思いやりの交錯
「さようでございましたか。分からないことがあれば、何なりとお話ください。ご説明はさせていただきますから」
というではないか。
「ありがとうございます」
というと、
では、さっそくお話させていただきますね。うちはソープになりますから……」
ということで、詳しい説明をしてくれた。
「では、ご指名の方はございますか? 今すぐにご案内できる女の子は、こちらになりますが」
と言って、カウンターの前に大きなモニターがあり、そこに、写真付きで、女の子が映し出されていた。
そこには、年齢と3サイズ、さらに、アピールポイントなどが書かれている。
アピールポイントは、店の側からは、悪いことは決して書かないだろうから、あまりあてにならないような気がしたので、顔の雰囲気と、3サイズで選ぶしかないと思い、自分のタイプとしては、清楚で幼さの残るような女の子が好みだったので、写真の中で、少しぽっちゃり系に見えたが、いかにも癒し系の女の子にしたのだ。
「この子で」
というと、店の人も、
「お目が高い。ちょうど今人気が出始めた子ですので、きっとお客様のご希望に添えると思います」
ということだった。
お互いにニッコリと笑って、相手を見ると、
「うちは、新感覚が売りですから、きっと癒されると思いますよ」
というのだった。
身バレ
一通りの話を聞いて、お金を払うと、
「どうぞ、こちらが待合室になっております」
ということで、マサトは待合室に入った。
すると、そこには先輩がいて、他にお客さんが2人ほどいるだけだった。
2人であれば、待合室は広く感じる。一応禁煙ではないようで、電子タバコに限って、吸ってもいいことになっているが、マサトも先輩も吸わないので、気にならなかった。
他の二人も禁煙派なのだろう、ありがたいことであった。
それからすぐに、
「お客様、お待たせしました」
ということで、5分くらいの間に、最初に待っていたと思われる2人の客が案内されて入っていった。
待合室には先輩と2人だけになり、次第に緊張が増してくるのだった。
この時間が、実は風俗に通うようになってから、一番好きな時間だった。同じ思いを感じている人も少なくはないと思うのだった。
そのうちに今度は先輩の番になった。
「お待たせいたしました。どうぞこちらに」
ということで、先輩が連れていかれる。
一人残った待合室で、
「次はいよいよ自分の番だ」
ということになった時点で、スタッフが、困惑したような表情で、
「すみません、お客様のご指名された女の子が急に体調不良になりまして、申し訳ありませんが、別の女の子でもよろしいでしょうか? その分、値引きはさせていただきますが」
と言われた。
せっかく、気分を高めたものが、冷めていくのを感じたが、理由を聞けばしょうがないことなのかも知れない。しかも、その値引きというのが、次回以降に使えるサービス券で、
「本来なら、期限もあって、割引に条件もつくんですが、今回はこちらの問題ですので、この券はそれらの条件をすべて外した形でご利用いただけます」
ということであった。
「それなら」
ということで、もう一度女の子を選びなおすことになった。
実は、最初に選んだ子と同じくらい気になっていた子がいたので、その子を指名して、再度待合室で待つことになった。
指名してから、5分もしないうちに、
「お客様、お待たせいたしました」
ということで、自分の番がやってきたのだ。
「先ほどは失礼いたしました。今度は間違いございませんので」
ということで、いよいよご対面の時間となった。
待合室を出て、すぐ横に、ワインカラーのシックな色のカーテンがあった。その前に立って、
「これが当店における注意事項になりますので、ご確認ください」
ということで、確認を受けたあと、
「こちらのカーテンの向こうで女の子がお待ちです」
と言われ、自分でカーテンを開けて中に入った。
想像以上に薄暗く、女の子が、
「初めまして、えりなです。よろしくね」
と言って、いきなり身体を密着させてきた。
「あっ、こちらこそ」
と言って、彼女に連れられて、お部屋に入るのだが、その手前で、
「こちらで、入浴剤が選べるんですが、どうされますか?」
ということだったので、
「じゃあ、新緑で」
と、5種類ほどある中で、新緑を選んだ。
まるで、森の中にいるかのような気分になれそうな気がしてそれを選んだのだ。しかも、パネルで見た彼女のイメージが、
「森の妖精」
という感覚があったので、新緑にした。
パネルの宣材写真の頭に、まるで、オリンピックで金メダルと取った選手がつけるような草でできた冠のようなものをかぶっているのを思い出したからだった。
部屋の中に入ると、えりなちゃんは、笑顔で迎えてくれて、いきなりハグしてくれた。パネル紹介で身長が高いのは分かっていたので、気にならなかったが、確かに、スラっとした感じの清楚さが前面に出た感じだった。
最初に選んだ女の子、たしか、あいりと言ったか。彼女ほど、幼さはないが、その分、大人っぽさが垣間見え。癒しを得られると感じたのだ。
今まで自分が好きになった女の子は、幼い系で、少しぽっちゃり系が多かった。最近気になる女の子もそうで、実は、好きだということを告白までしていた。返事はまだだったが、好印象という感覚はあった。
だからこそ、余計に早めに童貞を卒業したいという思いもあったのだった。
えりなちゃんは、すぐにいろいろ用意をしていた。
「お茶でも飲みますか?」
と聞かれたので、
「うん、そうだね」
というので、彼女は冷蔵庫から、ペットボトルのお茶を、紙の容器に入れてくれて、一息つかせてくれた。
「お兄さんは、こういうお店初めてなんでしょう?」
と言われて、
「うん」
と答えたが、どうやら、情報はスタッフからいっているようだった。別にそれが嫌だと思うことはない。むしろ、知ってくれていた方が、恥ずかしいことを口にしないで済むからだ。
「嬉しいわ。私、結構初めてのお兄さんに当たること多いのよ」
と言って笑っていた。
そういうことなら、男としても安心だ。きっと、手取り足取り優しくしてくれるだろう。それに先輩からも、
「別に気を張る必要なんかないんだ。相手のいう通りにしていれば、悪いようにはしないさ」
ということを言われていた。
実際に、彼女は次第に積極的になっていく。キスをしたり、その間、こちらの手を遊ばせないように自分の手で、自分の身体に導いてくれたりした。
自分の手が動くたびに、気持ちよさそうな声を挙げる彼女を見ていると、さらに興奮がこみあげてくるのだった。
初めてなくせに、なぜか初めてではないような気がしてきた。どちらかというと、
「何回も、この店に来ている」
というような気がしてきて、さらに、他の店も同じような作りなのではないかと勝手に思い込んでいた。
「じゃあ、お風呂に行きましょう」
と言って、お風呂に浸かると、
「気持ちいいでしょう? さっきの新緑の香りがしてきて、私も、結構この匂い、好きかも知れない」