小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

INDEX|19ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 

自己を映す鏡



翌朝。郁の隣の席は空いたままだった。朝練を終えて席に着いた郁は、恵麻のことを思って心配になる。予鈴が鳴ってしばらくしてから、恵麻は教室にやってきた。よかった、と郁は安堵する。

「おはよう岡崎さん」
「あ、おはよう」

挨拶してくれた。よかった。そして今日も超美人。綺麗。まつげクルクル。唇プルプル。鼻高い。そしていい匂い…。

「あの、なに」

しまったジロジロ見つめすぎた。郁は慌てて弁解する。

「ごめん!すっごい綺麗で見惚れてた…」

変なやつだと思われたかもしれない。少し驚いたような表情を見せた恵麻だが、少しだけ笑っ、てありがとう、と言ってくれた。

「でもこんなの…自分の本性を隠して守るための鎧だよ。あたし弱いから…こうでもしないと、やっていけないって思ってるの。情けないよね」

どうして、と郁は尋ね返した。

「めっちゃかっこいいと思うけど」
「え…そう?」

郁は素直にそう答えたのだが、恵麻は意外そうだった。大きな目をぱちくりさせて郁を見つめた。何かおかしなことをいっただろうか、と不安になったころ、恵麻はありがとう、と小さく言った。そして。

「あの、一之瀬さん」
「郁、でいいよ!」
「あ、じゃあ…郁ちゃん。部活のことなんだけどさ」

来週までに仮入部届をださなくてはいけないのだという。

「郁ちゃんの部活は?」
「弓道部だよ」
「へえ。厳しそう…」

でも楽しいよ、と郁は言い添えた。稽古は確かに厳しいし、礼儀作法や所作も細かくて難しい。でもそれ以上にやりがいがあるし、自身が成長していけることを実感できてうれしい。

「見学にくる?」
「え?いいのかな、あたしこんなナリだし…怒られない?」
「大丈夫だよ。興味あるなら大歓迎だよ。もちろん、見学したからって入部しなくてもいいんだよ」

じゃあ行ってみようかな、と彼女の表情が和らいだ。

「須丸くんは副将でね、うちのエースなんだ。須丸先生も指導に来てくれてるの。兄弟そろってすっごい上手なんだよ」
「そうなんだ…」

放課後一緒に行く約束を取り付けたところ、チャイムが鳴って数学教師が入って来た。今日も教科書を半分こする。ほんの少しだけ距離が近づいたようで、気持ちがうきうきする郁だった。
.