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後悔の連鎖

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 この新しい業界は、どんどん増えてくるのだが、これもある意味、問題がある。
 というのは、基本が、
「会員制」
 というところにあった。
 つまり、
「会員が増えなければ、基本的に売り上げは伸びない」
 ということである。
 例えば、最初に会員になった人は、100人いたとして。最初は、皆一か月で5万の購入があったとすれば、月で500万の売り上げになる。それが半年経って、50人会員が増えて、150人になったとすれば、皆が果たして5万円を買ってくれるであろうか?
 新しく会員になった人は買ってくれるかも知れないが、既存の会員は、次第に売り上げは減っていくのではないか?
 つまり、最初こそ、皆、物珍しさで、どんどん買うが、次第に、ネットによる購入を生活費で計算し始めると、次第に財布のひもをきつく締め始めるのだ。
 商品がずっと変わり映えしないものとなってしまうと、マンネリ化してしまうと、
「やっぱり、スーパーで、自分で見て買う方がいいわ」
 と思ったり、
「月末締めの翌月引き落としなどということで、金銭感覚が鈍ってくる」
 と考える人が多くなり、次第に一人の購入価格が減っていくのが当たり前になってくるのだ。
 そうなると、会社側が何を考えるかというと、
「会員を増やす」
 ということが、一番に考えるようになる。
 もちろん、真新しい商品を探すというのも並行して行う必要があるが、一番目に見えて成果が分かるのは、会員を増やすことである。
 その考えは、ある意味、自転車操業のようなものではないだろうか?
 それをあからさまに感じたのは、今から、15年くらい前に問題になった、
「自費出版社系の、社会問題」
 であった。
 バブルが弾けたことで、残業をしなくなった時間の余裕を、サブカルチャーなどに時間を使う人が増えてきた。ジムに通ったり、趣味に打ち込むために、教室に通ったりなど、それまで、
「自分にはできない」
 と思っていたが、
「時間があるなら、やってみよう」
 と思うようになったことで、爆発的に増えたのが、
「小説執筆」
 という趣味であった。
 昔は、小説家を目指したり、本を出したいと思っていたりした人が本を書いて行動するとすれば、
「有名出版社が主催する、文学新人賞に応募する」
 ということか、あるいは。
「原稿を直接、出版社に持ち込んで、編集者に見てもらう」
 というやり方くらいしかなかっただろう。
 出版社の新人賞など、それこそ、最近始めた人間には、ハードルが高すぎる。もし、入賞できたとしても、次回作への期待から、そこで終わってしまう人が結構いるという。
 持ち込み原稿に至っては、編集者の人は受け取りくらいはするだろうが、ほぼ、確実に読みもしないで、ゴミ箱行きが関の山である。編集者の人間も、
「俺たちだって暇じゃないんだ」
 と、自分の仕事もあるし、既存の先生たちへのフォローもある、新人にもなっていないずぶの素人の作品に目を通すなど、そんな時間、あるわけはないというものだ。
 しかし、そんな状況を逆手に取って出てきたのが、
「自費出版社系」
 の会社だった。
 自費出版というのは、昔からあったが、それはあくまでも、
「本にしたいという原稿があったら、製本してあげる」
 という程度の製本作業くらいであった。
 当然、本屋への流通などありえず、退職金の一部で、自分が書いた本を形にして、知り合いに配るというくらいのものだったのだ。
 だが、その頃に爆発的に増えた、小説執筆を趣味にしている人を相手にすれば、儲かるということが分かってきたのか、自費出版社系の会社もうまくできていた。
 まず、新聞や雑誌、ネットなどで、
「本を出しませんか?」
 ということで、小説を書いている人の目に留まるようにする。
「原稿をお送りください。こちらで必ず読んで、評価をして、出版内容を提案いたします」
 などということを書いてある。
「どうせ、小説を書いても、どこにも見せるところがない」
 と思っているところにそういう広告を見れば、皆こぞって、原稿を送るだろう。
 確かに、相手は批評をして返してくれる。
 相手がうまいところは、
「長所ばかりを褒めるのではなく、短所も適切に指摘して、どうすればよくなるのかということまで細かく書いてある」
 出版社に持ち込んでも、読まれずゴミ箱行きだということを分かっている人にとっては、雲泥の差に感じることだろう。
 そうやって、筆者を安心させておいて、出版案内を行う。出版方法には三つがあり、まず一つは、
「優秀な作品なので、出版社が全面バックアップで、費用もすべて、出版社持ちとなる、企画出版」
 というやり方、そして、
「優秀な作品であるが、すべてを出版社が負うというのは危険なので、お互いに出版費用を折版するという共同出版というやり方」
 そして、今までのような自費出版のやり方の3つであった。
 ただ、基本は共同出版しか言わない。
 しかも、定価×発行部数のさらに上の値段を筆者に見積もりとして出すのだ。経済学の基本、いや、小学生低学年レベルの算数ができさえすれば、おかしいということが分かりそうなものなのに、どう皆が納得して本を出す気になるのか分からないが、実際に本を出そうという人が相当数いたという。しかし、聴いた人の話であるが、
「出版社にずっと企画出版を目指して原稿を送り続けていると、相手がキレて、今まであなたの作品を自分の権限で共同出版にしてきたけど、もうできませんと言い出したんですよ」
 という、
「それでどうしたんですか?」
「こちらも、そんな、疑問に思っている会社に、百万円単位の金を出すきはないので、企画出版できるまで、原稿を送り続けると言ったんですよ。こっちもいい加減詐欺だと思い始めていましたからね。すると相手はこういうんですよ。企画出版なんて、ずぶの素人にできるわけがない、こっちだって商売だから、著者に知名度がないとできないんですよ。著者が芸能人のような人か、犯罪者などでなければ、企画出版は、100%ありえませんよっていうんですよ。さすがにこれが相手の本音だと分かりました。最初から企画出版などありえないのに、その気にさせて、共同出版で、お金を出させるというやり方なんだってね」
 と、詐欺だと分かっていたというには、さすがにこの話になると、怒りがこみあげてくるようだった。
 そして、こうも言った。
作品名:後悔の連鎖 作家名:森本晃次