夜が訪れるとき 探偵奇談24
「閉じ込めて、意地悪なことして、絵だからいいだろうって身勝手な感情をぶつけて。あんたには何の力も権限もない。彼女は帰るべき場所に帰る。あんたの身勝手な感情の押しつけはもうおしまいだ」
だんだんと、瑞の言葉に力と感情がこもってくる。瑞は怒っている。
「あんたにこそ救いなんてないんだ。一生そうして恨んで憎んで、一人ぼっちでいればいい。生身の人間には何も出来ない癖に、この卑怯もんが!!」
ものすごい剣幕でそう怒鳴ったかと思うと、瑞は紫暮の目の前で思い切りかしわでを打った。ものすごい音がして、一瞬紫暮の身体がふらついた。そののち拳でドンと胸を突かれたかと思うと、ふっと身体が軽くなった。嘘のように、まとわりついていた気だるさや不安感が消えた。
「…明日俺も、その絵を見にいくから。今日のところは寝て」
そう言うと瑞は電気を消し、さっさとベッドにもぐりこんでしまった。紫暮はしばらく立ちすくんでいたが、ありがとうとそれだけようやく言った。
「…ばあちゃんにも、ちゃんとお礼言わなきゃダメだよ」
扉を閉める直前に、瑞がそう呟くのが聞こえた。
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作品名:夜が訪れるとき 探偵奇談24 作家名:ひなた眞白