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秘密は墓場まで

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 しかし、電車の場合は、バスのように、
「どこが揺れが激しいか」
 ということは分からない。
 なぜなら、線路の上しか走れないわけで、その線路が極端に盛り上がっているとかでもない限り、そんなことはない。
 電車で、そこまでの揺れがあるのであれば、今度は脱線という危険性が出てくるわけで、そうなると、点検の必要が出てきて、運行を続けるわけにはいかないだろう。
 たまに、あるようだが、脱線してけが人が出るよりもマシである。何しろ、今走っている電車のほとんどが、寿命を迎えていたりして、新型車両に変わりつつあると、鉄道ヲタクの人から聞いたことがあったのだった。
 電車の揺れを心地よく感じながら電車に乗っていると、いつの間にか、車窓からは、都会のビル群が現れてきて、普段見ることのできない風景のわりに、懐かしさがあるようだった。
 きっと、テレビドラマなどでよく見ることからだけではない、
「都会への憧れ」
 のようなものがあるからなのかも知れない。
 まだ、中学生だが、大学か、短大を卒業してから、都会でOLとして働くのが、一応の理想と思っていた。
 さすがに、
「夢です」
 というほと、固まっている意識ではないので、そこまではいえなかったが、制服に憧れるという意識があったのだった。
 キャリアウーマンという言葉は、今では死語なのかも知れないが、イメージするOLには、キャリアウーマンという言葉が一番しっくりくるような気がする。
 そんな都会への憧れがあるからか、都会の風景を見ていても、違和感は感じない。
 つぐみが住んでいるところは、典型的な住宅街で、都心部へのベッドタウンとしては、中心的存在の街であった。
 早くから開けていて、開拓初期だったこともあって、分譲住宅を買う人も結構いた。
 今の時代になると、他にもいろいろ新しいところができてきて、
「何をわざわざ、こんな古いところに住むものか」
 とばかりに、まだ、半数以上の部屋が空いていると聞いている。
 学校があるところは、今度は、学校が密集していて、その中心には、4年制の総合大学があり、そのまわりに、短大や専門学校、中高一貫の私立高校が乱室しているという。いわゆる、
「学生の街」
 だったのだ。
 女子大もあり、一度、友達のお姉さんが通っているということで、友達と一緒に大学生に行ったことがあったが、皆垢抜けしたお姉さんばかりで、田舎者と言われても仕方がないほど、方言がバリバリの自分たちには、完全に別世界のようだった。
 住宅街や、学生の街ばかり見ていると、都心部のビル街であったり、ショッピング街など、想像ができないだろうと思うのは、結構、甘いというものだ。
「都会なんて、人が密集しているばかりで、何も楽しいことなんかないぞ」
 と、父親は言っていたが、
「そうなんだね」
 と、相槌を打ってはいたが、
「本当にそうなのだろうか?」
 という疑問をほぼ同時に感じていたのだった。
 都会というところは、昔であれば、コンクリートジャングルというような、知らない人が入り込めば、まるで樹海に入ったかのように、抜けられない場所で、しかも、何が出るか分からないというような場所だと理解していたので、正直、そんなところに行くだけで怖かったのだが、今回は、一人で赴こうというのだから、どうした心境の変化なのかと自分でも思うのだった。
 電車を降りてから、父親の会社までは、スマホのナビで迷うことはないだろうから、安心であるが、あまりスマホばかりを見ながら歩いていると、危なくてしょうがない。
 田舎でも危ないのに、都会でそんなことをしていれば、いつ人とぶつからないとも限らない。
 特に歩道を歩いていても、自転車が走っていたりすれば、結構、危ないものだ。
 本当は、自転車は、歩道を走ってはいけないのだ。意外と皆知らないだろうが、自転車は、軽車両になるのだ。
 だから、歩道を走るということは、
「バイクで歩道を走る」
 ということと同じになるので、結構罪は重かったりする。
 しかも、人に当たってけがをさせれば、自動車の人身事故と同じ扱いだ。罰金にしても、禁固刑にしても、それなりに重たい、いわゆる、
「走行区分違反」
 という罪になるのだ。
 今は、ウーバーイーツなどの普及で、配達員が自転車に乗ることが多く、絶えず、歩行者との接触などで、問題になっている。歩行者の隙間ギリギリで走るのだから当然だ。
 しかも、やつらは、法律を知らない。人にケガをさせれば、人生は終わりだということをまったく考えていないのだ。
 電車を降りて、父親の会社までは、焼く10分くらいだろうか? 田舎道を歩いて10分というと、結構な距離を歩くことになると思うは、都会のど真ん中で10分歩くとなると、想像よりも距離的には大したことはないようだが、感覚的にはかなりの距離を歩いたような気がする。
 それは田舎道を歩くような感覚で、その理由としては、
「田舎道は、ずっと先まで見えるので、歩いていても、そんなに窮屈な感じはしないが、その分、さっさと歩けてしまうので、感覚よりも、かなり進んでいるようで、脚の疲れがそれを証明している。しかし、都会の道は、歩くたびに、同じ景色しかないとしても、まわりお景色が一気に変わったような気がする。それは建物が多くて、一直線に歩けないからだ。角を曲がるとまったく違った景色が広がっている。そのおかげで、まわりの変化に気を取られている間に、気づかぬうちに、実は結構歩いているというのが、真相なのではないだろうか?」
 と考えている。
 さすがに、一人で来るのが初めてだと、迷いそうな気がしてくる。実際に、スマホがなければ迷ったかも知れない。
 誰かに聞いたとしても、教えてくれただろうか? そもそも、聞いた相手が、父親の会社を知っているはずもない、都会というのは、それだけ広いのではないだろうか。
 そもそも、昔であれば、
「分からなかったら、交番で聞けばいい」
 と言われていたが、今はその交番がどこにあるのかも分からない。
 ひょっとすると、通行人に聞いても分からないのではないだろうか。毎日、通勤でこの駅を使っている人でも、案外、駅と会社の道以外、知らなかったりするものだ。都会というところ、田舎者には、本当にジャングルに思えるだろう。
 交番が減ってきたのは事実のようだ。
 その理由については、正直分からないが、どうせ、経費削減とでもいうのだろう。
 交番の場所を知っているとすれば、駅員であったり、商売を営んでいる人くらいだろうか?
 意外と、人が探せば分かりずらいところにあるのではないかと思うのであった。
 今回は何とか、スマホのナビで、うまく行くことができた。
 10分歩くといっても、幸いなことに、駅前の大きな通りを歩く時間がほとんどなので、迷うこともなかった。父親の会社のビルは結構でかかった。
 つぐみは、そのビルすべてに父親の会社が入っていると思っていた、都会にあまりなじみがなくて、テレビドラマばかり見ていると、
「会社というのは、ビルの入り口に受付があって、カードを使って、ゲートから中に入り、ビル全体が、一つの会社だ」
 というイメージがあったので、最初にビルを見上げた時、
作品名:秘密は墓場まで 作家名:森本晃次