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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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心が壊れても



「ごちそうさまでした」

あの後、伊吹は兄弟とともに須丸家に帰り、泊まって行きなさいという彼らの祖父の言葉に甘え、夕飯をごちそうになったところだった。

メールが来てる、と瑞がスマホを操作する。

「一之瀬が岡崎の母親に電話して、家に泊まるって伝えたって。一之瀬の母親からも伝えてもらったから、承諾してくれたみたいです」

よかった、と伊吹はとりあえず安堵する。

先ほど恐慌をきたした恵麻は、とても家に帰れる状態ではなかった。かといって伊吹らが連れて帰るわけにはいかないし置いていくわけにもいかない。そんな状況の中、郁がうちに泊まればいいと提案してくれたのだ。そこで紫暮が、恵麻の母親を安心させるために郁と郁の母親から連絡を入れるよう伝えた。もちろん彼女の状態をそのまま両家の母に伝えるのは憚られたから、部活で遅くなりそうだからという理由で。紫暮が言うには、どうやら恵麻は家族を頼れないらしいのだ。

さきほど注意して見てくれと言われたところにこの状況だ。伊吹も困惑していた。

「あいつ、人を寄せ付けようとしないんです。転校初日から。拒絶っていうよりは、関わるのが怖いみたいな」

瑞が言った。そんなタイプには見えないが。郁は席が隣なこともあり、何かと気に掛けているようだ。

「さっきは突然パニックになって。何もないとこ指さして、来るとか怖いとか…そういや、教室でもあったな。なんか見てびっくりしてひっくり返ってた」

来る、怖い。

「…なんか視えてるとか?」

つまり、幽霊のような。