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思いやりの交錯

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 えりなに対して、自分がガチ恋をしているのかどうなのか、ハッキリとは分からないが、少なくとも、次回を考え、さらに、その先を定期的にということも考えていた。
 別の考えとして、
「今度は他の女の子にも会ってみたい」
 と思うものではないかと思ったが、その感覚はその時はなかった。
「なぜ、なかったんだろう?」
 とその理由をその時には分からなかったが、少し時間が経ってくると、分かる気がした。
 それだけ、精神的に落ち着きを取り戻してきたからだろう。
 その理由というのは、
「最初に指名した女の子が、急に体調不良」
 という理由で、指名を変えざるをえなかったからであろう。
 確か、名前、源氏名というのだろうが、
「あいり」
 という名前だったような気がする。
 今でこそ、頭の中いっぱいに、えりなが広がっているので、あの写真をすぐには思い出すことはできなかったが、何と言っても、最初に気になって選ぼうとしたのだから、実際の印象が消えてしまったわけではないに違いない。
「頭の中で、えりながいっぱいになっている」
 という感覚は、えりなの中で自分がいっぱいになったあの時の絶頂が、今は脳内で売り広げられていると思うと、
「これが、先輩のいう、ガチ恋なるものなのだろうか?」
 と感じたのだった。
 えりなに言われた通り、先輩に、あいりの話はしなかった。
 本当をいうと、喉の手前まで出かかっていて、言いたくて仕方がない状態に陥っていたのだ。
 えりなから忠告がなければ、間違いなく話をしていただろう。
 風俗の大先輩としての意見も聞きたかったのだが、せめて、近いことくらいは聞いてみたいと思うのだった。
 待合室を出て、歓楽街の中でも飲み屋街に繰り出すと、
「焼き鳥でも食いに行くか?」
 と誘われて、お腹もすいていたことと、焼き鳥をちょうど食べたいと思っていたことで、意気投合したと思い、二つ返事で、
「いいですy」
 と言って、焼鳥屋に入った。
 そこで、さっそく、
「先輩は、パネマジって知ってますか?」
 と、聞いてみたのだが、
「ああ、もちろん知ってるさ。パネルマジックのことだろう? パネルマジックというのは、店側の策略もあるけど、女の子を守るという意味もあるんだぞ」
 というので、
「どういうことですか?」
 と聞いてみると、
「宣材写真に加工を入れることで、女の子を綺麗に見せて、指名を取らせようという考えだよな。そしてもう一つは、女の子の身バレがないようにするためさ。身バレしてしまうと、女の子はもちろん、大変だけど、身バレしたから、店を辞めるしかないということになると、店の方も困るよな。だから、店は、結構そういうところにも気を遣っているという話なんだ」
 という。
 この話は、先ほどのえりなの話とほとんどかぶっていて、二度目に聞いた話だったが、初めて聞いたかのように、先輩には少しオーバーアクションで、
「そうなんだ。そこまで考えているって、すごいんですね」
 と答えたのだ。
「まあ、女の子にもいろいろ事情があるだろうからな。だから、店側も、事前に、身バレしないようにいろいろ細工をしていたりするんだよ」
 というので、
「どういう細工ですか?」
 と聞くと、
「例えば、店によっては、他の客と鉢合わせをしないように、店の構造を会わないようにしてみたり、帰りに通路で、客がガッチャン子しないようにするなどの細工だよね。客同士も気まずいし、女の子と自分に入ってくれていない客も気まずいだろう? まさかとは思うが知り合いなんかだったら、それこそ危ない」
 というのだ。
「他の細工としては?」
 と、今度は少し突っ込んで聞いてみた。
 先輩が、
「どうして、こいつ、こんなに執拗に聞いてくるんだろう?」
 と思うかも知れないが、ここまでくれば、そう思われてもいいような気がしていた。
 酒が入ってきたからだろうか?
「よく聞くのは、待合室にカメラが設置してあったり、マジックミラーになっていて、女の子が、自分につく客を、事前に確認して、知り合いでないかどうかを見分けるということもしているということだね。これは、女の子が教えてくれたことなので、間違いないとは思うんだ。女の子もそうやって自分を守ったりしているんだろうね」
 ということだった。
「そうですね」
「それにだ。もし、前の店で、しつこいNG客がいたりして、それで移籍したりしたのに、その客が粘着で追いかけてこないとも限らないだろう? いわゆるガチ恋客と言われるのだろうけど、そういう客への対策という意味もあるんだろうと思うよ。女の子はさすがにそこまでは言わなかったけど、それくらいのことは当然考えているだろうからね」
 と先輩は言った。
「こういう仕事は女の子も、店側も大変なんですね?」
 と聞くと、
「それはそうだろう。客にとっては、決して安いものではないんだからね。店側も客に対して、怒らせないようにしながら、毅然とした態度も必要なだけに、難しいんじゃないかな?」
 と、先輩は教えてくれた。
「なるほど、よく分かりました」
 というと、
「何か気になるようなことでもあったのか?」
 と先輩が聞くので、
「いいえ、別に」
 と答えたが、先輩は何か気づいているかも知れない。
 しかし、先輩は相手が言おうとしないようなことを、強引にでも聞き出すようなことはしないので、それを思うと、余計なことを言って、変に気かかりにされるよりもいいのではないかと思うのだった。
「ところで、お前は気になっている子とか、大学にいるのかい?」
 と聞かれて、
「いるにはいますが、まだ、それほど仲良くはなっていないので、これからだと思っています」
 というと、
「そうか。今日の経験が少しはお前を変えてくれるかも知れないな、もし、今日の経験で、一歩踏み出す勇気が持てたのだとすると、それはそれで嬉しい気はしてくる」
 と先輩は言った。
「先輩は彼女とかいないんですか?」
 と聞くと、
「いるよ」
 という返事が普通に返ってきた。
「彼女がいても、風俗にはいきたいものなんですか?」
 と聞くと、
「ああ、それはどうだろうね。彼女と風俗嬢とは違うものだと俺は思っているからな」
 というではないか。
「割り切っているんですか?」
 と聞くと、
「いや、割り切っているというのが、どういう意味なのか分からないが、精神的なところで割り切っているというのであれば、それは違う。どちらかというと、肉艇的なものと、精神的なものの間に割り切りがあるのだと言った方がいいかも知れないな」
 と先輩は言った。
「どういうことですか?」
作品名:思いやりの交錯 作家名:森本晃次