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症候群の女たち

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 それは、
「いつも誰かを尊敬していて、相手を立てることができるからだ」
 ということであった。
 ゆいかの方でも、人を尊敬することはあっても、相手を立てるようなことはできなかった。それができるさくらが、尊敬に値するのは当たり前だと思ったのだ。
 ただ、そんなゆいかを見て、まわりが感じるのは、
「強い者に媚びて、弱いものを食い物にしている」
 という雰囲気に見えるからだった。
 いわゆる、
「自然界の摂理」
 と呼ばれる、食物連鎖のようではないか。
 自然界の食物連鎖には、感情は入ってこない。
「強い者が生き残り、弱い者は食われる」
 という、
「弱肉強食」
 の世界である。
 特にゆいかは、歴史が好きなので、そのあたりの摂理は分かっているつもりだった。
「歴史というのは、勝者が作るものだ」
 という大前提があるが、
「弱者というわき役がいてこその歴史の輝きである」
 といえるのではないだろうか。
 だが、最近の歴史認識としては、
「弱者に脚光を浴びさせることで、違った歴史が見えてくる」
 という、パラレルワールドが現実味を帯びているといってもいいだろう。
「判官びいき」
 という言葉があるくらいなので、昔から、弱者をすべて無視してきたわけではなかっただろう。
 今でも、戦国武将の、
「負け組」
 と言われても仕方のないような人に脚光が浴びたりしている。
 真田信繁(幸村)などもその一人で、
 基本的には、活躍の場としては、大坂冬の陣での、
「真田丸」
 の活躍と、夏の陣での、家康を自害寸前まで追いつめたことくらいであろうか?
 後は、父親の真田昌幸の影に隠れていて、人生のほとんどが、人質と、流人としての人生しかなかったのだ。
 しかし、晩年に脚光を浴びたことで、今では、
「戦国一のつわもの」
 と、言われるまでになっているではないか。
 さらに、たった一つの戦で名前を残しただけで、有名になった人だって中にはいる。決して教科書に載ってくるような人物ではないが、人の心に残り続ける人というのは、結構いるものだ。
 特に、最近までは、
「悪玉」
 と言われていた人たちが、近年の歴史の調査、発掘などによって、
「実は、悪者ではなかったのではないか?」
 ということで、汚名挽回が言われている人も結構いたりする。
 そのいい例としては、
「蘇我入鹿」
「平清盛」
「明智光秀」
「田沼意次」
 などがそうではないだろうか?
 最後の田沼意次の場合は、現代と言われるその時代の経済がどうであるかによって、味方が二転三転することになるのだろうが、それ以外の人は、歴史の時代背景から考えても、決して言われているような悪玉ではないという説が最近は有力であったりする。
 そんな歴史が、この世には存在していて、
「今まで、どうして悪役だと言われてきたのか?」
 というと、
「その時代の派遣と握る者として、彼らが悪役になることで、その時代の、いや、権力者に都合のいい秩序を作ることができる」
 という、一つの生贄のような形になっているといってもいいだろう。
 そう、だからこそ、
「歴史は勝者によって作られる」
 というのだ。
 2回の世界大戦がそれを証明しているではないか。
 第一次世界大戦というのが起こったのは、ヨーロッパが、それぞれ民族問題などを抱えていて、今にも戦争になりかねない状態にあったことで、隣国と同盟を結ぶことで、
「同盟国の一国が、戦争を始めれば、他の同盟国は、その国の側に立って、相手国に宣戦布告をする」
 という取り決めがあったことで、セルビアがハンガリー・オーストリア帝国に宣戦布告したことで、ロシア、ドイツ、オスマントルコ帝国、フランス、イギリスを巻き込んでの世界大戦に発達した。最終的にはドイツを中心とした枢軸国が敗北するわけだが、そこで決められたベルサイユ条約は、ドイツの滅亡に近いような賠償問題だったことで、結果、ドイツを軍事大国に押し上げ、時代の流れとしての、世界恐慌によるブロック経済が、さらにドイツ、イタリアを追い詰めることで、ファシズムが台頭してきた。
 さらに、民主主義の限界を唱えた社会主義国の成立となり、これらが、またしても第二次世界大戦を引き起こしたのだろう。
 時代として、世界恐慌というものが発生し、ブロック経済で先進国だけが生き残ろうとしたことも、それ以外の国に恨みを買っての、世界不安たったことは確かである。
 元々はどちらの戦争も、ちょっとした偶発的な事件であったり、第二次大戦のときは、ヒトラーがポーランドに、
「かつての領地であった軍港を返せ」
 と言って、断られたという事実が、引き金となって、ポーランドに侵攻したのである。
 ポーランドは、ドイツが攻めてきた時を考えて、イギリス、フランスと同盟を結んでいたが、
「いきなりなので、兵を出すことができない」
 ということで、ポーランドは見捨てられた。
 まるで、現在の、U国に対しての、世界が、
「侵攻」
 と呼んでいることと同じではないか?(読者は侵攻とは思っていないが)
 しかも、第二次大戦を終えても、まだ勝者である国はこりていないのか、ニュルンベルクや東京で行われた、国際軍事裁判で、
「勝者による裁き」
 を行った。
 しかも、国際法としては許されない、人道についての罪などという、いわゆる事後法を適用するという、暴挙を行ったではないか?
 そのせいで、死ななくてもよかった人間が処刑されたりした。
 確かに、戦争なのだから、平時では考えられない罪を犯した人を裁くというのは、ありえないことではないが、連合国で犯罪人がいないということはどういうことであろう。
 日本に対しての犯罪というだけで、ちょっと思い浮かべただけで、何人いるというのか?
「フランクリン・ルーズベルト」(戦争中に死去)
「ハリー・トルーマン」
「カーチス・ルメイ」
「ロバート・オッペンハイマー」
 少なくとも、これだけの人間は、起訴されて不思議はないのではないか
 特に、後者二人は、人道に反する罪という事後法で裁かれるべきではないのだろうか?
 いや、日本においても、人道に対する罪があるとすれば、
「731部隊」
 関係者が裁かれていないというのは、どういうことであろうか? アメリカとの密約があったというのが定説になっているが、果たして本当なのだろうか?
 そもそも、大陸で戦争をする際に、伝染病や、脚気などの死の病にかからないように研究する部隊だったものが、満州国という独立国にして、日本の傀儡国家という隠れ蓑に隠れて、行われていた、秘密の研究。毒ガスや、生物兵器などの開発が行われていたという。
 現地中国人やロシアの捕虜、現地の犯罪人などが、計画的に実験台となって殺されたという。
 しかも最後には、敗戦が近づいたことで、陸軍本部から、
「すべての証拠を破棄せよ」
 という命令の元、実験の標本や書類関係一式、さらに、相当数いたはずの捕虜の始末。
 関東軍だけで、実験台の殺害などできるはずもないので、実験台になるはずだった人間に穴を掘らせて、そこで殺しておいて、捕虜に穴を埋めさせる。さらには、捕虜同士殺させるという一石二鳥のやり方をしたりした。
作品名:症候群の女たち 作家名:森本晃次