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夥しい数のコウモリ

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 それを思うと、例のつり橋の話で、
「少しでも危険があるなら、先に進まないのが、懸命な手段だ」
 といえるのではないだろうか?
 スキー場は、もうこの土地では営業は不可能になった。夏の間の別荘くらいはいいが、これが冬ともなると、とても暮らせる状態ではない。
 冬の間の半分くらいは、吹雪に襲われる地域で、それも、定期的に起こるのであればいいが、いつどうなるか分からない状態で、まるで雪山のようであった。
「ここの山は生きているんだろうな」
 と言われるようになったのである。
 このあたりは、避暑地ということもあり、山岳地帯に囲まれていた。
 盆地というわけでもない、盆地であれば、気温が上がってしまって、避暑地としては、向かないからだ。
 そんな地帯ということもあるのだが、このあたりには、
「自然の環境でできあがったものが結構あるようだった。
 近くに火山があるせいか、このあたりには、花崗岩があったり、花崗岩に包まれた、洞窟があったりもした。
 そういう意味で、昔このあたりの戦国武将は、城の建築も独特で、
「山の気候が変化しやすいことを狙って、変幻自在な城を作り上げた。
 曲輪の中には、
「形が変わるもの」
 があったり、それぞれの曲輪や櫓は、似ているようで似ていない構造になっていて、敵が入り込むと、敵は、
「自分たちの手で入ってこれた」
 と思っているのだろうが、実際には、相手の細工に騙されて、入り込まされたことに気づかず、気が付けば、集中砲火を浴びることになることだろう。
「あっと、思ったら殺されていた」
 というほどの電光石火で、相手は下手をすると、やられていることに気づかされることなく、奥に進んでいる。
 実際には、騙されて誘い込まれているのに、自分たちが進軍していると思うと、
「こんな城、あっという間に攻め落とせる」
 と思っていると、すでに、まわりは敵だらけであることを思い知らされ、どうすることもできなくなっていることであろう。
 そんなことができるのも、城のまわりが、天然の要害になっていて、錯覚を相手に与える環境になっているということである。
 実際に、有名な城というと、カラクリのようになっていて、実際の入り口だと思ってそちらから行くと、実は罠であり、閉じ込められて、集中砲火を浴びてしまったり、先に進んでいると思いながらも、角度や、進路の購買によって、実は天守から遠ざかっているような構造になっていたりする。
 それだけ、攻城というのは難しい。
「籠城に比べて、攻城には、その3倍の人数を必要とされる」
 という話のようだが、実際にその通りなのだろう。
 さらに、地の利であったり、城下にたくさんの兵を潜り込ませていた李、城中に、普段は百姓をしている人の屋敷を構えさせ、戦になれば、足軽として戦わせるように訓練をしていたりするところもあっただろう。
 戦国時代は、
「食うか食われるか。いくら自分が主君であっても、部下から謀反を起こされることがある」
 と言われる。
 そう、いわゆる、
「下克上」
 というものだ。
 戦をするにも、いろいろな兵法があったりする。すでに古代から言い伝えられている兵法が伝わっていて、今の時代にも本当は通用するような話もあるのだろうが、今の人は、平和ボケをしているので、昔の話など聞く耳を持たないというのが、本音であろう。
 このあたりの攻城戦や籠城の話を勉強していれば、スキー場の経営にも役立てたというものだったのかも知れないが、それも結果論というもので、答えが見つかるかどうか、分からないというものだ。
 こんな田舎街に、他に類を見ないような場所が築かれていたなど、誰が分かることだろう。
 そんな火山が存在していた街ということで、この奥に森があるのだが、その森が山の麓に続いているようで、山の麓のあたりは、地元の人でも、めったに入り込んだりはしないということだった。
 実は、このあたりの森は、
「迷い込んだら、慣れていないと出ることのできない樹海」
 だというのだ。
 まるで、
「富士の樹海」
 のようではないか、
 富士の樹海も似たようなものだったと記憶しているが、このあたりは、火山の影響で、火山による岩石がいくつも残っている。
 そのためと、森の中の特殊な地形とが、微妙に絡んできているのか、磁気が利かないようなのだ。方向を示す、方位磁石がいうことを利かない。そのせいで、迷い込んでしまうと、出られなくなると言われている。
 だが、最近では、研究が進んで、
「コンパスが通じない場所はすべてではなく、一部の限られた場所だけである」
 ということが分かってきて、しかも、コンパスが利かないところでも、別の岩石を持っていれば、磁力のバランスを中和することができるようで、コンパスが狂うことはないのだという。
 しかし、どうしても昔からの言い伝えが強いせいか、科学的な根拠を示されても、地元の人は、決して、中に入ろうとしない。
 実は、まだ、戦前の頃の話ということであるが、ある子供がこの樹幹に迷い込んで、2日ほど、彷徨った挙句、これはあくまでも、偶然に救助隊が見つけることができ、かなり弱ってはいたが助けることができたという。それからというもの、
「あの樹海の中には絶対に入ってはいけない。祟りがある」
 と言われてきたのだった。
 今の人がたたりを信じているかどうかまでは分からないが、一度は、ひどい目にあった人がいるという話を聞くと、どうしても警戒してしまう。
 だから、いくら科学的な根拠を言われても、樹海の中に入ることは街の人は絶対にしなかった。
 だから、中に何があるのかまったく知らずにいたのだが、研究員が、
「学術調査のため」
 という名目で入るものを、街の人間が止めるわけにはいかなかった。
 しかも、その理由が、
「入ってはいけないという伝説を、打ち破るため」
 ということだったので、街もむげに断るわけにもいかなかったのだ。
 だが、街の人は、あまりいい気分ではない。
「余計なお世話だ」
 と思っていた。
 ただ、中には、真剣に祟りを恐れている人もいて、オカルト的な発想をいくつか持っていた。
「中に入ると、出てこれなくなる」
 あるいは、
「妖怪に出会うかも知れない」
 さらには、
「何があるか分からないが、結果として、死体として見つかるかも知れない」
 などという、すべてが都市伝説でしかないのだが、そんなことを真剣に考えている人もいた。
 ただ、その人には、特殊能力が備わっていたのだ。その人は決して中に入ったことがないはずなのに、中の様子を一部知っているかのようだった。
「この森の奥の、山の麓のところに屋敷が建っていて、その裏には、どうやら洞窟があるんだよ。その奥の洞窟には無数のコウモリが住んでいて、そこは、コウモリ屋敷といってもいいようなところなんだよ」
 といって、自慢げににやりと笑うのだった。
 この人の言っていることが本当であることを、調査団が目撃したことで分かった。そのために、この人には、
「特殊能力が備わっているのではないか?」
作品名:夥しい数のコウモリ 作家名:森本晃次