小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

思いやりの交錯

INDEX|12ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 

「さっき言っていたいろいろな効果だったり症候群の中では、フランケンシュタイン症候群は分かる気がする。理想の人間を作ろうとして、悪魔を作ってしまったことで、人間のためになると思って作ったロボットやアンドロイドなどが、逆に人間を征服するのではないか? と考えることだろう?」
 と先輩がいうので、
「ええ、そうですね。ちなみにサッチャー効果というのは、上下逆さにした時に見え方が違って感じられるような効果を、前の英国の首相である、マーガレット=サッチャーから取った効果です。ウェルテル効果というのは、自殺の流行は、新聞や雑誌などによる誇大宣伝によって、後追い自殺のようなものが流行するというような話で、もう一つのカプグラ症候群というのは、自分の親戚は家族などの近しい間柄の人間が、実は、悪の秘密結社のような連中に誘拐され、悪の秘密結社が送り込んだ別人によって入れ替えられているという妄想を抱くことだということなんですね。それぞれに、謂れがあって、先ほどのフランケンシュタイン症候群などと一緒で、小説のネタになりやすいものなんじゃないかって思います」
 というと、
「そうだね、フランケンシュタイン症候群や、カプグラ症候群というものは、実際に似たような小説も読んだことがある。小説の中では、それぞれの症候群のことを描いたということは書いていないんだけど、話としては酷似している話だよね。これは小説だけではなく、マンガや特撮なんかでも使われそうな題材に思えるんだ」
 というのであった。
「カプグラ症候群というものと似たものに、フレゴリ症候群というのがあるんだけど、こっちは、誰を見ても、それを特定の人物だとみなしてしまう現象らしいんです。カプグラ症候群は、知っている人が知らない人と入れ替わっているものに対して、フレゴリ症候群は、知らない人を知っている人間とみなすというある意味反対のことだというんですよ。これって実は反対の意識なんだけど、それぞれに精神疾患があるというところが興味深いところではないかと思うんです。そういう意味では、どちらも、小説やマンガのネタになりやすいですよね?」
 ということであった。
「それは言えるだろうね。俺も似たような小説を書いたことがある。なかなか文才がなくて、思ったような結末にはならなかったんだけどな」
「今度読ませてください。僕も先輩の話を聞いていると、自分でも小説を書いてみたくなりました」
「うん、書けばいいんだよ。いくらでもな。まずは、自分が納得できる作品を書くことだ。最初から人に読んでもらおうなんて思って書くのは敷居が高いからな。だって、人に楽しんでもらおうと思って何かを作るのに、自分が楽しくなければ、面白いわけはないだろう? 要するになんだってそういうことなんだと俺は思うんだ」
 と先輩は言ってくれた。
「今度、小説を書くのが好きな人を紹介してやろう。俺もその人の影響を受けて、小説を書き始めたんだ」
 というではないか。
「その人って誰なんですか?」
 と聞くと、
「実は女性なんだよ。俺の彼女の親友だということなんだけど、結構、奇抜で幻想的な発想を持っている人で、元々は幻想的な絵を描くのが好きだったというんだけど、そのうちに小説でも、幻想小説を読むようになって、オカルトのような世界に興味を持ったというんだ。だから、俺もすっかり影響を受けたというところさ」
 と先輩が言った。
「僕も、何か趣味を持ちたいと思っていたんですが、子供の頃から本を読むのは好きではなかったんだけど、文章を書いてみたいという願望はあったんですよ。何か矛盾した考えに思えるんだけど、それはそれでありではないかと思うようになったんですね」
 というと、
「そっかそっか、それは彼女にぜひ会ってほしいよな。俺も同じように、文章を読むのが苦手だったんだけど、彼女の話を聞いているうちに書けるようになってきたんだ。絶対に聞いて損はない話だと思うぞ」
 と、先輩はすっかり、自分のことのように喜んでいる。
「俺も最近、ちょっとアイデアが浮かんでこない時が多かったので、彼女にまた話を聞いてみたいと思っていたんだ」
「でも僕に話をするのなら、先輩にした話の反復かも知れませんよ?」
「それでもいいんだ。だが、俺はそうではない気がする。だって、相手が違うんだから、話の内容が違うと考える方が自然ではないか?」
 と先輩はいうのだった。
「僕もぜひ会ってみたいですね。その人は同じ大学なんですか?」
 というと、
「ああ、そうだよ。学部は文学部なので違うけどね」
 マサトと先輩は経済学部なので、学年は違っても遭う機会はあるが、文学部だと、そう会うことはないかのように思われた。
「じゃあ、今からちょっと彼女に電話を入れてみよう」
 と先輩はかなり乗り気だった。
「今からですか?」
 と、気持ちはまんざらでもないマサトがいうと、実に楽しそうに、
「善は急げというだろう?」
 と言って、先輩はさっそく電話を掛けに席を外した。
「やれやれ」
 と先輩の性格は知っているつもりだったので、一応想定内の行動だが、それだけに、マサトとしては、ありがたい気分であった。
 5分ほどして戻ってくると、
「彼女に連絡すると、ちょうど、その子も一緒にいたので、さっそく明日4人で会おうということになった。これだったら、お前も気兼ねすることはないだろう?」
 と言われたが、実は、却ってこっちの方が緊張する気がした。完全に、一対一が二組できるという計算になるからだった。
 その日は、もう少し飲むのかと思ったが、話が急展開したことで、先輩の中では、ソープや、マサトの童貞卒業という「儀式」については、すでに過去のことになっていたのだろう。
 少し寂しい気もしたが、
「これが先輩のいいところでもあるので、これはこれでよしとしよう」
 と、マサトは思ったのだ。
「明日、午後3時に、大学の生協のところで待ち合わせをすることにしたんだが、大丈夫だよな?」
 と聞かれたので、
「はい、大丈夫です」
 と答えた。
「最初は、彼女も、少し躊躇があったということのようなんだけど、でも、俺の彼女が一緒だということなので、OKしてくれたようだ。人見知りなところがあるようなことは聞いていたので、そのつもりでいてやってくれ」
 と先輩は言った。
「おや?」
 と、マサトは思った。
「小説を書こうと思うほどの影響を受けたという話だけど、性格を把握していないということは、それほど親しいというわけではないのかな?」
 と思った。
 それは、先輩という人が、
「すぐに人の性格だったりを把握することに長けていると思っていたけど、実はそうでもないのかな?」
 と感じたからだった。
「あくまでも、男性だけのことであって、女心はさすがの先輩にも分かりかねるんだろうか?」
 ということを考えると、ソープ嬢のことを今日詳しく話そうとしなかったのは、
「思ったよりも、女性の心を把握しているわけではないので、そのことを聞かれるのが気になったからなのかも知れない」
 と感じたからだった。
 ただ、そう思うと、これまでの先輩の行動や態度に、そのことを感じさせることが、時々あったような気がした。今日の童貞卒業という
作品名:思いやりの交錯 作家名:森本晃次