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連鎖の結末

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 といえばそうなのだが、確かに最初は、それほど大きな問題でもなかった。
「営業部の男性と、管理部の女性が不倫をしているんだって」
 というウワサが流れたのは、ある日、管理部の主任クラスの人が、うわさになっている二人が、高級ホテルから腕を組んで出てくるのを目撃したのが最初だったのだ。
 完全な偶然であり、すぐに二人はタクシーに乗り込んだことで、実際に腕を組んで歩いていた時間というと、微々たるものだったのだが、その瞬間を目撃できたのは、偶然と言わずに何というかということであった。
 ただ、この二人、実は普段から、会社では、あまり馬が合っていないように見えた。それを考えると、
「会社での態度は、不倫を隠すための、カモフラージュだったのではないか?」
 と考えると、これは、最初からのやらせのようなものであり、やり方としては、あまりいい行動ではないと思われることだろう。
 そんな態度を上司が取っていると思うと、果たして部下はついてくるだろうか?
 確かに、このウワサは、あくまでもウワサの域を出ない。
 見た人も、ちらっと見ただけで、
「本当にそこまで親しい間柄だったのか?」
 と聞かれると、何とも言えないと答えることだろう。
 この場合、逆に普段の会社での態度が裏目に出ていたとも考えられる。
「あの二人、普段はいがみ合っているのに」
 と感じた目撃者としては、余計に、そのイメージの強さから、そこまで親しくなかったものを、
「怪しい」
 と思ったことで、見誤ったとも、言えなくもないだろう。
 人間の思い込みというのは、そういうところがあるもので、その考え方が、どこまで功を奏するかというのは、一歩間違えれば、裏目に出るということだった。
 そのことがあってから、会社では、不倫について、何か不穏な感じを受けるようになり、人によっては、
「会社内で、不倫が横行しているかも知れない」
 という目で、見る人が多くなってきた。
 そのうちに、
「誰と誰が怪しい」
 といって見ていくうちに、出るわ出るわ、いくつも変なウワサがどんどん出てきたのだった。
 そのほとんどは、根も葉もないものであるのは間違いないようだったが、中には芯をついているものもあった。
 これも一種の連鎖反応だといっていいのか、不倫の発覚が多くなってきたのだった。
 見る目が変わってきたというのが、本当のところであるが、発覚という意味でいくと、これも一種の連鎖反応である。
「世の中で、事件や事故というのは、連鎖反応を起こすとよく言われているが、これも同じ連鎖反応だと見てもいいのだろうか?」
 と、鈴村は考えるようになった。
 ただ、不倫というのは、
「倫理上の問題」
 であって、犯罪ではない。
 お互い、利害関係にある人が話し合って、最善の状態に落着すれば、それで一件落着だといっていいのだろうが、人のうわさによるものは、遺恨を残したりする。
 しかし、逆に言えば、
「人のウワサも、七十五日」
 というではないか。
 ものによっては、簡単に世間は忘れてくれるというもので、そういう意味では、
「現金なものだ」
 といえるのではないだろうか?

                 苛めの連鎖

 不倫というのは、連鎖があるのか、一人が見つかると、他でもやっているのが、なぜか発覚するのだった。
 ただ、この場合は、
「発覚が連鎖する」
 ということであって、不倫が連鎖しているわけではない。
 逆にいえば、不倫というものは、今に始まったことではなく、どこでもあるということになるのだろう。
 一つが発覚すると、
「他も怪しい」
 という目で見てしまうからなのか、どうしても、そういう感じになってしまうのではないだろうか。
 もう一ついえば、連鎖という意識から見てしまう場合もあり、
「一匹いるのを発見すれば、10匹はいるだろう?」
 というような話もよく聞くので、たとえは悪いが、結局、
「誰でもやっていて、バレてないだけだ」
 ということになるのではないかと思うのは、過激すぎるのだろうか?
 だが、不倫くらいは、まだかわいいもの。何しろ、今の日本には、不倫を罰する罪はないのだからである。
 戦後すぐくらいまでは、
「姦通罪」
 というものが存在した。
 いわゆる、大日本帝国の時代までである。
 その頃の姦通罪というのは、男女で不公平があった。
「女性が不倫をして、男性が不倫をされた場合だけ、訴えることができる」
 というものであった。
 男性だけが不倫をした場合は、姦通罪にならないというのが、日本における姦通罪だったのだ。
 これは、日本国憲法における、
「法の下の平等」
 というものに違反してるということで、男性が不倫をしても、罰せられるということにするわけではなく、新しい刑法では、スッパリと廃止されたのだ。
 実際にお隣の韓国では、ここ20年くらい前に廃止になったようで、まだ続いている国もあったということであった。
 今世界で姦通罪が適用される国はないという認識であるが、どうであろうか?
 ということになると、不倫をしたとしても、そこは、刑事罰を問うことはできない。
 そうなると、不倫された側とすれば、離婚を視野に考えた場合。
「いかに慰謝料を取るか?」
 ということが問題になってくる。
 不倫された方とすれば、配偶者にも、不倫相手両方に慰謝料を請求することもできる。ただ、それはあくまでも、民事上の離婚問題であり、刑法における、前科という問題にはならないだろう。
 基本的には、裁判になるかも知れないが、起訴されても略式であり、刑事罰のような傍聴人のいる裁判のような大げさなものではない。
 だから、弁護士同士の話し合いであったりするのだろうが、離婚するとも限らない。
 不倫して、もう一度やり直すというのは、結構難しいことなのかも知れない。
 なぜなら、再犯しないとも限らないからだ。
「すまない。俺にはお前しかいないんだ。今後二度としない」
 と言われて、信憑性を感じるだろうか?
「どうせ、不倫相手にも、私の悪口を散々言って、同情を買う形で、不倫を続けていたんでしょう?」
 と言われれば、
「いや。そんなことはない。出来心だったんだ。本当に愛しているのは、お前だけなんだ」
 と言われるに違いないが、そこで許してしまうのは、正直おかしいというものであり、
「出来心? 出来心で、不倫をしちゃったということね?」
 と聞くと、
「ああ、そうなんだ。本当に愛しているのは、お前だけなんだ」
 というだろう。
「じゃあ、これからも、出来心が出れば、不倫をするということね?」
 と言われてしまうと、もうグーの根も出ないことになってしまう。
「口は災いの元」
 というが、まさにその通り、自分の立場が完全に弱いということになると、相手はそこに付け込んでくる。
 一度弱みを見せると、そこからは、どんどん、
「負のスパイラル」
 に落ち込んでいって、その急降下に頭が追いついてこず、防戦一方になってしまう。
 そうなると、言い訳しかできなくなり、相手に愛想を尽かされて終わりということか?
 いや、もう不倫がバレた時点で、すでに終わっているのだ。
作品名:連鎖の結末 作家名:森本晃次