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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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日直の仕事が長引いて、すっかり遅くなってしまった。神末伊吹(こうずえいぶき)が弓道場に入ると、いつもと少し違う雰囲気が流れていた。ざわついているというか、浮ついているというか。

「お疲れ様です」

挨拶をする部員達。その奥の端っこに、制服姿の女生徒が座っていた。見たことのない制服だ。長い髪、赤い唇。非情に大人びた綺麗な生徒だった。他校生だろうか。こういっては何だが、いろんな意味で弓道場にはそぐわない雰囲気だった。
一之瀬郁が彼女のそばで何か言って、手を引いて伊吹のもとにやってくる。背が高くて伊吹と同じくらいの視線の高さだった。短いスカートから伸びるすらりとした足はモデルのようだ。ざわついていた原因は彼女か、と伊吹は納得する。

「主将、同じクラスの転校生で、見学希望の岡崎恵麻さんです」
「岡崎です。見学をさせてください」

礼儀正しく頭を下げた彼女に、伊吹も同じように名乗った。

「主将の神末です。自由に見てもらっていいし、わからないことがあったら何でも聞いてください。射場は危険だから、行射中は入らないように気を付けて」
「わかりました。よろしくお願いします」

派手な少女だが、想像とは違って非常に静かでおとなしい。というより、暗い。物憂げな雰囲気をまとっており、隣にいる溌剌とした郁とは対照的だった。

「一年から的前に入るぞ」
「はい!」

伊吹が言うと先ほどまでの雰囲気が吹き飛び、ピリッと心地よい緊張感が戻る。それぞれがやるべきことを成し、昨日よりも成長するために己に向き合う時間だ。

「…何してんだおまえは」

瑞は両手で顔を覆いながら伊吹のもとに歩いてくる。

「俺はそんな破廉恥な男じゃないんです」
「わけわからんこと言ってないで、早く巻き藁いけ」
「うす」