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秘密は墓場まで

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 としての申請が一番ではないかというのが、弁護士の話だった。
 これは、旧民法でいうところ(1999年改正)の準禁治産者に当たるもので、
「心神耗弱者であったり、浪費癖がある人が法律行為を行った場合など、心神耗弱者を守るというもの」
 であり、これは民法の3条の2にある、
「意思能力を有しない法律行為は、無効である」
 という原則に基づいたものだ。
 さらに、準禁治産者の場合と同じで、裁判所が一定の手続きを経て申請された者の、法律行為を制限し、さらに、後見人を立てることで、その人の保佐がなければ、契約などの法律行為が結べないようにすることである。
 ただ、それも、どこまで許されるものなのかが難しいところで、極端な話、安いものをむやみやたらに買いあさった場合にかかるものにまで、目が行くわけでもないだろう。
 ただ、その場合は、
「心神耗弱者を理由として」
 その買い物を取り消すこともできるだろうが、人権という憲法問題が絡んでいるだけに、非常に微妙な要素を孕んでいるといってもいいだろう。
 そうなった場合、とにかく大きな負担は家族に行く。
 お金が払える場合は、破産してでも支払いをする必要があるだろうということで、間違いなく、家庭は崩壊してしまう。
 さらに、支払い義務がどこに生じるかということで、家庭が崩壊した後でも、そのしろこは残るに違いない。
 そうなると、もう、法律による助けも望めなくなる場合もあるだろう。
 そんな時、母親には、娘の浪費癖のひどさ、そして、それを止める力や、これから向かうであろう家庭の崩壊。下手をすれば、自分の人生がここで終わってしまうという恐怖から、母親自体が、心神喪失してしまわないとも限らないところまで来ていた。
 母親の明美も、さすがに放ってはおけないということで、娘をいさめながらも、使ったお金を少しでも返すことができるように、今は夜の仕事をしていた。
 そう、それこそ、デリヘルで、出張サービスを行っていたのだ。
 年齢的には、すでに熟女といってもいいのだろうが、とても年齢ほどには見えないということで、熟女が好きな人以外からも、結構指名があった。
 対象年齢が広いことから、結構人気があり、リピーターも多かったのだ。
「お姉さんの癒しを感じるんだよな」
 といって、20代の客も結構多かったりする。
 確かに見た目は若々しく、30代前半に見えることから、20代の男性からは、
「癒しのお姉さん」
 として慕われているようだった。
 20代の男性というと、会社では第一線の人たちばかりで、体力的には自信があるのだろうが、どうも草食系が多く、同世代の女の子たちを受け付けないという連中で、
「年上のお姉さんから、可愛がってもらいたい」
 という思いを持っていて、要するに、性行為目的というよりも、一時の癒しを求めているのだ。
 性行為を貪欲に求める男性は、一人では飽き足らず、毎回相手を変える人が多いのだろうが、癒しを求めている人は、一人が気に入れば、ずっとその人を指名し続けるのだ。
 毎回自分のことを分かってもらう時間がもったいないというのか、分かってもらっている人であれば、指名時間分、ずっとデートができるというものだ。
 つまり、その男性からしてみれば、
「指名時間分、デートをしている」
 という感覚だ。
 もちろん、することはするのだが、別に性行為が目的ではない。場合によっては、賢者モードになるのを嫌って、
「今日は、いいや」
 という人も実際にはいるようだった。
 いくら、草食系男子とはいえ、本当にそんな男の子がいるなど、熟女になった明美には分かるはずもなく、正直ビックリしていたのだ。

                 殺害計画

 風俗の仕事をしていることは、他の誰にも言わなかった。娘にも言わないつもりだったのだが、本当は、
「あなたが借金を作るから、私がこんなことまでしなければいけないのよ」
 といいたいのもやまやまだったのだが、一つは恥ずかしいという思いがあったのも事実である。
 もう一つの理由は、自分が風俗の仕事をしていることで、娘を叱ることができなくなるということが大きな理由でもあった。
 確かに事実は、娘の借金のためなのだが、そんな事情を知らない娘が、
「お母さんだって、そんな仕事をしているのに、私に説教なんかよくできるわね」
 と言われてしまうと、自分の言葉に説得力がなくなることが怖かった。
 実際に、もう娘のことを信頼できなくなってしまっている。本当なら、ちゃんと説教し、なるべく、法律による縛りなどないに越したことはないのだ。もし、法律の保護を受けることになると、今の生活も、裁判所に管理されてしまうことになるからだ。それは、何とか避けたかったのだ。
 そんな中で、この商売を続けるには、店舗型よりも、派遣型のデリヘルがいいと思ったのには、一つの理由があったからで、それは、
「真夜中にでもできる」
 ということであった。
 店舗型は、深夜の時間帯は、営業をしてはいけないと、風営法で定められている。しかし、デリヘル系は、24時間営業が可能だった。
 夕方軽くパートして、夜デリヘルということで、今のところ、何とか生活がしていけるのであった。
 ただ、デリヘルで不安がないわけではなかった。
 というか、これがデリヘルの一番の問題であり、逆に店舗型の安心なところでもあるのだが、問題なのは、
「派遣された先では、店のスタッフの力が及ばない」
 ということであった。
 店舗型であれば、女の子の立場はある程度、保証されている。
 何といっても、自分のところの店の内部だから、いくらでも方法はあるというものだ。
 部屋の内部のベッドのそばには、非常ボタンが設置されている店が多く、客が女の子と面会する前に受けた注意事項に違反しようものなら、女の子が非常ボタンを押すことができる仕掛けになっていて、ボタンを押されると、スタッフが飛んできて、客に文句をいい、そのまま出禁にされることになるだろう。
 もちろん、この情報は、この一帯のお店にも共有されることになり、他の店に行こうとしても、
「あなたは、○○というお店で、出禁になってますね?」
 と言われて、こちらも出禁ということになるだろう。
 ただ、これも、携帯の番号が変わっていれば、分からないことである。なるほど、ネット予約などで申し込んできた時、確認の電話が店から入るのだが、それは、客が冷やかしなどではなく、ちゃんとした予約であることの確認だけでなく、電話番号による出禁の確認という意味もあるのかも知れない。
 出禁にされるというのは、よほどのことだろうから、お店間での情報共有も結構重要なのかも知れない。
 もう一つ、店舗型であれば、有利な点があった、それは、
「身バレを防ぐ」
 ということであった。
 店舗型であれば、前述のように、法律に触れなければ、自分の店なので、
「女の子を守る」
 という意味で、いろいろな設備投資をすることができる。
 例えば、待合室をマジックミラー形式にするとか、防犯カメラを複数台設置するなどして、予約した客を、待合室で待たせている間。案内予定の女の子に、相手を確認させるということができるのだ。
作品名:秘密は墓場まで 作家名:森本晃次