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後悔の連鎖

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 そして、数軒あった無料案内所も、事務所だけが残っているような感じで、それこそ、
「夜逃でもしたのではないか?」
 というほどになってしまっていた。
 さらに悪いことに、そこまで摘発を行ったくせに、あっさりと、日本代表にもなれなかった。
 市長も、県知事も謝罪もしない。
 そこで生活していた人がいたのに、それまでの歓楽街が、今では、ゴーストタウンのようになってしまっていた。
 商店街がすたれていった時よりも深刻ではないだろうか?
 いまさら、他の産業を持ってくるという気にもさすがに商店街もならなかっただろう。
 精神的にかなりきつかったに違いないし、持ってきたとしても、また何かで摘発でも受ければ、どうしようもない。
 二度も成功した街だったのに、一度は、郊外にスーパーが出来上がるという理由。これはまだほかの土地、どこもが抱えている問題だから、しょうがないと言えるだろうが、その打開策として、起死回生だったはずのものが、県知事や市長の、
「メンツ」
 のために、あっさりと一つの産業を、一つの街を、立ち直れないほどにしてしまった罪は大きいというものだ。
 当然、補助金など出るはずもない。
 区画整理においての立ち退きなどであれば、行政から、補助金のようなものが出ることで、田舎に引きこもるということもできるのだろうが、せっかくあらたな産業を招致するということで始まったのだから、皆、
「フロンティアスピリット」
 を持ってやってきたのだろうに、まさか、招致した行政から、崩されるとは思ってもみなかっただろう。
 店側からすれば、相手が、どこの自治体であろうが関係ない。
「あれだけ、最初に誘致しておきながら、俺たちの居場所を奪うとは、どういう了見だ。梯子で登らせておいて、登ったところではしごを外すようなものではないか」
 ということになるのだ。
 それを考えると、一体、何をどうすればいいというのか、皆途方に暮れるしかないだろう。
 キャストの女の子たちは、散り散りに、いろいろな風俗街に行くことになるのだろうが、経営者はたまったものではない。行政を恨みたくなる気持ちも分からなくもないというものだ。
「本当にあれだけ店があって、ある程度は賑やかだった街が、こんなに街の明かりが消えてしまうことになるなんて」
 と、街の明かりを懐かしむ声もしばらくは聞こえていただろう。
 そんな、風俗街も、しばらく閑散としていて、駅前の駐車場経営などで、土地が虫食い状態になっていたが、最近になって、やっとマンションが建つようになってきた。
 こちらは、駅前ということもあり、ベッドタウンとして、普通に、家庭持ちの人が借りたり買ったりできるようなマンション建設に乗り出していたのだ。学生や単身赴任向けのマンションは、部屋数も少なかったが、こちらは、3LDKを基本に作られているだけに、分譲マンションは、かなりの年数が持つだけの構造になっていた。最近では駅前には不動産屋も増えて、ちょっとした、
「不動産戦争」
 が繰り広げられているのである。

                 区画整理

 最近のK市は、そんなマンションを中心とした、建設ラッシュだった。区画整理も行政によって行われていて、幹線道路も、整備が進められていた。
 そして、これは数十年前から言われていて、なかなか計画が進んでいなかったが、この地域で唯一の私鉄が、やっと、始発駅から、K市や、隣のO市を抜けるところまでを、全面高架にするということで、駅がきれいになっていくのだった。
 駅前の開発は、駅が新しくなるというのも含ま手のことだが、さすがに今は、まだ高価になるまでの、仮設の駅なので、まるで仮設住宅に近い設備しかない、そんな駅だが、きっと、きれいな駅ができると、駅前もきれいに生まれ変わることだろう。
 ここの駅は、昔の効果計画ができる前、つまり、まだ、商店街が賑やかだった頃は、駅前には、ファーストフードの店や、コンビニ、パン屋、喫茶店、いくつかの病院と、さらにアーケードの商店街を抜けた先には、スーパーがあったのだ。
 本当に、
「この商店街では、何でも揃う」
 と言われていた。
 何しろ、本屋や、文房具店まで、2軒ずつあったくらいだ。そんな商店街は、なかなかないのではないだろうか?
 商店街がすたれてきた頃よりも後に、鉄道の高架計画が持ち上がった。
 実際にウワサはそこからずっと前に存在していたが、話がまとまらず、渋滞していたのか、それとも、一度計画が途絶えたが、十数年後にまた再燃したということなのか、話だけは、40年くらい前からあったということだ。
「ああ、あれは、私鉄側と、県庁所在地の市とがもめていたからさ。私鉄側は、市に金をかなり出させようとしていたんだ。以前、ここを走っていた路面電車の経営を、ここの私鉄がやっていたんだが、市営地下鉄ができるということで、路面電車が廃止に追い込まれ、廃止になった時、その土地を、市が、ただ同然で買い取ったのさ。そういう意味で、市は、ここの私鉄には頭が上がらないのさ。今でも、市制には、私鉄の発言力や影響力は絶大だからな。そんなこんなで、市と私鉄側の勝手な確執のせいで、住民は振り回されているのさ。ここの立ち退きだって、すぐに行われ、最初の店は、高架から、再開発という話が出てから、半年もしないうちに、立ち退いただろう? ファーストフードの店だったから、きっと、情報はあったんだろうな。本当に早かったさ。それから少しして、今度は立ち退きラッシュになってしまって、駅前はまったく閑散としてしまったよな。おまけに、商店街は、郊外型の大型商業施設の煽りで、昼間でもシャッターが半分は閉まっている始末だよ。昔の街の雰囲気なんて、それこそ、まったくなくなった。それが、K市の実情なんだよ」
 と、先輩が以前話していたのを思い出した。
 その人は結構、地元の情報については、結構詳しく、そんな先輩だからこそ、かなりいろいろな内情に精通していたりして、話にもかなりの信憑性があった。
 そして、
「でも、今回、このあたりにマンションが立ち並んで、実際に高架になると、昔のような賑わいが戻ってくるんじゃないですか?」
 と聞くと、
「甘い! そんなことがあると思うか? 考えてもみろよ。私鉄がまごまごしている間に、JRの方は、結構いろいろな策を打って、ここ十年くらいの間に、新幹線だって、先を通しただろう? 主要駅も、開発されて、うちの駅には新幹線が停まるという触れ込みだったが、実際に駅に言ってみて、そんな賑やかなところ、あったかい? これは俺の持論でしかないんだけど、主要駅が、再開発ということで、一度立ち退いてしまえば、それまでとはまったく違った街が出来上がるんだ。その出来上がった街を見て、賑やかさが戻ってきたと思うかい?」
 と言われ、腕を組んで、考え込んでしまった。
作品名:後悔の連鎖 作家名:森本晃次