小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

秘密は墓場まで

INDEX|4ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 

 朝日が顔を出して明るくなるまでには、あっという間であるにも関わらず、昼が夜になる間には、昼下がりがあって、夕方があり、凪の時間帯があり、そして日が沈んでから夜が来るのである。

                 精神異常の裏側

 凪という時間帯は、夕方から夜にかけての、
「風の吹かない時間帯」
 ということになるのだろう。
 実際に風が吹かない時間帯とは別の言い方をするが、ほぼおなじ同じ時間なのではないかと思うのが、いわゆる、
「逢魔が時」
 という、
「魔物と出会う時間帯と呼ばれる時間帯」
 であり、それは、もっとも、交通事故が頻発する時間だと言われていた。
 これには理屈がある」
 日が沈みかける時間。つまり、もっとも太陽が水平線に近い時間帯などは、半分くらいところがあったありして、光が当たるところと当たらないところがハッキリとしなかったりする。
 だから、光の屈折の具合と、当たる部分と当たらない部分との微妙な見分け方で、光の屈折の関係からか、
「モノクロに見える」
 ということらしい。
 自分たちにはその意識はないのだが、実際に事故が多いということなので、その通りなのだということ」
 だという証明であろう。
 もちろん、
「魔物の仕業」
 と言われるよりも、よほど説得力のあるものなので、
「言われてみれば、その通りだ」
 ということになるのだろう。
 今までカラーに見えていたものが急にモノクロに見えるのだから、それは事故が多くなっても当然のことであろう。しかも、モノクロに見えているという石井がないのだから、当然のことである。
 きっと、目の前に太陽があれば、逆光になった時、光が太陽光に吸収されるとでもいうような現象なのだろう。
 それを思うと、
「日の光というのは、神秘といってもいいのではないだろうか?」
 ということであった。
 光が当たっているので、逆光であっても、まさかモノクロに見えているなど、思いもしないのだろう。
 だが、考えてみれば、逆光であれば、光の強さから、暗く見えるのは当然のことであり、写真で撮っても、暗くて見えないことくらいは、想像するまでもないはずだ。
 分かっているはずのことが、よく分かっていないというのは、どういうことなのだろうか?
 違うことを考えていて、発想が思いつかないようになるからではないだろうか。
 そんなことをいろいろ考えていると、以前、ミステリードラマで見た時の、
「少年を、異常性癖な人間に育て上げるために、異常な教育」
 という場面があった。
 顔は虫も殺せないような美少年でありながら、心は悪魔であるというような、
「アポロンの顔にバチルスの神経を持ち合わせたような男」
 と称されたその少年は、稀代の殺人鬼に仕立てあげられるという話であった。
 しかも、美少年を作るために、父親も母親も、どこから見つけてくるのか分からないが、絶世の美少年と、美少女を攫ってくるわけだが、その二人には共通の性格を持ち合わせるようにした。それが、
「神経が少し足りない」
 と呼ばれた人間である。
 いわゆる精神疾患なのだが、そんな状態に陥るほど、美少年と美少女というのは、
「天に二物を与えられていない」
 ということになるのだろう。
 そんな美少年と美少女が、座敷牢に監禁され、そこで、食事だけ与えられるオスとメスであれば、その後にどういうことが起こるのかというのは、火を見るよりも明らかであろう。
 二人を監禁させておいて、二人の間で奇妙な夫婦生活を送らせる。それによって、やがて、玉のような男の子が生まれた。
 しかも、その子が生まれると、二人の男女は、またしても、主人によって、どこかに連れていかれることになったのだ。
 つまり、この主人がほしかったのは、子供であって、二人の男女は、
「種馬でしかないのだ」
 ということである。
 子供は、主人の異常な教育で育つことになる。しかも、その場所は、自分が生まれ、親が過ごした座敷牢にである。幼児の頃はさすがにそうもいかないが、普通の子供が小学生になるくらいになると、座敷牢に放り込まれたのだった。
 しかも、親の時は二人だったが、子供では一人である。さぞや寂しいのではないかと思うが、逆に最初からそれだと、何が寂しいのかということすら、分からなくなっているに違いない。
 親代わりの主人は、自分の部屋でぬくぬくとしているのに、何ということなのだろう? それこそ、極悪人のすることである。
 教育というと、虫を取ってきて、刃物で、その首をちょん切って遊ぶことを覚え、さらには、まるで万華鏡のような明るさと煌びやかさのある小部屋を作り、そこに閉じ込めて、一定の時間、放置するのだ。
 最初から感情が死滅しているような少年に、さらにそんなことをするのだから、それこそ恐ろしいというものである。
 そんな状況が、主人と、召使いしか知らずに、繰り広げられていた。
 元々、親は、伯爵か子爵の出なので、当時はそれだけで、一生遊んで暮らせるという、道楽息子ができるのだが、この主人は、さらに上を言っていた。
 何と言っても、リアルな殺人鬼を生み出そうというのだから、主人自身も、人間の感情を逸脱しているといってもいいだろう。
 その主人というのは、以前は学者で、しかも、顔がただれていたことで、最初は有望な学者ということで、恩師から目を掛けられていたが、そのおかげで出世もできそうで、家族ぐるみの付き合いをさせてもらったが、何と、その時に主人は、恩師の奥さんに横恋慕してしまったのだ。
 それによって、奥さんから恨みを買った。
 その時に、
「あなたは、私の顔が醜いから、そんなことをいうんだ」
 というと、
「いいえ、あなたの心が醜いからです」
 と言われて、
「ウソだ! 私の顔が絶世の美少年であれば、そんなことは考えない」
 というと、
「ウソじゃないわ。あなたのその腐った考え方についてくるような女性は絶対にいないわよ」
 と言われた。
 それは、自覚もしていた。
「どうせ、何かを企まないと、女から好かれることなんかありえないんだ」
 という思いから、女から罵声を浴びせられるのは、想定内だった。
 しかし、それでも面と向かって言われると、怒りは頂点に達する。
「この女、ただでは済まさない」
 と考えているところへ、恩師が帰ってくる。
 当然どうなるかなど分かり切ったことであり、主人は、学会からも大学からも終われ、失脚するという形で、田舎に引きこもってしまった。
「あなたには、それ相応のバツが与えられるだろう」
 と言い残して男は立ち去った。
 女の方も、
「どうせ口だけでしょうよ」
 と、ばかりに、完全に、主人のことをバカにしていた。
 主人が、このような、
「悪魔のような少年の培養」
 を始めたのは、他でもない。
 この時の復讐のために、女に美少年をあてがって、あの時の自分の言葉を証明し、そして、復讐を遂げるという一念からであった。
 そんな復讐に燃える男がやった教育の中で、
「万華鏡のような部屋に放り込む」
 というのがあった。
 これが、少年にとって、一番その気を狂わせる効果があるのだということを、主人はよく分かっていたのだ。
作品名:秘密は墓場まで 作家名:森本晃次