紫に暮れる空 探偵奇談25 前編
「早く帰れよ」
「…はい」
立ち上がる。早々に立ち去ろうとするのを、教師は許さない。
「俺らはここからバスだけど。きみもここでバスを待っていたんじゃないのか」
「………」
「家はどこ」
「…いいじゃん、どこでも。もう、ほっといて」
あのなあ、と教師は呆れたように言う。
「さっきみたいなことになったらどうするんだ」
「………」
家には帰りたくないし、誰とも関わりたくない。どうしていいかわからない。挙句変な男に絡まれて、教師に怒られている。もう嫌だ。どうしてこんなことになるんだろう。
「帰りたくないんだもん…」
「…なんで。理由があるなら言って」
「………」
言ったところで、どうにもならない。
「兄ちゃん…ジドーソーダンジョアンケンとか、そういうんじゃないの」
ミルクティーの髪の男子生徒が言う。兄弟なのか…。
虐待をされていて、家に帰るのを嫌がっていると思われているようだ。
「そーゆうんじゃないから…」
作品名:紫に暮れる空 探偵奇談25 前編 作家名:ひなた眞白