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生と死の狭間

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 それは、まるで、人間界でも同じことで、人の命令で自分が困ってしまうと、死神のようなことを考える人間だっていないとは限らない。自分にその力がないだけで、力さえあれば、
「自分のために、誰かを犠牲にしてでも助かるというのは、悪いことではない」
 と、人間というのは、自分を正当化させるだけの理屈を思いつくのが、他の動物に比べて実に長けている。
 他の動物にはできないことなのかも知れない。
 そんな中で、死神やドッペルゲンガーとは少し考え方が違うが、ある意味、もう少し、科学的な考えではないかと思えるものがあった。
 それは、
「自殺菌」
 という考えで、一種のウイルスのようなものである。
 これは先生病のようなもので、そもそも、自殺を考えるということを、
「一種の病気なのではないか?」
 という考えが一番強くてしかるべきだと思えるのに、それを言い出す人が少ないのではないだろうか?
 それを思うと、ドッペルゲンガーのような怪奇現象に近い話も、ひょっとすると、この、
「自殺菌」
 なるものの影響なのかも知れない。
 病を及ぼすウイルスであれば、人に幻を見せることもあるだろう。人がフラフラと電車に飛び込む時や、眩暈を起こしたように、崖の上から急に飛び降りる人は、まるで。
「何かに操られているようだった」
 というではないか。
 だから、
「死神」
 というのを想像したのだろうが、いわゆる妖怪の世界の死神というのは、
「死の世界への案内人」
 というだけで、自分のノルマのために、人を殺めるなどということは絶対にしないはずである、
 それこそバレれば、どんなバツが待っているか分からないというものだ。
 地獄には、地獄のルールがある、そのルールを守らなければいけない。特に、そのルールは厳しいものだろう
 となると、地獄への案内という重要な役目がある妖怪に、厳しいノルマを負わせるというのもおかしな話である。
 そもそも、
「地獄で一番偉いのは閻魔大王なのだが、閻魔大王よりも偉いものがいないのか?
 と考えれば、
「地獄にはいないかも知れないが、他の世界にはいるのではないだろうか?」
 と言われる。
 その人が閻魔大王を見張っていて、
「地獄のルール」
 を破るようなら、閻魔大王を更迭し、違うものを、地獄の番人にすることだろう。
 閻魔大王も、自分の仕事を奪われては大変だ。それこそ、必死になって、地獄のルールを守るに違いない。
 しかし、
「自殺菌」
 というのは、そうではない。
 どのようなウイルスなのかは分からないが、他のウイルスと同じだとすれば、感情も何も持っているわけではない。誰かが何かの目的で作ったのだろうが、「
万能の神」
 と呼ばれている中の一人に違いないだろう。
 それでは、なぜそんなウイルスを作ったというのだろう?
 そもそも、人間社会には、無数のウイルスが存在している。もちろん、菌と呼ばれるものも含めてのことだが、ウイルスは基本的に、
「人間に対して、何か悪いことを及ぼすものだ」
 というのが、多い。
 伝染病にしても、そうだ。
 インフルエンザであったり、かつて流行した、結核、コレラ、チフスなどは、いわゆるところの、
「病原菌」
 というものだ。
 中には、変異して、どんどん強くなってくるもの、あるいは弱くなってくるものとさまざまであるが、ただ、すべてが、人間のために、悪影響になるものだけではない。
 中には、ビフィズス菌であったり、ナットウキナーゼのような健康食品であったり、キノコのように、毒があるものは別にして、食料として、貴重なものもたくさんあるのも事実である。
 だが、自殺菌は明らかに悪玉菌であり、今はその正体を知っている人はほとんどおらず、知っているとしても、
「都市伝説の類」
 としてでしかないだろう。

                 自殺をするということ

 自殺菌というのが、心を持っているものなのか、さらには、誰が何の目的で作ったのか?
 ということであるが、これも、考え方としては、どうしても、聖書であったり、神話などから、宗教的な考え方が絡んでくる。
 やはり作ったとすれば、それは、
「神の仕業だ」
 ということになるであろう。
 神というのは、全知全能の神であり、ギリシャ神話でいうところの、
「ゼウス」
 に当たるだろう、
 しかし、ギリシャ神話における、
「オリンポスの神」
 と言われている神々は、物語の中で、
「人間以上に、人間臭い」
 という表現で描かれている。
 ゼウスや、ポセイドンのような中心的な神は、人間の女に手を出し、人間と神との間の諍いの種になったりしている。
 ただ、圧倒的に神が強いので、神の考えに逆らった場合は、国ごと滅ぼされるなどということはざらだった、
 アトランティス大陸や、ボンベイの都などが、一瞬にして滅んでしまったという伝説は、ひょっとすると、地震による火山の爆発などにより、破壊されたことから、
「それも神の仕業」
 ということを結びつけることで、天変地異を神の力を考え、
「神に逆らってはいけない」
 という伝説を作り、人間の支配者は、
「その神から、国家支配を任されている」
 などという伝説を作ることで、実効支配を正当化しようとしているのだろう。
 考えてみれば面白いもので、神を神格化することで、国民支配に結びつけるために、
「神というものが、いかに、人間に近いか?」
 ということを示しているのは、何もギリシャ神話だけではない。遠く離れた日本でも、
「国作りの神」
 があり、
 神が、人間の姿で活躍する物語が、古事記である。
 そこから、天皇が生まれ、
 他の国には例を見ない、
「万世一系の天皇家」
 という血筋が、日本という国に君臨し、2600年が経過したということになるのだ。
 つまり、キリスト伝説よりも古い時代から、皇紀があり、天皇制が脈々と受け継がれてきたということなのだ。
 それだけに、日本を神の国として、さらに、元寇の時代から言われている、
「日本は負けそうになっても、神風が吹いて、必ず勝利をもたらしてくれる神がおられるのだ」
 ということで、
「不敗伝説」
 を信じて疑わなかったのだ。
 それだけに、日本が大東亜戦争に負けたと分かった時、ほとんどの国民が信じられなかったことだろう。
 日本を占領した連合国も、
「天皇制をなくしてしまうと、国家の統治ができない」
 と判断し、天皇を象徴としての存在を維持することになったのだから、それだけの力が実際にあったということであろう。
 何しろ、万世一系で、これだけの長い間、君臨してきた国はないだろう。それが、日本という国の特徴であり、ある意味、本当の意味で、
「神の国」
 なのかも知れない。
 もし、
「死にたい」
 と感じることが、自殺菌なるものによるものだとすれば、それを作り出したやつがいるということになるのだろうか?
 神でないとすれば、誰なのか? まさか自然発生的に生まれたものなのであろうか?
 ただ、この菌は、人間にしか効かないものだという。他の動物は、死にたいと思わずとも、自然の摂理により、弱肉強食で、そのうちに、天敵に食べられてしまう運命にあるだろう。
作品名:生と死の狭間 作家名:森本晃次