小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

時間を食う空間

INDEX|13ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

 確かに、時間の神という意味も大きく、その力で、マンガやアニメの世界で、異次元世界を表現したり、創造する中で、扱いやすい題材だったりするに違いない。
 ただ、この、
「クロノス」
 というのは、
「時間を意味する神である」
 と言われていて、
「カイロス」
 という神が時刻を表す神だと言われているのだ。
 クロノスという言葉から、
「クロノメーター」
 であったり、同調するという意味で使われる、
「シンクロナイズド」
 などと言う言葉も、この、時間の神である、
「クロノス」
 から来ていると言われている。
 また、もう一人、
「クロノス」
 という神がいる。
 混同されてしまうのだが、こっちの神も、油断できないかなりの神であった。
 何と言っても、
「ゼウスの父親で、全宇宙を統べた二番目の神」
 として有名であった。
 何しろ、
「全能の神」
 と言われた、ゼウスの父親というだけですごいというものだ。
 そんな下調べをしたうえで、最初は、
「実は何も知らないけど」
 というような顔をして、店主に聞いてみた。
「このお店のクロノスって、どういう意味なんですか?」
 と聞くと、
「ああ、これはね、ギリシャ神話の神から取ったんだよ」
 というではないか。
「それは分かっている」
 とほくそえみ、続いて、
「じゃあ、どっちなんだろう?」
 と、思っているところに、
「クロノスという神は、実は2人いてね。一人は、全宇宙を統べた神として有名で、もう一人は、時間をつかさどる神として有名な神なんですよ。意外と後者の方が知られているかも知れませんね。どうしても、ゼウスよりも前の神になると、ギリシャ神話ではあまり知られているわけではないので」
 というではないか。
 確かにそうだが、
「時間の神」
 として知っていたのは、マンガやアニメだけの影響ではなかった。
 実は、風俗通いをしていた大学生の頃の女の子に聞いたことだったのだ。
「そういう意味で、このお店に来た時、昔のことを思い出すというのは、クロノスという名前に影響されるからではなかったかな?」
 と感じたのだ。
「じゃあ、マスターはどっちから取ったんですか?」
 と聞くと、マスターは、怪訝な顔を一瞬した、そして、
「どちらからとは、異なことを……。両方からだよ。どちらかからでないといけないということはないからね」
 と言われて、一瞬、頭にカチンとしたものを感じた。
「ああ、そうか、別にどちらかである必要などあるわけではない。どっちもだという方が、当然気持ちは強い。どうしてそんな当たり前のことに気づかなかったのだろう?」
 と感じた。
 どうやら、佐久間は考え方が、偏っているかのようだった。
 というよりも、何か、
「こうでなければいけない」
 というような考え方、考えているうちに、次第にイライラしてくる。
「なぜ、イライラしてくるのだろうか?」
 最初はよく分からなかったが、少ししてから、
「ああ、これって、親父の偏屈さを自分も感じているからではないか?」
 と思うと、苛立ちの理由が分かってきて、しかも、その理由がわからなかったことが、余計に苛立ちを増やしているということに気づかなかった自分が、無性に腹が立つのだった。
「思い出したくもない親父のことを、ここで思い出すなんて」
 とさらに苛立ちが募ったが、苛立ちも最高潮までいくと、次第に、萎えてくるのを感じるのだった。
 それはきっと、
「この店に来ているうちに、親父の呪縛から、解き放ってくれそうな気がするな」
 と感じるからだった。
 親父の呪縛というのは、自分でも意識していないところに潜んでいると感じているところが恐ろしかったのだ。
「自覚がないということが、これほど恐ろしいということだったなんて」
 と感じた。
 確かに自覚がないということは、自分にとって、何が恐ろしいというのは、
「自分の近しい人に、自分が父親に感じているような苛立ちや憤りを、意識せずに、感じさせているのではないか?」
 と感じることだった。
 相手は、あまりきついことを言っては、関係が気まずくなると思って、きっと何も言わないだろう。そして、そのうち煩わしくなってくることで、次第に遠ざかっていき、気が付けば自分のまわりに誰も知っている人がいなくなって、まるで、
「ウラシマ現象」
 になってしまうのが恐ろしいのだ。
 つまり、竜宮城から帰ってくると、そこは自分の知らない世界が広がっていたというものである。
 一瞬だったら、まだしも、それが死ぬまで続くのだ。それでも、生きている限り、そのまま生き続けなければいけなくなるのだ。
 それを思うと、前に一度ドラマで見たセリフがよみがえってきた。
「死ねないということは、自分が好きな人も、頼りにしていた人も皆死んでしまって、それでも生き続けなければいけないというのはなんてつらいことなのか。逆に、長生きしたいと思っても不治の病などで、生きることができず、余命が決まってしまっている人、究極であるが、どちらが不幸なのか? 正直、同じような悩みでも次元が違うことなので、一概には言えないことではないか?」
 といえるのではないだろうか?
 それを考えると、
「ウラシマ太郎にしても、不治の病で余命が決まってしまっている人も、誰が何を言おうと、どうしようもないのだ。そういう意味で、この二人が話をすれば、どういう感情になるのかということを、考えてしまった。本当にそんなことを考えてしまっても、いいのだろうか?」
 と考えさせられるのだ。
 そんなことを考えていると、また、大学時代からの風俗通いを思い出すようになってきた。
 数回、あやねさんに入ったが、さすがに、最期の方は、
「飽きてきてしまった」
 といってよかった。
 正直、こちらが興奮してきていないことを、生理的に感じたのか、
「無理しなくてもいいよ。他の女の子に入ってみたいのだったら、それもいいと思うわ。経験も必要だもんね」
 といってくれた。
 しかし、だからと言って、
「飽きてきた」
 という言葉を、あやねは自分の口からいうことはなかった。
 もし、それを言ってしまうと、
「自分の負けだ」
 とでも思うのではないだろうか?
 とにかく、あやねの言う通り他の女の子にも、そして別の店にも行ってみることにした。
 実際に、好みの女の子もいたし、
「ドストライクだ」
 と思う女の子もいた。
 実際に身体の相性も遭うと思う子もいたりしたが、二度目に入ってみようという気が起こらなかった。
「どうしてなんだろうな?」
 と感じた。
 よほど気に入った女の子だったので、本指名で2度目に入ってみると、
「もういいか?」
 と感じたのだ。
 別にサービスの質が落ちたわけでもない、しいていえば、最初の時の印象で、
「こちらが勝手にハードルを上げてしまったことが原因ではないか?」
 と感じたのだ。
 確かに二度目お気持ちよかったし、賢者モードに陥ったとしても、そこまで苦痛ではなかった。
 賢者モードも、
「嫌だったら、そんなにも嫌な気持ちにあるのであれば、逆に、賢者モードを楽しもうと思うようになってから、賢者モードが嫌ではなくなっていた」
作品名:時間を食う空間 作家名:森本晃次