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秘密は墓場まで

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 そもそも、その主人の大学での専門は、心理学であり、しかも、精神科の第一人者と呼ばれていた。
 しかし、その発想は紙一重であり、彼自身が、
「狂気の沙汰だ」
 と言われるほどであった。
 それを皆は、最初、
「神経科の研究をするようになったから、あんな風になっちゃったんだろうな? 気の毒に」
 といっていたのだが、そのうちに見方が変わってきて、
「元々、あんな性格だったことから、おかしな研究をしても、何も感じなくなったのかも知れないな」
 と言われるようになった。
 どっちもどっちなのだろうが、それを考えると、
「他の神経科の先生というのは、どういうのなのだろう?」
 と思うようになった。
 しかし、自分が知っている神経科の先生には、そんな怪しい人はおらず、中には女医さんもいるというくらいなので、この小説の内容が、怪奇的な話にするために、大げさに書かれているのではないかとも思えてきたのだった。
 それを考えると、その作家の小説が素晴らしいのか、それとも、作家自身が、才能に溢れているのか、そのどちらもであろう。
 かなり昔の小説であるが、時代を反映しているのは間違いなく、今の令和の世の中でやれば、明らかに、大きな社会問題である。
 その小説は、時代設定が、昭和14年、いわゆる、シナ事変の最中ということになるであろうか。
 社会は、列強から経済制裁として、石油や鉄くずの輸出禁止をされており。敵である、中国の総統である、蒋介石を支援するという意味での、
「援蒋ルート」
 と称する道を、インドシナ(今のベトナム)あたりにあるものを、封鎖に走っていた時代である。
 つまり、国家は、
「総動員令」
 などが出されて、物資も不足しがち、しかも、物資の遅延も多く、
「ぜいたくは敵だ」
 と言われた時代である。
 しかも、アメリカ大統領が、日本に参戦するための口実欲しさに、日本に先制攻撃をさせるというやり方で、真珠湾という、アメリカに言わせると、
「騙し打ち」
 ということになってしまったのだ。
 もちろん、騙し打ちなどというのは、でっち上げで、そもそも、ハルノートを提出した時点で、あれが、アメリカからの最後通牒であり、国際法的にいえば、
「宣戦布告と同等」
 ということになるのだ。
 だから、真珠湾に対しては、騙し打ちもくそもない。
「戦争状態に入っているのに、備えをしていなかったアメリカが油断していただけであった」
 しかも、そもそも最後通牒を突き付けてきたのはアメリカからである。自分で宣戦布告のような真似をしておいて、それで、騙し打ちもくそもないものだ。
 騙し打ちだというのは、あくまでも、アメリカ国民に、
「大戦に参加することは、アメリカが騙し討ちをされたということであり、その恨みを晴らすための戦争」
 ということにすれば、国民も一気に参戦ムードが高まるという、あくまでも、
「アメリカの都合」
 による、言いがかりでしかないということであった。
 元々、日本は、中国と戦争をする気はなかったのだ。
 盧溝橋事件においては、本当は、どちらから仕掛けたという事件ではなかったのだ。
 夜間演習だって、ちゃんと、中国政府に断ってのことであったので、襲撃される理由はない。
 ただ、疑われたのは、日本には、
「前科」
 があったからだ。
 それは、いわゆる、
「柳条湖事件」
 と呼ばれる、
「関東軍による自作自演」
 において、満州を電光石火で占領してしまったという事件があったからだ。
 だから、世界も、盧溝橋事件が、本当に日本における挑発ではなかったのかという疑惑を拭い去ることはできなかったのだろう。
 既成事実をでっち上げて。事後承諾にて、認めさせるというやり方は、日本政府と関東軍の常套手段だったからである。
 日本という国において、どこまでが許されていたことなのか、昔の話なので難しいが、少なくとも、陸軍内部において、朝鮮軍、関東軍は、孤立した存在であり、自由に動ける存在だったといえるだろう。
 しかし、当時の陸海軍というのは、その統帥は、天皇にだけ認められたものであり、天皇の命令無視というのは、
「憲法違反だ」
 ということになるのだ。
 だから、
「相手から攻撃され、仕方がなく防戦した」
 ということであれば、それは、不慮の事故と同じで、憲法違反にはならない。
 ただ、それにしては、電光石火が鮮やかすぎるのだ。
 攻撃の報告が関東軍本部に来る前に、奉天は、鎮圧されていたようだった。
 最初から予期していなければできることではない。
 さらに、この事件の発端である。
「満州鉄道爆破」
 というのは、その後で特急列車が走り去ることができるほどの、大したことではなかったのだった。
 それは、満州事変から数年前に起こった。いわゆる、
「張作霖爆殺事件」
 ほどの爆発ではなかったということである。
 この時の目的は、文字通り、
「軍閥である張作霖を爆殺する」
 ということが目的であったのに対し。満州事変においては、
「爆発が、中国軍によるおのだ」
 ということが分かればいいだけなので、規模はそれほどではなかったのだろう。
 それだけ見ただけで、日本軍の自作自演というのは分かるというものだが、実際にはこれは侵略ではなく、
「中国からの挑発」
 によって、居留民の安全が脅かされることと、関東軍による。満州での権益が脅かされることへの報復であった。
 そういう意味では、シナ事変も同じである。盧溝橋事件では一度和平交渉は出来上がっているのに、廊坊事件や、公安門事件、さらには、もっとひどい日本人への虐殺事件で有名な通州事件と呼ばれるものがきっかけとなり、シナ事変が拡大したのだ。
 これは、完全な中国軍からの挑発であった。
 この件に関しては、列強も日本には同情的であったが、途中から、上海や南京での戦闘あたりから、日本軍のやりすぎが指摘されてか、中国側に味方する見解が進んできたのであった。
 そんな状態になってくると、日本は孤立してくる。
 そもそも国際連盟からも脱退しているので、日本は孤立していたのだ。輸入制限なども結構あり、日本ほど資源の少ない国はないというのに、このままでは、亡国になってしまうことは必然だった。
 資源があるかに思えた満州も、劣化した資源しか存在せず、結果として、列強に頭を下げるか、自分から、資源地帯を占領するかしかなかったのだ。
 結果日本は、後者を選んだ。
 それが、
「侵略と言われたゆえん」
 であるが、これが本当に侵略なのだろうか?
 そもそも、資源のない国が、他に活路を見出すのに何が悪いというのか、しかも、攻略に向かった土地は、元々原住民がいたにも関わらず、大航海時代に、自分たちの祖先が、
「侵略行為」
 を行って、占領することで、植民地とした土地ではないか。
 それを日本が資源を求めて、仕方なしにまるで、あぶり出される形で攻略に行って何が悪いというのか。
 しかも、日本の戦争目的は、
「大東亜共栄圏」
 の確立である。
 だから、閣議で、
「中国との戦争を含めて、大東亜戦争という名称にする」
作品名:秘密は墓場まで 作家名:森本晃次