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一足す一は?

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 自分が苛めを受けている時、自分は、そのスピードの遅い世界の中にいたのだ。
 その世界では、普段は皆普通のスピードだったのだろうが、たまに、高速で動いている人がいることに気づいていた。
 苛められていた梅林は、自分のいる世界が、実はもう一つの世界の方で、
「凍り付いたような氷河期のような世界だ」
 ということを分かっていた。
 だが、そんなことを言っても誰も信じてくれない。
 いや、ひょっとすると、以前にそれを口にしたのかも知れない。自分では覚えていないのだが、それはあくまでも、
「夢の世界でのことだ」
 と感じていたからではないだろうか?
 ゆっくりと動いているという感覚はまったくない。ただ、一つ思ったのは、
「風が、今までに比べれば、重たい感じがする」
 ということであった。
 風が強い日というのは確かにあった。雨と一緒に風が強い時というのは、傘が役に立たないことが多かった。
 特に、風が重たいと感じるようになってから、傘が壊れる比率が高くなってきた。
 そのことを感じるようになってから、まるで図ったかのように、
「風が重たいんじゃないか?」
 と、いっている人が増えた気がした。
 ただ、そのことについて、深く触れる人は誰もいない。
 言い出しっぺも、口にはしたが、
「だから何?」
 とでもいいたげで、誰もそのことに言及はしないのだった。
「異常気象なんだろうか?」
 と、確かに、最近のこお異常気象は、信じられないことが起こったとしても、もう、誰も驚かないレベルにまでなってきている。
 何しろ、
「体温よりも気温の方が高い日が、何日も続いているんだからな」
 ということである。
 人間は、平熱が37度以上あれば、発熱と一般的に言われている。
 しかし、ここ十年くらいの間で、最高気温が39度以上などというのは、不思議でも何でもなくなってきた。
 昭和の頃であれば、33度以上の気温では、耐えられないといっていたではないか。33度などというと、6月の梅雨入り前でも普通にある。夏が過ぎたはずの、10月になっても、30度以上は当たり前、
「本当に、冬が来るんだろうか?」
 と、夏の終わりに、まったく信憑性が感じられないというようなのが、今の異常気象ではないだろうか。
 確かに冬であれば、身体が凍り付いたようになってしまって、身動きがまともに取れなくなってしまうだろう。
 だからと言って、夏になれば、身体が暑さとともに、動けるというわけではない。むしろ暑すぎて、身動きができなくなってしまう。
 確かに、適度な暑さであれば、風が吹いてくれば、涼しいと感じるだろう。
 しかし、ある程度の温度を超えると、今度は、動くほどにその暑さが耐えがたいものになってくるのだ。
 その温度というのは、
「体温」
 であった。
 体温よりも外気が高くなると、まるで風呂に入っているようなものではないだろうか?
 熱い風呂に入った時、熱いからといって、かき混ぜると、却って熱さが増してしまう。それと空気中も同じことで、体温よりも高くなると、動けば動くほど、摩擦が生じて、暑さが耐えられなくなってしまうのだ。
 今の夏は。そんな現象になっているのだ。今までであれば、
「そんなバカな」
 と、体温よりも気温の方が高いなどという現象を、信じられないと思っていたのではなかっただろうか?
 今の世の中、今までは信じられないと思っていたようなことが平気で起こる。
 考えてみれば、昭和の頃までは、クーラーのない時代があったくらいなのだから、扇風機で我慢ができたはずだ。
 しかし、前述の例と同じで、
「扇風機の風が、まるで風呂をかきまぜた時のような感じになる」
 ということで、扇風機を掛けていると、却って、暑さで耐えられなくなってしまうのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、昭和の頃は高くでも、35度がいいところだっただろう。今では、最高気温が35度以上の猛暑日というのが、
「何日連続で発生している」
 というほど、珍しくも何ともなくなっているのだった。
 そんな暑さを異常気象というのだろうが、異常気象はそれだけではない。毎年のように起こる、集中豪雨であったり、台風の極度な強さ。
 その理由として、
「海水温が下がらない」
 ということが一番の要因のようだ。
 海水温が下がらないと、台風が発生してから、日本に近づいてくるまでに、精力が落ちないのだ。
 普通台風というと、サイパンやグアム、テニアンなどと言われる、アリアナ諸島付近で発生する。発生してから、普通であれば、大体5〜7日くらいの間で日本に上陸するのだろうが、その時、海水温が低ければ、精力はどんどん下がってくるのだ。
 しかし、今の日本付近の夏は、海水温が、28度くらいで、それくらいだと、ほとんど勢力が落ちないという。
 しかも、最近の台風は動きも不規則である。
 いわゆる、
「太平洋高気圧」
 というものが強く、まるで結界のように張り巡らされているので、それに押されて、台風は迷走することが多い。同じところをクルクル回ってみたり、いきなり、90度以上に折れ曲がって進んできたり、何といっても、普段なら、
「南西諸島から九州か四国に上陸するのが普通なのに、いきなり、関西に上陸した台風が、九州方向に曲がっていく」
 という、ありえないような動きをする台風まで現れた。
 最近は、台風だけではなく、集中豪雨もひどいものだ。
 同じ場所にずっととどまって、集中豪雨を長い間もたらすという、いわゆる、
「線状降水帯」
 なるものが、毎年、各地に、洪水などの被害をもたらすのだった。
「まるで、戦国時代の攻城戦のような、水攻めのようではないか?」
 というようなものが、一般的になってきている。
 このような甚大な被害をもたらす可能性のある異常気象を見ていると、
「気温が、35度以上の猛暑日が数日続いたくらいでは、ビックリしない」
 というものである。
 そんな異常気象を味わっていると、夢の中のことが、それほど不可思議にも思えてこない。
「事実は小説より奇なり」
 と言われるが、空想の話が、事実に近づいているのか、事実が空想に近づいてくるのか、それほど、差がないような気がしてきた。
 確かに夢というのは、
「実際に経験したこと異常を見ることはできない」
 と思っていた。
 夢の中であっても、やはり空は飛べないのだ。
 飛ぼうとしても、軽く宙に浮くくらいで、スーパーマンのように、マッハのスピードで飛んでいくということはできないのだった。
「夢だから」
 と、夢であるということが分かったうえで、もし、高いところから飛び降りるとすれば、できるだろうか?
 飛び降りるところの近くまでいくだけで、脚が震えて、動かない。飛び降りたとすると、「どうなるのだろう?」
 と考えるだろう。
「飛び降りた瞬間に、目が覚めて、身体が痙攣を起こし、そのまま足がつって苦しむことになるかも知れない」
 という思いと、
「地面に叩きつけられそうになる瞬間に、まるでエレベータが減速するかのように、一気に急ブレーキがかかり。事なきをえる」
 という、これもどこかで見たことがあるような、
「魔法の絨毯」
作品名:一足す一は? 作家名:森本晃次