小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

後悔の連鎖

INDEX|5ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

「こいつが犯人だ」
 と言ってしまえば、百パーセント、痴漢の現行犯にされてしまう。
 特に、自意識過剰な女性であれば、
「自分から勇気を出して。痴漢を捕まえた英雄扱いされてしまい、もうこうなると、誰も助けてはくれない」
 もし、女の子が、
「あ、あの人ではない」
 と後から思ったとしても、それを訂正する勇気はないはずだ。
「何だ、あの女、このままでは冤罪を作るところだったじゃないか」
 と言われてしまうのが恐ろしいのだ。
 それを思うと、女も庇うことができなくなってしまうのだ。
 女性を英雄視するようになると、女性も痴漢されたと思えば黙っておかないだろう。
 中には昔のように、ここで名乗り出るのは恥ずかしいという、殊勝な女性も多いのだろうが、自意識高い女性は、そうでもない。
 ここで自分を目立たせるチャンスなどと思ったら、もう男に逃げ道はないのだ。
 そうなると、今の女性が強くなるというのは、
「冤罪を産む」
 という意味で、大きな問題になりかねない。
 それを思うと、
「本当にそれでいいんだろうか?」
 と思わずにはいられない。
 また、昔からいる、いわゆる、
「美人局」
 のようなやり方をするやつで、わざと、満員電車に乗り込み、気の弱そうな男の近くに女の子を立たせておいて、ちょっとでも電車の揺れに乗じて、まるで男が触ったかのように、男性に思わせ、そのまま警察につき出すわけではなく、屈強な男たち二人くらいが、
「お前、さっき、この子に触っただろう?」
 と言って、脅迫するのだ。
「警察に通報されたくなかったら、金よこせ」
 とばかりに、免許証であったり、身分証明のようなものを取られて、今後もしつこく付きまとわられ、警察にいうこともできず、そいつらに脅かされて、金を巻き上げられるということにもなりかねない。
 実際に、そんな犯罪も少なくはないだろう。
 そうこうしているうちに、金がなくなり、サラ金に借金をしたり、ひどい場合には、会社の金に手を付けたりすることもあり、どうにもならなくなると、最悪、自殺に追い込まれるということだってないわけではない。
 そういう最悪の状態を考えると、筋は違うのかも知れないが、コンプライアンスの、特にセクハラであったりする状況が、冤罪を引き起こしたり、脅迫という犯罪を産みやすい環境に持って行ったと言ってもいいのではないだろうか?
 確かに、セクハラを中心としたハラスメントは、決していいことではないが、一歩間違えると、冤罪を産みやすくなるという裏の面も孕んでいる。
 それを思うと、
「何事も、行き過ぎというものは、悲劇しか生まない」
 と言えるのではないだろうか?
 時々、2時間サスペンスなどを見ると、そういう犯罪への警鐘になるようなドラマがあったありする。
 痴漢として逮捕されたが、実は冤罪で、その人がその半年後どのような運命になっているかなどという話である。
 また、逆に、
「女を蹂躙する」
 という意味で、婦女暴行事件というのも、描かれたりしている。
 最近では、法律改正となったようだが、以前は、婦女暴行罪というのは、
「親告罪」
 だったのだ。
 親告罪というのは、
「被害者が訴えを出してこそ、検察が起訴できる」
 というものである。
 特に昔から言われているのが、暴行犯が、未成年だったりした場合。
 暴行犯も、被害者も未成年だったりすると、被害者も、自分から告訴はできない。必ず、親権者である、親の代理が必要となる。
 ドラマなどでは、加害者の犯人は、たいてい、お金持ちのボンボンで、受験勉強のイライラから女性を襲うという、
「ベタな犯行が多い」
 というのも、その方が、ドラマとして進行しやすいからである。
 金持ちの家庭だから、弁護士も優秀な人を付けられるし、金に糸目もつけない。そうなると、被害者宅に赴いて、まず、謝罪は当然のことであり、その後に徐々に事情を説明することになる。それは、
「告訴することの無意味さ」
 を訴えるものである。
 まず、
「この手の犯罪で、犯罪が立証されても、未成年であり、初犯であれば、まず、執行猶予がついて、実刑にはならない」
 ということをいう。そして次に、
「裁判ということになると、お嬢さんは警察でその時のことを証言しないといけなくなり。恥ずかしい思いをしたうえに、まわりに、暴行されたことが分かってしまい、どこに行っても、さらし者になってしまう」
 ということをいうのである。
 そこで、示談金の束を出して、
「これで示談ということにしていただければ」
 ということを言い出すのだ。
 親は悔しいと思うだろうが、娘がさらし者になることを思えば、泣く泣く、示談にしようと考えるのも当たり前のことで、こういう事件が、
「金の力に物を言わせて、示談になる」
 ということがほとんどだとすれば、実際に今公表されている婦女暴行の件数からすれば、実際に言われている件数は、その10倍くらいはあるのではないだろうか?」
 と考えられるのだった。
 そういう意味で、女性に関係する犯罪は、痴漢の冤罪という問題もあれば、婦女暴行という許せない問題もある。
 ただ一つ言えることは、婦女暴行を受けて、苦しんでいる女性がいるのに、女性であるということを武器に、男性に罪を擦り付けて脅迫する女がいるというのは、ひょっとすると、女たちから見ても、許せないのではないだろうか?
 それこそ、マナーを守らずにタバコを吸っている連中に対し、マナーを守って吸っている人たちが、感じるやるせなさと同じようなものなのではないだろうか?
 もっとも、程度の違いは、
「天と地ほどの差がある」
 と言えるのだろうが、それを考えたとしても、やはり、許せないものは許せないということであろう。
 K市において、そんな婦女暴行事件は、ほとんど起こっていなかった。
 いや、これも、敏腕の弁護士によって、示談が成立したことで、不起訴となった事件も少なくはないだろう。
 特に未成年だったりすれば、大いにあることで、実際にどうだったのかは、今となっては確認のしようがない。
 ただ、今回起こる暴行事件がどうなるか、今の時点では誰にも分からなかった。
 そもそものきっかけは、時期的には、ちょうど三月の終わり頃のことだった。
 いわゆる、
「年度末調整」
 というのが行われていて、幹線道路が穴だらけになっている時期のことだった。
 K市というところは、前述のように、駅前と言えども、それまで繁華街だったところが、半分以上はシャッターが下りていて、商店街を抜けると、空き家のところも多くなっていたりした。
 しかし、その頃になると、かなりの人が立ち退いていくことで、家を取り壊して駐車場にしたり、マンションを建てたりしていた。
 商店街はすたれても、駅まで徒歩10分くらいの場所にマンションが建てば、ベッドタウンとしては、そこを借りたり、買ったりする人も結構いるだろう。
 最近は、そういうマンションの建設ラッシュでもあったのだ。
「この間までは、駐車場だったのにな」
 というところも多く、中には、
「転勤族で、単身赴任のサラリーマンが、住むようなマンション」
作品名:後悔の連鎖 作家名:森本晃次