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連鎖の結末

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 彼らは、相手をしてもらえなかった世の中への恨みを、培われ、そして復讐の鬼と化して、スパイ活動を続けている。彼らとすれば、
「俺たちは、スパイをするために、生まれてきたのだ」
 という洗脳を受けて、今輝いているのである。
 今暗躍しているスパイの養成所というのは、実は、この街にあったわけではなかった、ここにきている連中は、別の街で、訓練を受けたわけだが、そのうちの一つが、鈴村の住んでいた街に存在していた。
 鈴村の住んでいる街は、都会であったが、いまだに大きな問題を抱えているところであった。
 それは、
「貧富の差が激しい」
 ということだったのだ。
 そのため、さすがに部落というところまではなかったが、住民の感覚の中に、まだ、部落であったり、村八分のような意識は根付いていた、特にこの街は、比較的平均年齢が他に比べると結構高い、それでも目立たないのは、年配連中は、密かに集まって、行動をするにも、おとなしくしていたからだった。
 彼らの中には、ホームレスになっていたり、ホームレスを監視するという、定年退職後の仕事だったりが結構人数的にもいるのだった。
 それでも目立たないのは、
「彼らが目立たないようにしか、行動していない」
 からだったのだ。
「まるで忍者のような集団」
 ということで、彼らのことを影では、
「忍軍」
 と呼んでいた。
 本当であれば、何とか忍軍というような呼び方をするのだろうが、
「目立たない」
 ということが、至上命令なので、呼び名も、ただの、
「忍軍」
 ということになったのだった。
 この街には、警察のごく一部にしか知られていない組織があるようだ。その組織のことは、警察内部でも、最高機密事項とされており、
「マルボウ」
 と呼ばれる、暴力団取り締まり関係の係官も知らないという。
 警察でも、知っているのは、国家公兄員会に繋がりのある人で、署長すら知らないというほどの機密であった。
 もっといえば、警察組織の中に、警察からの組織とは独立した、国家公安委員会から直接に命令を受ける部署があったのだ。
 警察内部に存在しているのは、カモフラージュのためだった。
 彼らの行動は、あくまでも極秘裏に行われた。だから、警察機構から見ても、
「怪しい集団」
 にしか見えなかったに違いない。
 だが、そんな状態において、密かに裏で暗躍している存在があることは、警察でも掴んでいたようだ。
 だが、それが敵か味方なのか分からない。一切の情報が流れてこないからだ。
 この警察署のモットーとして、
「自分の部署以外のところを気にしてはいけない。特に、正体の分からないものには近づいてはいけない」
 という不思議な鉄則があった。
 過去にそれを破って、密かに調べようとした刑事がいたが、彼は危うく命を落としかけ、何とか助かったのだが、その状況を上司に説明したのだという。
 彼は、自分の正義感に酔っていたので、上司が、さらにここから捜査の指揮を執ってくれるものだと思っていたが、何とm彼の方が、他の署に飛ばされたのであった。
「何で、この私が?」
 と上司に聞くと、
「お前はこの署の鉄則を知らないわけではあるまい? 殺されなかっただけでもありがたいと思わないといけない」
 と言われ、中途半端な気持ちで転勤していった。
 そう、正義感などというものは、ここではいらないのだ。
「命あってのものだね」
 というではないか。
 無謀なことをすれば、命を落とす。それがこの街の掟であった。
 ただ、その掟も、彼らを守るという意味で徹底されていることなのだ。そんなことを知らない刑事たちの中から、転勤させられた正義感に燃えるやつも出てくるだろう。そのうち命を落とす警官が出なければいいがと、上層部は思っているのだった。
 暗躍していることを、それとなく分かっている人は少なくはないだろうが、一般市民にそれを確かめるすべはない。
「警察は動かないのだから、安心していていいんじゃないか?」
 という、比較的、楽天的な人もいるが、
「こんな得体の知れない街から、早くどこかに移りたい」
 と思っている人もいるが、そうは、住宅事情や、仕事の関係で、うまくいくはずもなかった。
 それでも、暗躍している連中が、自分たちに直接、問題を起こすようなことはないと思っているから、逆に、
「下手に動かない方がいい」
 と思っていることだろう。
 昔だったら、
「何とか組の流れをくむ事務所が」
 などと言って、危ない街では、繁華街の裏路地あたりに、鉄砲の弾丸の痕が残っているなどというところも珍しくないという話も聞いたこともあるが、そんな物騒な話を最近はあまり聞かなくなった。
「会社でコンプライアンスが厳しいように、やくざも行動するには、難しい時代になったのではないか?」
 とも言われているが、果たしてどうなのだろう?
 とにかく、最近怖いのは、テロ関係と、詐欺関係である。
 テロというのは、例の、宗教団体による、帝都の大量虐殺や、それから5年後くらいに起こった、アメリカでの、
「同時多発テロ」
 などから、
「テロの脅威」
 は叫ばれ出した。
 詐欺というのは、それこそ、おじいちゃん、おばあちゃんに、子供や孫を名乗って、振り込みさせるという、
「オレオレ詐欺」
 などが横行している。
 さらに、ネットなどで、架空請求が起こりそうなサイトを見た人を狙って、電話を掛けて、お金を振り込ませたりという、実に悪質な手口が増えてきた。
 そういえば、
「オレオレ詐欺ではないが、老人をターゲットにした詐欺は、昔もあったな」
 と、前述の複数の食品会社を狙った凶悪犯の未解決事件と、ほぼ同じくらいの時期に、その事件があったのを聞いたことがある。
 この食品会社を狙った犯罪の話をしていた時に、年配の人が思い出したように話してくれたのだった。
「その事件というのは、商事会社を名乗る団体で、女の人を、一人暮らしをしているおじいさんのところに送り込んで、優しくしてあげて、相手を油断させて、その人の遺言を、その女性が財産を受け取るように書かせるように仕向けるというやり方で、老人の残り少ない人生の夢と希望を打ち砕くという意味での凶悪事件として、問題になったおだ」
 最終結末は憶えていないが、衝撃的だったのは、その社長にマスゴミが取材と称して、大挙として押し寄せて、もみくちゃになっているところに、ある男が乱入して、殺傷したということが起こったからだった。
 当然、生放送で速報のような扱いで放送されているところだったので、殺人の場面が放送されてしまったということで、大いにショッキングなことだった。
 もし、それがなかったら、
「ただの卑劣な詐欺事件」
 というだけで、数十年も経ってから、こんなに話題になることもなかったであろう。
 ただ、商事会社のやっていることは、これほど卑劣なことはなかった。
 詐欺犯罪史上、殺傷事件に発展しなくても、詐欺だけで、かなり印象深い事件だったことに間違いはないだろう。
 そんな詐欺事件と、今の詐欺とは種類が違う。
作品名:連鎖の結末 作家名:森本晃次