピッタリだったのかも知れないですね」
というのだった。
「その人は、男だったんですか?」
と聞くと、最初は怪訝な表情をしたマスターだったが、今度は考え込んでしまい、必死に思い出しているようだった。
「それが、正直覚えていないんだよ。どっちだったのか、その時に気づかなかったのか、それとも、気付いていたけど、印象に残らないうちに忘れてしまったのかなんだろうけどね」
と言ったが、言いながら、また頭を傾げていた。
それだけ、自分でも印象に残っていないのが、不思議だと思っているのだろう。
「竹中さんが、いつも一人で来るのには何かわけでもあるんですかね?」
というと、
「ああ、竹中さんは、奥さんを亡くされてから、こっち、いつも一人で来られるんですよ」
とマスターがいうので、
「じゃあ、竹中さんは、奥さんと、以前はこの店に?」
と聞くと、