夥しい数のコウモリ
そもそも、ナチス侵攻の時に逃げ出したような政府が率いる軍なのだから、それもしょうがないと言えるのかも知れないが、フランスは、結局インドシナ支配を諦め、その後始末を、国連に一任したのだ。
独立派のホーチミンはゲリラ戦を展開し、ソ連と手を結び、国家を社会主義化させていく。
それを見たアメリカは危機感を煽られたのだ。
「このままでは、インドシナはおろか、他の東南アジアの国も、共産圏に変わってしまうのではないか?」
と考えると、インドシナに介入しないわけにはいなかくなった。
これがいわゆる、
「第二次インドシナ戦争」、
通称で、
「ベトナム戦争」
というものだったのだ。
アメリカの想定以上に、ベトナムのゲリラは強かった。南北に分断し、北をソ連、南をアメリカという、まるで朝鮮半島のような状態での、
「代理戦争」
が始まった。
最初の頃こそ、アメリカは、局地的に、軍事施設だけを攻撃するというやり方に終始していたが、その作戦では、相手からの砲撃も多く、
「アメリカの被害のわりに、作戦が思うようにいかない」
という状態になり、アメリカは攻撃を、無差別に変えてきた。
とたんに、枯れ葉剤散布であったり、ナパームによる攻撃が激化し、報道カメラマンによって撮影された、戦争の悲惨さが世界に公表されるようになると、今度は反戦の空気が強くなってきた。
アメリカの戦争は、世論の動きが無視できない。
帆船が高まる中、結局、南ベトナムの政府や軍を置き去りにして、撤収しなければいけなくなり、そのまま、ソ連に侵攻されて、南ベトナムは滅亡し、統一国家が出来上がる結果になった。
当然、社会主義国としての成立だった。
南ベトナムは、首都のサイゴンが陥落し、名前も、
「ホーチミン市」
に変えられてしまった。
今の若い連中は、ベトナムが、南と北に分裂していたことを知らない人も多いだろう。それこそ、
「歴史上の出来事」
ということで、昔のことだという認識である。
それを考えると、まず言えることは、
「フランスがすべてを招いてしまった紛争である」
ということと、
「アメリカという国は、勝手にベトナム問題に介入してきて。そして立場が悪くなると、また今まで支援していた国を見捨てて、勝手に撤退してしまうという、ある意味、いい加減な国だということを露呈してしまった」
と言ってもいいだろう。
ソ連は徹底して、ゲリラ戦を行い。アメリカに抵抗した。
ソ連が正しいとは言わないが、こうやって考えると、
「ベトナム戦争とは何だったのだろう?」
と思う。
朝鮮の問題を解決もできずに。ベトナムに介入し、しかも、最期は見捨てる形になったアメリカ。
アメリカは中国でも似たようなことをしている。
「内戦が行われていて、それまで支援してきた国民党への介入を辞めたことで、共産党が勝ち残り、中国の共産国家が出来上がった」
のである。
そういう意味では、今の米中問題を引き起こしたのは、
「かつてのアメリカだった」
と言っても過言ではない。
しょせん、アメリカというところはそういう国なのだ。
つまり、民主主義というのには、限界がある。それを補う形で生まれたのが、社会主義、共産主義の考え方である。
ただ、これも、元々民主主義が、社会主義の反面教師のようなものだったのだとすれば、完全に、堂々巡りを繰り返しているだけではないかと思えるのだ。
飲酒運転の何が悪いのかというと、
「アルコールが入ったことで、反射神経の一瞬の判断が鈍ってしまって、事故を引き起こす可能性がある」
ということである。
身体に悪いという意味では、アルコールだけでなく、タバコも大きな影響を与えるのではないだろうか?
そもそも、タバコというのは、ニコチンというアルカロイドが含まれている。アルカロイドというのは、人間の神経に働きかけて、
「覚醒させるもの」
と言っていいだろう。
一種の麻薬であり、ヒロポンやヘロイン、アヘンや、覚せい剤などと、同じだと言えるだろう。
以前、子供番組の特撮もので、まだ、テレビが一般家庭に普及し始めたという、もう半世紀以上前の作品だったが、
ある街において、それまでおとなしかった人間が、狂ったように、銃を発砲したり、車を暴走し始めて、人を跳ね飛ばしまくったりなどという悲惨な事故が続いていた。
容疑者は警察に確保されたが、最初暴れていたにも関わらず、急に昇天し、気絶してしまい、死んだように眠りこんでしまうという特徴があった。
かなり寝込んでいたが、起きてくると、冷静さを取り戻していて、それどころか、自分が何をしたのかということをすべて忘れてしまっているのだ。
最初は、
「罪を逃れたい一心なのか?」
と思っていたが、
「全員が全員、示し合わせでもしない限り、ここまで同じにはならないだろう」
と考えられるのだった。
これをただの偶然だということで片付けていいものだろうか?
何かの悪の組織か何かが関わっているのではないだろうか?
症状が麻薬中毒者に似ていることで、事情も分からず、まずは原因を確かめることだった。
全員がタバコを駅前で買ったのが分かり、それを調査していくうちに、あるアパートにぶち当たり、主人公が中に入ると、そこには宇宙人がいたということだった。
人類のほとんどがタバコを吸っているということで、その中に、理性を失って、まわりがすべて敵に見えるという作用のある麻薬をタバコに仕込んでいたのだ。
これはまだ実験段階だったようだが、主人公がヒーローに変身し、宇宙人をやっつけることで終わった話だったが、最期のセリフが印象的だった。
「この話は未来の話であり、なぜなら地球人は、宇宙人から狙われるほど、お互いを信用していない」
という皮肉が込められていたのだ。
それを思うと、麻薬を仕込むのが、タバコだというところが面白かった。タバコも麻薬の一種だからだ。
そのことは何も言っていなかったが、きっと製作者は、そのことも裏で言いたかったのだろう。
当時は今のように、タバコが罪悪だと思われていない時代、逆に喫煙人口が8割を超えていた時代だった。誰もがどこでも、気兼ねなく、タバコが食事感覚で吸える時代だったのだ。吸わない人間の肩身のせまいことと言えばなかったに違いない。
社会風刺画子供番組としては痛烈だった番組だっただけに、余計にこの皮肉は、答えたであろう。ただ、喫煙者が当たり前の権利のように思えていた時代なので、こんな番組制作自体、喧嘩を売っているようなものではないのだろうか。
あの特撮番組は、前述の東西冷戦の話も皮肉ったものもあり、ベトナム戦争勃発前だったので、ベトナム戦争に関する反戦関係はなかったが、
「東西冷戦の分岐点」
とも言われた、フィデロカストロを中心とした、いわゆる、
「キューバ危機」
に関係したような、
「核開発競争」
を風刺した作品は存在した。
とにかく、時代としては、かなりの冒険的な政策だったに違いない。
子供番組としては、難しすぎたが、その時のこともが大人になってから、逆に火が付いたのが、その特撮番組だった。