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連鎖の結末

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 占い師の部屋は、それぞれの街から結構遠かった。それぞれ出張扱いで、時間がどれだけかかるか分からないということで、それぞれ、
「一泊で行ってきなさい」
 ということで、送り出されたのであった。
 さらに、二人がアポを取った日は、偶然にも、同じ日だった。お互いに、
「他の地区からも、どこか同じように、派遣されてきた人もいるんだろうな?」
 と考えていた。
 だた、いるとすれば、もう少し人がいると思っていたが、まさか、お互い同士だけだとは思ってもいなかった。
 同じ日に、占いで見てもらうことにしたのだが、占い師の方針として、
「占いをするのは、一日に2件までです」
 ということになっている。
 それだけ精神的に集中力が必要なので、簡単にはいかないということであった。
 だから、それぞれ、午前と午後ということにしたのだが、午前中が、鈴村の方で、午後から、石橋の方になったのだ。
 単純に近い方が先になったというだけだが、これも一種の運命だったのだが、そのことに誰も気づいていなかった。
 占い師は、どちらかというと、陰陽師に近いものだという。そもそも、陰陽師がどのようなものなのか分からなかったので、
「これが陰陽師だ」
 と言われれば。信じるしかなかった。
 これだけ、有名で、よく当たると評判なので、まさかまがい物だということはないだろうか、不思議な感覚だったのは、無理もないことだった。
 一つだけ分かっているのは、五芒星だけで、五芒星は、マンガやアニメなのでよく出てきたので、それがあるだけで、
「ああ、やっぱり陰陽師なんだ」
 と納得させるに十分だった。
 それだけ、五芒星というものの力は強いもので、相手を納得させるだけでも、十分なものだったに違いない。
「鈴村さんは、陰陽師を正直、信じているわけではないですけ?」
 と言われたが、
「はあ、何分、馴染みがないもので」
 と正直にいうと、
「そうですか? それも無理もないことです」
 と、言葉通り、無理に信じようとしないでもいいのではないかと思うようになると、少し気楽になってきた。
 考えてみれば、自分は、
「お告げを聞いてくる」
 ということのために、今の状況を説明するためにきたのだ。
 しかし、相手は事情が分かっているようで、説明は必要はないようだったのだ。
「さすが、陰陽師」
 と思ったが、それが、
「陰陽師の陰陽師たるゆえんなのだろう」
 と思うのだった。
「あなたの街では、同じ会社内で、連鎖反応が起こるということでしたね?」
 と聞かれたので、
「ええ、そうです。ほとんどは、部署ごとに、連鎖していくのですが、たまに、同じ部署での時もあったりします。それも、定期的に起こるんですよ」
 というのを聞いた陰陽師は、その表情に、別に慌てた表情はなかった。
 どちらかというと、
「そんなことは分かっていますよ」
 というような、余裕の表情であった。
 その顔を見ると、それだけでなく、何でもお見通しとでもいうような顔を見ると、どこか、苛立ちを覚えるのであった。
 それこそ、
「あなたたちの小田原評定は、実に無駄なことなんですよ」
 と言われているも同然だったのだ。
 陰陽師は、一生懸命に何かに祈っていた。それが何なのか、後ろから見ている限りではよく分からない。
 背中で見えないというのもその通りなのだが、見えたとしても、それが何なのか分からない。
 何やらカオスのようなものであり、混沌としているのだ。一つ一つなら分かるのだが、たくさん並んでいると、その法則性も分からないので、
「何が何やら分からない」
 といったところであろうか。
 しかし、それらには意味があるものなのだろう。そのことを我々が分かる必要もないということなのだろう。
 時間的にどれくらいが経ったのか、しばらくすると、陰陽師の念仏のようなものが途絶えた。そして、おもむろに後ろを振り返り、
「出ました」
 というではないか。
 思わず、
「ゴクリ」
 と生唾を飲み込んだが、それを見た陰陽師がすかさず答えた。
「どうやら、何か人柱の怨念が取り付いているような気がしますね。何か、心当たりがありませんか?」
 と言われた。
 心当たりと言われても、何しろ、鈴村は、誰でもいい人の中から、代表で選ばれただけのことで、そんなに会社のことに詳しくはないし、何よりも、さほど今回の任務を自分の中で重要だとは思っていなかったのだ。
 だが、
「言われてみれば」
 ということがあった。
「そうだ、会社のビルの屋上にあるあの祠」
 と思わず口に出すと、
「あなたは、その祠の意味をご存じですか?」
 と言われたので、
「いいえ、うちの会社は、雑居ビルの中のワンフロアを借りている感じなんです。そのビルの屋上に祠があるので、その謂れまでは知る由もないんです」
 というと、
「なるほど、私が思うに、その祠はどこかからか移されたものではないかと思います。だから、ビルに対しての怨念というよりも、その祠に祀られている人が、何かを訴えているのかも知れませんね」
 と言われるので、
「そういえば、一度、その祠について、以前その近くで、誰かが自殺をしたのではないかというような言い方をしている人がいたんです。ハッキリと自殺という言葉を発したわけではないんですけど、その人もなんだか怪しい感じがしたんです。急に目の前から消えてしまった感じで、その時は気持ち悪いと思いましたね」
 というと、
「なるほど、その人を供養してあげることをお勧めします。ですが、あなたたちが、この連鎖反応をどうやら恐れているように感じるのですが、私には、それほど恐ろしいものとは思えないんです。どちらかというと、必要悪というのか、それも言い方が違っているのですが、とにかく、気持ち悪いかも知れませんが、その人柱の怨念は、あなたたちに悪いことを及ぼすようなことはないように思えるんですよ」
 というのであった。
「じゃあ、悪くはないということですか?」
 と聞きなおすと。
「そうですね。若干、様子を見られるといいかも知れないです。あなたたちに、実害はあるんですか?」
 と聞かれ、
「言われてみると、連鎖反応にばかり気を取られていたんですが、起こっていることは、別に悪いという感じではないですね。ただ、それは私が感じているだけで、会社側では、何かの危機感があるのかも知れない」
 というと、
「そういうことは往々にしてあると思います。特にあなたの場合は、まわりに社会を拒絶しているような方がおられるでしょう? あなたには、その人の見えているものが見えるのではないかと思うんです。だから、あなたが今日私のところに来たのは偶然ではないと思いますよ」
 といわれ、
「そうなんですか? 私はてっきりくじ引きのようないい加減な感じで選ばれたのだとばっかり思っていましたが、理由らしきものがあるんですね?」
 というと、
「ええ、そうですよ。現にあなたは、屋上の祠のことをご存じだったでしょう? 他の人はどうなんです?」
 と聞かれたので、
「たぶん知らないと思います。もし、知っていたとしても、誰も何も言わないでしょうね? 祠があるので、怖いから、話題にしたくないということだと思います」
作品名:連鎖の結末 作家名:森本晃次