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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 前編

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雨に打たれて



雨の降る夜だ。駅前のバスロータリー。恵麻はそこで、何本もバスを見送っていた。スクールバッグを抱きしめて、少し肌寒くなってきた空気に体を震わせた。

どこまでも、わたしは逃げられない。たとえ引っ越しても、転校しても、海外に行っても、絶対に逃げられないんだ。

(家にも…帰れない…)

帰ったところで、待っているのは両親の冷たい視線。がっかりされた、では済まない。見放されたのだ。どこにも行く場所なんかない。どこまでも自分につきまとう「それ」と、孤独。これは罰だ。受け入れて、生きていくしかない。誰にも頼れず。

(あの子…)

隣の席の一之瀬郁のことを考える。関わることを拒否し続ける自分に、繰り返し優しい言葉をかけてくれた。懐かしい、と感じた。笑ったり、遊んだり、一緒に昼ご飯を食べたり、好きな男子の話で盛り上がったり。恵麻はもう死ぬまで二度と、そんなことをするのは許されないのだ。

「ねー、かわいいね」

二人組の男が声をかけてくるが、恵麻はもう何も感じない。絶望と、恐怖と、ほんの少しだけ残っている寂しい悲しいという気持ちしか。

「もう暗いからこんなところにいたら危ないよ」
「俺らとどっかいこ。ね?」

もう何も考えたくない。

「もう、許して…」

かばんを抱きしめて、許しを乞う。許されないことなどわかっている。それでも。

「ごめんなさい…」

謝っても、もう、取り返しなどつかないのに。