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後悔の連鎖

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 と言えるからだった。
 つまり、ロボットのように、命令されたことだけやって、感情があるのかどうかも見た目では分からない。これこそ、
「時代が生んだ、寵児だ」
 と言えるのではないだろうか?
 今の時代は、個人情報保護であったり、コンプライアンスや、男女雇用均等だったりと、制限があまりにも強すぎる。
「個人を守るため」
 ということであるのだが、だからと言って、ここまで締め付けられると、正直、息ができないくらいになるのではないだろうか。
 顔では無表情な人も、実際には、水に溺れて、必死でもがいているにも関わらず、それが表に出せないことで、誰にも分からないという気持ちになっている人だっているだろう。
 だが、まわりから制限を受ければ受けるほど、人間は自分の殻に閉じこもってしまう。
「まわりの人間に、自分の心を読まれたくない」
 という感情が働くのだった。
 そういえば、ここ数年前に流行った、
「世界的なパンデミック」
 によって、数年間、伝染病の恐怖に世界が、恐れおののき、かつてない暗黒の時代を過ごしていたのだが、当然のことながら、その時、皆マスクをしていた。
 マスクをしていることによって、自分が何を考えているのか、他人に悟られないという、暗黒の時代でも、人によっては、いや、全員と言ってもいいくらいに、マスクをするのを鬱陶しいと思いながらも、
「人に心を読まれない」
 という利点に感謝していたのではないだろうか?
 人がバタバタ死んでいったり、入院する病院がなかったり、救急車を呼んでもまったく来てくれなかったりという地獄のような時期を考えれば、不謹慎なことを言っているのだろうが、マスクに関しては、皆本音を隠していたのは、事実ではないだろうか。
 パンデミックの時代がもたらしたものも大きかったのではないだろうか?
 それまでは、平気でどこにでも出かけられたのに、パンデミックによって、最初は、
「緊急事態宣言」
 という一種の中途半端な制度があった。
「罰則のない戒厳令のようなものだった」
 といってもいいのだが、それは、憲法で、
「日本に有事は存在しない」
 という観点から、戒厳令を敷くことはできなかった。
 何しろ、戒厳司令官となるべく、軍隊が存在しないからだ。
 今の警察では、その権力はなく、さらに自衛隊も、
「市民の自由を縛る」
 なとという概念がないからだ。
 それでも、
「罰則のない都市封鎖」
 なる中途半端なことが行われ、日本人は堅実なので、罰則がなくとも守っていたが、実際には、かなり大変なものであった。
 その期間は、一か月未満だったが、街から人は消え、店も薬局と、スーパーやコンビニ以外の店は閉まっていた。インフラはそのままだったが、電車に乗れば、通勤ラッシュの時間でも、休日よりも人が少ないという状況だったのだ。
 さすがに、自由を縛ることができないので、
「外出禁止令」
 は敷くことはできなかったが、店も何もかもが開いていないのだから、外出しても、疲れるだけである。
 皆巣ごもりしていたのだ。何と言っても、伝染病が怖いというのが、根底にあるのだからである。
 そんなことを考えていると、
「本当にすごいよな。あの時期を乗り越えたんだから」
 と言えるのだが、被害がなかったわけではない。
 店はひと月の休業を余儀なくされ、政府からの補助金など、スズメの涙。ただ、一律に近かったことで、売り上げがほとんど普段からなかった店は、大助かりであった。
 不公平さが顕著だったが、仕方のないところもあったのだろう。
 だからと言って。破産して、店を畳まなければいけなくなった人はたまったものではない。
 従業員も、路頭に迷うことになったのだから、何を言っても不謹慎なのかも知れない。
 だが、若者の中には、そんな時期から、ずっとマスクをしているということに、抵抗あおろか、
「ありがたい」
 と思っている人の方が多かったに違いない。
 なぜなら、
「マスクをすることで、人に自分が何を考えているか悟られる心配はない」
 ということだからだ。
 昔であれば、
「目は口程に物を言う」
 などと言われて、目が見えれば、
「ある程度何を考えているか分かる」
 と言われたものだが、実際にマスクをしているとそんなことはないのだった。
 あくまでも、目を見れば、相手の気持ちが分かるというのは、
「顔全体が見えているからだ」
 と言えるのではないだろうか?
 というのも、口元も相手の気持ちを分かるのに大切な要素だ。
「口元が歪んでいると、怪しげな笑いであったり、歯を見せれば、何も考えず楽しんでいる、ある意味無防備な態度ではないか?」
 という風に感じるからだった。
 しかも、マスクをしていると、異性を見ても、せっかくの魅力が半減してしまうであろう。
「顔の一部しか見えなければ、まず誰かというのは、よく知っている人でも分からないものだ」
 と言えるのではないだろうか。
 そういえば、風俗嬢のパネル写真でもそうではないか。口元を隠したり、目元を隠したりして映っている。
 風俗嬢が一番怖がっているのは、
「身バレ」
 というものである。
 昔と違い、最近では、風俗嬢になる人も変化しているようで、昔だったら、
「借金があり、風俗で働かないと返せない」
 という人がほとんどだっただろう。
 しかし、最近では少し変わってきている。
 中には、借金という人もいるだろうが、それも、
「ホストに嵌って」
 という女性も少なくはないと聞いていたが、それはさておき、最近では、気軽に風俗嬢になる人が多いのだろう。
 普通に就職する感覚で、風俗嬢を選んだ。あるいは、
「アイドルのように、ちやほやされて、自分が主役になりたい」
 と思っている人もいるだろう。
 または、
「ここでお金を稼いで、いずれは自分のお店を持ちたい」
 という野心を抱いている人もいることは知っている。
 実際に、夜や休日に風俗で働いていて、普段の昼間は、昼職をしているという人も結構いたり、普段は。
「女子大生をしています」
 という現役女子大生もいるくらいである。
 バイト感覚というと語弊があるかも知れないが、
「自分を売ることに抵抗がない」
 という感覚なのだろう。
 ただ、それは悪いことではないと思う。今の時代。貞操観念など、あってないようなものだと言えるのではないだろうか。
 それを思うと、あまり必要以上なことを考えないようにしようと思った。
 だから、昔のように、風俗にいく男性も、罪悪感のようなものを持つ人は少ないのではないだろうか?
 そういう意味で、今の風俗嬢の存在は、どこか地下アイドルのような感覚に似ているように思う。
 たぶん、彼女たちも、いずれは、メジャーにという感覚ではないかと思うと、男としても応援したくなる。今の風俗はそういう時代なのかも知れない。
 話が逸れてしまったが、マスクをすることで、相手の気持ちが分からないということになると、パンデミックが収まってきてから、
「マスクをする必要がない」
 と政府が言い出した時期に、もちろん、マスクをしないでもいいと言っても、完全に伝染病がなくなったわけではないので、条件付きではあるのだが。
作品名:後悔の連鎖 作家名:森本晃次