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もう一人の自分の正体

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 都合よく考えることで、知らぬ間に相手にプレッシャーを与えたり、相手を縛っているかのように感じているということに、自分で気づいていないのだ。
 岡崎は、本当に自分のことが分かっていない。だから、簡単に覚えられるようなことを簡単に忘れるのかも知れない。
 自分のことが分かっていないということは、それだけ自分に自信がないともいえるだろう。
 そう思っていると、自分に自信がないことを、相手は、
「それって、私のせいかしら?」
 と、自分を責めることになってしまう。
 普通なら、そんな感情になると、相手がすぐに重たく感じられるようになり、プレッシャーの原因が彼にあることに、気づくようになるのだ。
 そうなると、もう付き合ってはいられない。それでも、彼に本当のことを告げるのは酷な気がするので、やんわりと断ることになるのだが、断り方が皆同じなのは、
「そういう断り方しか、選択肢がないからではないか?」
 と感じるのだった。
 岡崎の学生時代などは、好みの女の子が他のやつとかぶったことがなかった。皆が、
「キレイだ」
 といって、我先にというような女性を、岡崎は相手にしなかった。
「俺はキレイ系というよりもかわいい系だからな」
 といっていたのだが、それも、ロリコン系が大好きだった。
 とは言っても、さすがにランドセルをかるった女の子を相手にするようなことはないが、制服を着ている中学生であれば、十分ストライクゾーンだった。
 さらに、岡崎は、ぽっちゃり系の女の子が好きだった。普通のぽっちゃりというよりも、
「幼児体系」
 が好みだったのだ。
 それは、高校生の頃くらいからのことで、それまでは、自分の好みがよく分かっていなかったので、どういう女の子が好みなのか、分からなかった。
 だが、小学生の頃の女の子というのは、女性らしさを感じなかった。男の子と一緒に遊んでいても違和感はなく、どちらかというと、
「男の子に負けたくない」
 といった感じの、おてんばな女の子が多かった気がする。
 それは、岡崎の小学生時代が、まわりに対していつも遠慮をしていて、目立とうなどという意識もなかった頃だ。もしそんなことを考えていたとすれば、中学時代に苛めに遭うこともなかったのかも知れない。
 中学時代というのは、自分が苛められるようになった理由の一つとして、
「目立ちたいと思うようになったからではないか?」
 と思うようになった。
 それは、無意識だったのだろうが、まわりの女の子に、格好いいところを見せたいという意識があったからではないかと思った。
 それが思春期の感覚であり、ただ、この思いは本当であれば、
「小学生の頃に感じていてもよかったのではないだろうか?」
 と感じたのだ。
 小学生の頃は、まわりも皆背伸びしていた。
 女の子でも、
「男の子に負けたくない」
 と思って、露骨に挑戦的になってくる。
 そんな女の子を、まだ思春期にも入っていない岡崎が、意識をするはずもない。むしろ、自分から遠ざかりたい気分になって不思議ではない。
 だから、小学生時代に、女の子といっても、別に異性だという意識はなかった。ただ、
「男の子は、女の子をいたわらなければいけない」
 と先生から言われてきた。
 だから、
「女の子というのは、か弱いもので、男が助けなければいけないものだ」
 と思い込んでいたが、その実、
「クラスの女の子がおかしいのか、これのどこがいたわってやらなければいけないんだ?」
 と感じていた。
 確かに、小学生の頃の女の子であれば、いたわる必要などなかったかも知れない。
 成長も男子よりも早く、身長もあっという間に背が伸びていて、自分よりも背の高い女の子が多かった。
 中学に入ると、そんな女の子が、急に変わってきた、最初は、
「制服を着ると皆、おとなしくなるんだろうか?」
 と、制服に魔力でもあるのではないかと感じたほどだった。
 だが、実際にはそんなことはないのだが、見ているこっちの方が、何か意識をしてしまう。
「この間までランドセルをかるっていたのにな」
 という意識である。
 確かに、成長が早く、身体の発育も、もう大人に近いように見えていた女の子も、
「制服を身にまとうと、成長が違う段階に入ったのだ」
 と感じるようになった。
 髪型も落ち着いて見えてくるし、おしとやかに感じられるようになったのだ。
 中学に入ると、今度は、男の方の成長が、顕著に見えてくる。
 しかも、明らかに、異性を意識していることを感じるのだ、
 ただ、その頃には、まだ、どんな子が自分の好みなのかということが確定しておらず、ただ、自分が、異性を意識するようになったことを感じるのだった。
 それが、高校時代から、制服の女の子に興味を持つようになった。最初は、お姉さんっぽい子が好きで、大人しめの女の子を気に入っていた。その元祖は、小学生時代にさかのぼる。
 あれは、小学三年生くらいの頃だったか、異性というものを意識するわけでもないのに、女の子の友達ができると、結構、その子と一緒にいることが多かった。
 男の友達からは、
「女の子と一緒にいて、軟弱なやつだ」
 と言われたものだが、岡崎は、そんなことはないと思っていた。
 何を言われても、その時の、その女の子と一緒にいるのがよかった。別に楽しかったというわけではない。気持ちの上で何が一番近かったのかといえば、
「ホッとした気分になれる」
 というところだっただろうか?
 ただ、その気持ちもハッキリしたものではなかった。
「言われてみれば、ホッとするという気分に近い」
 ということであって、自分でも、分かって感じていることではなかったのだ。
 そんな岡崎だったが、その女の子に対して、子供の頃でも、
「少し異常なのではないか?」
 と感じるようなことを思っていた。
 思春期になれば、悩むに十分な性格で、
「異常性癖」
 といってもいいくらいのものだったに違いない。
 というのも、その性癖というのは、
「逆らうことのできないおとなしい女の子を、自分の言う通りに聞かせること」
 だったのだ。
 といっても、子供の世界のことなので、
「SMのような主従関係」
 というわけではない。
 ただ、自分がしてほしいというようなことを望んでいて、彼女がその通りにしてくれるのが嬉しかったというだけのことだった。
 しかし、彼女は決して、岡崎の意にそぐわないことはしなかった。
「俺が考えていることを、いつもしてくれる。逆らうなんて彼女からはありえないことだ」
 と思っていた。
「もし、逆らったなら?」
 などということを考えたこともなかった。
 それだけ、全幅の信頼を置いていたのだ。
「これが、いわゆる主従関係と言われるものなのだろうか?」
 と考えたが、それは違った。
 というのは、岡崎の中で、絶対的に、自分に自信を持っているわけではない。むしろ自分に自信がないから、そんな自分に従ってくれる人がいるというだけで、
「ひょっとすると、俺って自信をもっていいのかな?」
 と感じたいがためだけに、従者を必要としているのだとすると、この主従関係は、
「主従関係に見えてはいるが、主人がこんなにポンコツでは、先が見えている」
作品名:もう一人の自分の正体 作家名:森本晃次