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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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「ロッカーは後ろの開いてる場所を使っていいと担任の川越先生が。教科書も前の学校とは違うから、揃うまでは隣のやつに見せてもらってくれ。なにかわからないことは?」
「大丈夫です」

紫暮の言葉に、恵麻は静かに答えた。

「よし、じゃあ場所作るから全員机動かして」

紫暮の指示に、クラスメイト達はてきぱきと机を動かす。後ろの席のスペースが開いた。

(うわー隣だ!やったあ)

学級委員長がニコニコしながら恵麻の机と椅子を郁の席の隣に置いた。恵麻はありがとう、とだけ言うと、そこに腰かけた。

「あの、あたし一之瀬郁。よろしくね。教科書、一緒に見よっか」
「あ、うん。ありがと」

机をくっつけて、教科書を二つの机の真ん中に置いて開いた。香水の匂いが郁にも届く。いい匂い、とうっとりしそうになって、慌てて黒板に向き直る。

(なんか…見た目に反して静かな子だな)

恵麻は肘をついて、窓の外を見ている。雨がシトシト降り始めて、見下ろす町が霧がかったように白い。どちらかといえば、クラスの中でも中心にいるタイプの子といった印象を受けたのだが。やはり転校初日で緊張しているのだろうか。

「松前、起きなさい」

紫暮がウトウト船をこいでいた男子生徒に低い声で呼びかけた。

「俺の授業がつまらんのか剣道部の朝練がきついのか、どっちか言って」
「ヒェッ…先生の授業がつまらんことなんて絶対ないっす!!大日本帝国憲法大好きっす!」

朝練後の一限目の眠さは郁にも痛いほどわかる。ものすごい疲労、ではなく、心地よい程度の疲労、だから困るのだ。そこへきて明治の法令制度の話は少しきつい。