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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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深々と頭を下げて、教師が真摯な言葉で母親に言った。恵麻は呆気にとられて、つい「違う」と言いたくなる。悪いのは恵麻なのに。

「そんな…いいんです、先生。こちらこそ、御迷惑をおかけして申し訳ありません。わざわざありがとうございます…」

母も頭を下げて、申し訳ないと繰り返した。エレベーターまでお送りしなさいと母に言われ、恵麻は教師のあとについていく。

「ここまででいいから家に入りなさい。風邪ひくぞ」

廊下の途中で振り返った教師が言った。そっちこそ、恵麻に傘を差しだしていたせいで肩が濡れている。

「ほら、ちゃんと家に入るまで見てるから」
「うん…」

そうは答えたものの、足は動かせない。そんな恵麻を見かねたのか、教師は手にしていた鞄から何かを取り出した。手帳だった。そこにペンで何かを書きつけて、破ったページを恵麻に手渡す。

「俺の家の番号。何かあったらかけなさい」
「家電…?携帯じゃなくて?」
「携帯もってないから」

すごい普通に嘘つかれたんだけど…。

「ただし、何かあったときだけ」

そこは教師として線引きするのだろう。当たり前か。

「わかった…。てか、先生の名前、読めないんだけど。何丸?むらさきくれる?」

教師は、「すまる、しぐれ」と答えた。