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思いやりの交錯

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 と感じた。
 マサトは、モヤモヤした気分で、その日は帰途についたのだった。

                 大団円

 マサトは、実際につかさの後を追ってみることにした。あまり露骨にやると、本当に警察に通報される可能性もあるので、ある程度の距離を置くことと、最終的に、彼女がお店に出勤時間前に入店するかどうかを見極めればいいのだから、もし見失ったとしても、お店の近くに、出勤前にいれば分かることだった。
 もちろん、こんなことはしてはいけないということを重々分かっていながら、しているという意識はあった。意識がなければ、本当のストーカーだからである。
 彼女の様子を見ていると、大学にいる時は、本当に真面目な文学少女という雰囲気であった。
 彼女には、この間の最初に見せていた。下ばかりを向いた、いかにも暗いと思わせる性格と、自分の興味のあることには、我を忘れたかのように前のめりになるその姿は、年相応だった。
 だが、一人でいる時の、
「おそらく、素の姿なのだろう?」
 と思われるその姿を見ていると、年齢よりもかなり若く見えて、幼さすら感じさせるのは、真面目さが本当の彼女なのだろうということを感じさせるからだった。
 授業を受けていない間は、図書室で、本を読んでいるか、勉強室でパソコンを使って作業をしているかだった。
 パソコンを使っている時は、小説を書いている時だろう。今までに見たこともないような真剣な表情が滲み出ていた。
 それなのに、幼さを感じるのだから、彼女の本当の顔がそこにあるのだと思わせるものだったのだ。
 彼女はパソコンを打っている時と、本を読んでいる時間を繰り返している。
「たぶん、小説を書いている時間が本当の目的で、本を読んでいるのは、他の人がいうところの休憩時間なのではないだろうか?」
 と思うほど、本を読んでいる時はリラックスしていた。
「本を読むのに、これほどリラックスした表情もない」
 と思うほどのその雰囲気に、マサトは圧倒されたような気がした。
 そんな彼女を見ていると、
「ソープ嬢ではないか?」
 と感じたことが悪かった気がした。
 もし、そうだとしても、違ったとしても、そのことで彼女に対する気持ちが変わることはないだろう。
 ただ、つかさに対して、
「俺の彼女になってほしい」
 という感情はなかった。
 きっと、つかさとは、友達以上恋人未満くらいの関係がベストではないかと思えた。友達以上にはなりたいが、恋人になってしまうと、彼女に求めているものが消えてしまいそうな気がしたからだ。
 彼女にするということは、
「自分が求めているものが分かってはいけないのではないか?」
 と思っていた。
 今のように、漠然としてであるが、彼女に教えてほしいと思うことや、癒しを貰いたいというような感情を抱いたということは、
「きっと、彼女にまではしたくない」
 という感情の表れなのではないかと思うのだった。
「つかさって、見ているだけでいいというか、言い方は失礼かも知れないけど、ひな壇に飾っておきたいと思うようなタイプなんだ」
 と、先輩が昨日言っていた。
 それは、まだ、つかさに会う前だったので、
「それって、どんな心境なんだろう?」
 と思い、まるで自分の娘のように、
「目の中に入れても痛くない」
 という感覚になるからではないか?
 とまで考えたほどだった。
 そのことを思い出しながらつけてくると、
「自分もつかさの正体が、思ったよりも早く分かりそうな気がしてくるのではないか?」
 と、思うのだった。
 ずっとつけていると、ある瞬間から、
「あれ?」
 と感じる時間があった。
 それは、あいりが出勤する時間の約30分くらい前のことだったが、急に大人っぽく感じられた。
 顔が見えるわけでもないのに、どうしてそういうことを感じるのかというと、歩き方に妖艶さが感じられたからというのと、もう一つあったのだが、すぐには分からなかった。
 だが、店に近づいていくうちに、
「何か懐かしい」
 という思いがしたからで、それは、数日前に訪れたお店の近くまできたことで、お店に来たことが、
「まるで、昨日のことのようだ」
 と感じたことだった。
 あの時は先輩と一緒だったが、
「近い将来、もう一度、今度は一人で来ることになるんだろうな?」
 と感じたことだったが、それがまさか、女の子を追いかけてこの近くまでくることだとは夢にも思っていなかったはずだ。
 単純に、
「あのお店に、あるいは、ついてくれた女の子に嵌るかも知れない」
 と思ったからで、実際に、えりなとは、
「最低、もう一度は会ってみたい」
 と思ったのは事実だった。
 しかし、それは、
「ソープのサービスを受けてみたい」
 と思ったというよりも、
「彼女の口から、この業界の話をいろいろ教えてもらいたい」
 と感じたからだった。
 その思いが、強く、自分がソープを好きになったのは、実際に女の子から受けるサービスというよりも、
「お店に来るまでの間や、待合室で待っている時のドキドキ感を味わいたいからではないか?」
 と感じるからだった。
 話は変わるが、勝負事などでもそうではないか?
「実際の勝敗は、勝負の場に出る前の準備段階でその勝負はついていると言われている」
 という話を聞いたことがあったが、今ならその時の言葉の意味が分かるような気がするのだ。
 カーテンを開けて、女の子と対面した時が、精神的な絶頂ではないかと思う。そのことを、
「有頂天だ」
 というのだと思うのだ。
 有頂天というと精神的な絶頂であり、実際に肉体的な絶頂が訪れた時のような、
「賢者モード」
 に陥ることはない。
 だから、精神的な絶頂は目立たないのだが、その感情はしみついているはずなのだ。その思いがあるから、賢者モードに何度も陥っているにも関わらず、
「また、ソープに行こう」
 と感じるのだろう。
 その件に関しては、以前先輩から聞いたことがあったのだが、何しろまったく行ったことも経験したこともないのだから、話を聞いてもピンとくるはずはないのだった。
 それを思うと、この間遭ったえりなの存在が自分の中で大きくなってくるのを感じたが、
「ずっと指名することはないだろうな?」
 と思ったのは、女の子を飽きることになるということが分かっている感覚と、
「肉体的な絶頂と、精神的な絶頂である有頂天という感情が離れたところにあるのではないか?」
 と感じたことだった。
 ただ、今回の心にもないと思えるような行動で、つかさがあいりだということは判明した。
「一体、俺はそれが分かったというところで、自分の中の何を知りたいと思っているのだろうか?」
 と感じたのだ。
 次の日になって、マサトは先輩から呼び出された。
 行ってみると、先輩は今までにないほどの真面目な表情をしていたので、思わず臆してしまう自分に気が付いた。
「お前は、昨日、つかさのことをつけていなかったか?」
 といきなり言われて、ビックリして顔は紅潮してしまい、何もいい返せなくなった。
 完全に金縛りに遭ってしまった感覚で
「どうしてそれを知っているんですか?」
 と聞くと、それには答えずに、
作品名:思いやりの交錯 作家名:森本晃次