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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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「え、ちょっとマジで大丈夫?」
「風邪ひくし、一緒においで」

無遠慮に隣に座った一人が、恵麻の肩を抱き寄せてきた。反対の手が明確な意思をもって太ももに置かれる。酒臭い。自分のことをこんな風に扱われることを、以前の恵麻なら絶対に許さなかった。だけどもう、何でもいい。どうでもいい。こんなことならいっそのこと。

(…わたしが死ねばよかったんだ)

「おい」

ドスの効いた恐ろしく低い声がして、隣の男が慌てて立ち上がる気配がした。恵麻が顔をあげると、そこには教師が立っていた。今朝、日本史の授業で見た男だ。以前の恵麻なら、あの先生かっこいいね、と友達らとはしゃいでいたと思う。同年代との恋愛に物足りなさを感じて、恋に落ちていたかもしれない。

「うちの生徒に何か用か」

授業中の穏やかさなど微塵もない、静かだが恐ろしく冷たい表情と視線に、恵麻も冷たいモノが背中に伝うのを感じた。怖い。怒っている。やべえ、と小さな声がして、二人が恵麻から離れた。へらへらと笑いながら、小走りで逃げていく二人組。

「まったく平日の夜から…」

憤る教師の後ろには、クラスメイトの男子もいる。帰り際、一之瀬郁に声をかけていた子だ。ふわふわとしたミルクティー色の髪が印象に残っている。恵麻と目が合うと、なぜか彼は自分の手で目隠しをした。

「…俺は絶対見てないから。断じて!」
「…何言ってんだおまえ。岡崎だな?大丈夫か」

頷く。