摂関主義宗教団体
「血沸き、肉躍る」
とでもいうような感覚で、血液が身体を流れるというのが、分かる感じだった。
その感覚を、心地よいと言えばいいのか、心地よいと言えばよいのか、実際には分かるわけはないのだが、
「母親の胎内にいるような感覚だ」
というのと似ているのかも知れない。
今まで、彼女がいたことのなかった梶原だったが、本当はそんな教祖になれるような男ではなかった。
どちらかというと、坊さんであれば、
「生臭坊主」
と言われても仕方がないかも知れない。
彼女がいなかったせいもあり、
「このままだったら、童貞のままだ」
ということで、誰かに頼ることなく、一人で、風俗に行ったものだった。
さすがに初めてだったので、風俗街に入るのも勇気がいった。
以前は、呼び込みの人がたくさんいるので、気を付けないといけないという話を聞いていたのだったが、今はそんなに呼び込みの人がいるわけでもないので、実際には、そこまで緊張することはなかった。
しかし、それだけに、どこに行けばいいのか、まったく分からず、途中にある、
「無料案内所」
というところに顔を出すと、そこには、おじさん? おじいさんと言っておいいような気のよさそうな人がいて、いろいろ聞いてくれたのがありがたかった。
そもそも、一人で初めてきた風俗街、呼び込みに引っかからないのはよかったが、下調べもしていなかったことを後悔したが、逆に、何も知らないということを告げて、自分が行きたい店や好みの女の子などの情報を聞きながら、パネルを見るのも、結構心地よかった。
店に入って、そこで女の子を選ぶのも、楽しいのだろうということを学んだ。
慣れてくると、本当に好みの女の子が、当日なら開いていなかったりするのが嫌なので、ネットや電話での予約をするのが一番いいのだろう。
その日は、おじさんと話をしながら、店を決めるのが、結構楽しかった。
もちろん、自分が初めてであることも、正直に告げた。
「じゃあ、初めてのお兄さんだったら、このお店なんかいいんじゃないかな?」
といってくれた店で、予算的にもちょうどよかったので、パネルを見ながら、
「この子が開いていればいいのにな」
と思う子を前もって告げておけば、おじさんが、お店に連絡を入れてくれた。
「お客さん、運がいいですね。この子結構人気なので、今から行けるというのも、すごいことですよ。キャンセルでもあったのかも知れないね」
といってくれた。
「そうですか。それはよかった」
ということで、さっそくその店の、その女の子に決めたのだが、ビックリしたのは、そのお店から、スタッフの人が、わざわざここまでお迎えに来てくれたことだった。
これなら、別に一人でウロウロしているわけではないので、変な目で見られることもないだろう。
見られたとしても、最初から店が決まっているのだから、別に問題なわけはない。案内所から店までは、数十メートルくらいのものだったが、店が分かっていないだけに、結構長い距離を歩いたような気がした。
その店は、2階に上がっていくのだが、階段の壁には女の子のパネルが飾ってある。まるで、女の子から歓迎されているような心地よさだった。
二階に上がると受付があって、そこに、大きなモニターがあるのだが、そこには女の子の写真があった。どうやら、お店のホームページを映しているようだが、そのパネルを見ながら女の子を選ぶシステムになっているようだ。
人から聞いた話によれば、ほとんどの店はまだ、カードのようなパネルを机の上に並べて、
「この子とこの子が、行けますよ」
というやり方をしている中で、モニターを使うというのは、なかなかなものではないだろうか?
お店の雰囲気も悪くなく、まずは、女の子が決まっているので、時間を決めることになった。
「40分、60分、90分、120分とあるけど、どれがいいかな?」
と聞かれて、
「あの、僕初めてなので、時間というのもよく分からなくて」
というと、
「そうなんだね? じゃあ、60分くらいだったら、どうかな? お値段はリーズナブルだし、初めての人にはちょうどいいかも知れない。予算的にはいくらくらいなんだい?」
と聞かれて、
「25000円くらいかな?」
というと、
「じゃあ、割引をつけると、60分なら、18000でいけるけど、それだったら、大丈夫だろう?」
と店の人に言われて、
「じゃあ、それでお願いします」
ということになった。
「じゃあ、待合室でお待ちください」
と言われて、待合室にいくと、どうやら、電子タバコだけはいいようになっているようで、基本的に普通のタバコは吸ってはいけないことになっていた。
喫煙しない梶原にとってはありがたいが、数年前に受動喫煙禁止の法律が施行されてからだいぶ経つのに、まだ電子タバコとはいえ、吸ってもいいところがあるというのは、それだけ、タバコをやめるのが難しいほど、常習性の激しいものだということになるのだろう。
待合室には、10人くらいが座れる席があったが、その日は、平日の昼間だったということもあって、待っている客は2人だけだった。
果たしてこれが多いのか少ないのか分からなかったが、二人とも、自分でスマホをいじりながら適当に待っていたのだ。
「今はスマホがあるから、待ち時間が結構あっても、時間潰しになるわな」
と思った。
昔であれば、それこそ、マンガでも読んでいないと間が持たないくらいで、マンガも置いてはいるが、きれいなもので、見る人がいるのだろうかと思うほどだった。
「番号札4番のお客様」
と、扉を開けて、スタッフが入ってきた。
自分の前から待っていたお客さんで、返事をすることもなく、黙って立ち上がると、受付の方に出ていった。
「受付で何をするのだろう?」
と思っていたが、最期は自分一人になると、いよいよ間が持たない気分になってきた。
一人の時間が、さっきの人が呼ばれるよりもかなり待たされた気がしたのは、それだけ緊張している証拠だろうか? 実際には、初めてだから緊張しているのだというわけではなく、この高揚とした気持ちは、何度来ても変わらないので、ただの緊張ではないと思うのだった。
そしていよいよ、
「番号札、5番のお客様」
ということで自分が呼ばれた。
考えてみれば、自分しかいないので、いちいちいう必要などないだろうに、思わず番号を言われると、
「はい」
と答えてしまった。
さっきのにいちゃんのように、不愛想で何も言わないのも、見ていて気分が悪いが、軽い返事をする自分も、何かバカにされているのか、自分がバカにしているのか、そんな中途半端な気分になるのだった。
スタッフに連れられるままに、
「女の子が待っていますので、その前に、確認事項だけをさせてください」
と言われ、受付前に貼られている、禁止事項の紙を見ながらの確認が行われた。
いわゆる、女の子の嫌がる行為や、強要などのモラルに反することなどが描かれた紙である、
その確認が終わると、いよいよ女の子との対面。