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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 後編

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「つらくて、どうしようもないときだけ、電話かけていい…?」

あなたのことを困らせたり、甘えたり、これ以上を望んだりしない。声を聞くだけでいい。だからお願い。

紫暮はポケットからメモの切れ端を出して、恵麻に手渡した。

「はい」
「これって…携帯の番号?」
「そう」

恵麻は笑った。持ってないって言ったくせに。嘘つき、と。

「先生、ありがとう…」

お守りの様に、恵麻はそれを胸に抱いた。これまでもらった紫暮の言葉と一緒に。

母の車が車道の向かいに停まったのが見える。もう行かなくては。名残惜しいけれど、今の自分には彼らと一緒に過ごす資格はない。もう少しましな自分になれたそのときに、再び笑って会えるように、今は涙をこらえて空を見上げた。

夕暮れが迫る西の山際。オレンジとピンク、そして淡い紫が美しいグラデーションを作っている。雲の隙間からきらきらと光が漏れていて眩しかった。なんて美しいのだろう。

「先生が生まれたときの空だね…」
「…うん」
「きれい…」

この先はもう苦しいことばかりだと思っていたけれど、この光景をみて美しいと思える感情を失わないように生きていきたい。どんなときも、関わってくれた人たちの優しさを、美捺への気持ちを、思い出せるように。


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