紫に暮れる空 探偵奇談25 前編
古文の田神が、その後恨みから道真が怨霊になり、平安京の内裏に雷を落としたという逸話と共に紹介したことを瑞は覚えている。道真は学問の神様と敬われる一方で、日本三大怨霊の一人にも数えられているのだという。力を持った怨霊と言うのは、祀ることで強力な守り神になる。日本には、そういう元怨霊という神さまが結構いる。菅原道真を祀る北野天満宮は、梅の名所としても有名だった。
「…これ、かわいそうな歌なんだね」
「そうだな。道真は忠臣で天皇にも重用された人物だ。無実の罪で流刑になったというから、悔しかっただろうな。はい合格」
プリントを返された彼女は、それを受け取り先ほどの様に俯き加減に席に戻った。郁のほうを見ると、彼女は「よかったね」と小さな声で笑いかけたのが見えた。この状況の中で、郁が様々な感情を抱えながらも前向きに関わろうとしている姿が見て取れた。それはきっと、紫暮も同じなのだろう。
作品名:紫に暮れる空 探偵奇談25 前編 作家名:ひなた眞白