小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

思いやりの交錯

INDEX|19ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 

 と、先輩はその話を聞いて、理解できたのか、感動しているようだった。
 さすがに、自分ではまだ小説を書いてみたことがないマサトには、この発想はすぐにピンとくるものではなかった。
 しかし、冷静になって考えていくうちに、いろいろ出てきた話が、それぞれに接点があり、繋がりを見せているのを感じると、
「つかささんの話には、一定の信憑性があるに違いない」
 と感じるのだった。
 そんなことを考えていると、徐々につかさという女性が、神秘的に思えてきて、さらに、最初のように、顔を下に向けていた態度が、今は完全に前を向いているのだが、
「たぶん、さっきの下を向いていて気づかなかった顔や雰囲気とは、今はまったく違う人物になっているんだろうな?」
 と感じるのだった。
 そう思って、今のつかさを見ていると、
「どこかで見たことがあるような気がするんだよな?」
 と感じた。
 そう思えば思うほど、遠い過去ではなく、
「実につい最近のことではないだろうか?」
 という思いがこみ上げてくる。
 その思いが次第に募ってくるのだが、簡単に思い出せない気持ちは、まるでさっきの昔読んだ小説が思い出せない感覚に似ているから不思議だった。
 最近、女の子と急に話をするようになったなどということがあったわけではなかった。ただ、思い出そうとすると、懐かしさのようなものがこみあげてきて、癒されているという感覚がったのだ。
 それが、えりなのことであるということに気づくまで、かなり時間が掛かったのだ。
「そういえば、最初に指名した、たしか、あいりという女の子だったと思ったが、本当にどうしたんだろう?」
 と思った。
「えりなさんで癒されたんだから、忘れてしまえばいいのに」
 と思ったが、なぜか忘れられない。
 いや、忘れようと思えば忘れられたはずなのに、急に忘れられなくなっていたのだ。それが、つかさを見た時だと思った時、
「まさか、つかさがあいりなんじゃないだろうか?」
 と思ったのだ。
「いや、まさか、そんなことがあるはずない」
 と思い、打ち消そうとすればするほど、つかさだったと思えて仕方がない。
「だったら、なぜ、俺の相手をわざわざ拒否したのだろう?」
 と思った。
 体調が悪かったというのであれば、今日もまだ調子が悪くても仕方がないというものだが、だったら、誘われたからと言って、ノコノコ出てくることはないだろう。
「ごめんなさい。体調が悪くて」
 と言えば済むことのはずだ。それなのに、わざわざ来るということは、どういうことだというのだろう?
 もう、ここまでくれば、あいりがつかさだったということを否定できなくなってきた。どうして拒否されたのかを解明しないと納得がいかない。もし、それが事実でなかったとしても、自分が納得いくように感じられるかどうかが問題だったのだ。
 その時思ったのは、
「あいりが待合室で勘違いした?」
 と感じたことだった。
 最初、待合室にいたのは、先輩だったので、あいりが待合室で一人でいる先輩を見て、
「あっ、まずい」
 と思ったのかも知れない。
 もし、相手がマサトだったとしても、知り合いの連れてきた人だということになれば、まずいと思うのは当たり前のことである。
「だけど、先輩はここも常連だったと言っていたので、いくらパネマジの写真を見たとしても、先輩ならすぐに分かりそうなものだ」
 と思った。
 実際につかさとは小説のことでいろいろと話をすることもあるので、面識は完全にある。気づいていたのかも知れないと思うと、今回、マサトにつかさを紹介しようというのは、どういうことなのだろうか?
 マサトは先輩が何を考えているのか分からなかった。
 ただ、先輩ほどの人であれば、もし、つかさが風俗で働いていたとしても、それをわざわざ公表したり、問い詰めたりすることはないだろう。
 そんなことをするのであれば、もっと早くからしていることだろうし、話をしていれば、何となく分かることのように思えた。
 だが、今日のつかさを見ている限り、とても風俗嬢には見えない。
「まさか、誰か男に騙されたか何かして、働かされているのではないか?」
 ということまで考えた。
 最近は、学生が多かったりするということなので、なぜ風俗で働かなければいけないのかということは詳しくは知らないが、前に先輩が教えてくれたこととして、
「風俗嬢が堕ちていくパターンとして、ホストクラブが絡んでいることが多いからな。Vシネマなんかでも、風俗嬢の話の中に、ホストが出てくることも結構あってな。ホスト業界というのも、ものすごく生々しいもので、ナンバー1になりたいと思っているホストは、女にどんどん貢がせて、借金まみれにさせて、それを返済させるために、ソープを紹介するという流れがあるらしい。だから、男がソープでお金を払って、癒されたとしても、嬢の中には、ホストのせいで、さらに、そのお金がそのまま、ホストクラブに流れるという仕掛けなんだよ。女も、ホストに溺れるというところだよ。それは、風俗に金を払う男とは、違った生々しさがあるらしい。今度、そんなVシネマ、見せてやるよ」
 と言って、先輩から、見せてもらったが、想像以上の生々しさだった。
 ドラマだと分かっていても、見ているとムカついてくる。そんな映像だった。

                 ストーキング

「先輩は、よく知っていますね?」
 と、聞くと、
「ああ、結構詳しくなったものだよ。映画や雑誌、だけど、それだけじゃないんだ。もっとリアルな情報ソースと持っているからね」
 と以前言っていたが、それは、きっと、風俗嬢から聞いた生の話だと思っていた。
 しかし、この日、実はそうではなく、それ以外にも斬新な情報ソースを持っているのだと知った。
 先輩が、ソープの話を始めたのだ。
「せ、先輩」
 と目配せをしたが、先輩の話は止まらなかった。
 先輩は話始めると止まらないところがあり、彼女さんもそのことはよく分かっていて、いつも苦笑いをしていたのだ。
「ソープっていうと、なかなか最近は、粒揃いでさ。この間、こいつを初めて連れていったんだけど、やっと立派に卒業できたんだよ」
 と言って、先輩は笑った。
 彼女さんも、
「そうなんだ。おめでとう」
 と言って、ニコニコしている。
 この彼女さんは、先輩のいうことなら、少々のことは許容範囲のようで、ソープに行くことをまったく避難することはなく、それよりも、以前話してくれたこととして、
「他の女性に本気になられるよりは、ソープで遊んでくれた方が気が楽なのよ。彼はソープ嬢に本気になることはないと思うの。だって、飽きやすい性格だし。何よりもその理由は、私が一番分かっているのよ。だから、安心なの」
 と言っていた。
「何を分かっているというのだろうか? 安心できるほどに分かっているということは、それだけ先輩のことが分かっているということであり。これだけいつも遊び歩いている先輩に嫉妬などしないのだろうか?」
 と思った。
 ただ、彼女さんを見ていると、別に嫉妬をしている様子はない。本人の言っている通り、安心していると言ってもいいようだ。
作品名:思いやりの交錯 作家名:森本晃次