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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜が訪れるとき 探偵奇談24

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「その絵ね、たぶん生きてる」

瑞は静かに話し始める。

「俺は実物見てないから何とも言えないけど…まあ夢の中では見たけど。前に颯馬が言ってた付喪神の話、覚えてる?あれに似てる。実態のない絵が、魂を持ったんじゃないかな」

人形や道具ではなく、絵の中の人物が魂をもつだって?にわかには信じられない話だが、紫暮は黙って耳を傾けた。

「それがたとえ架空のものであっても、形を与えられて、強い感情を向けられて、魂をもったんだよ」
「強い感情…?」
「兄ちゃんに憑いてる男…たぶん絵を描いた人なんだけど、そいつが絵の中の女をすごく憎んでる。絵の中に閉じ込めて、暗い部屋に閉じ込めて、それを外から眺めて悦に入ってる。おまえはもう出られない、帰る場所はここなんだって」

でも、と瑞は目を閉じて耳を押さえ、俯いて苦しそうに声を絞り出す。

「絵の中の人は諦めてない。外に出てやるってずっと機会をうかがっている。男はずっとそれを否定してる。絵の中で二つの魂が生きてる。生きて、意思をもって見る人を歪めるんだ。兄ちゃんも」

絵の中の女を恨み、その恨みによって絵の中の女が意思をもつ…。信じられないような話なのに、紫暮は自然と納得していた。

「…兄ちゃん立って。これは兄ちゃんに言うんじゃないからね」

瑞が逡巡したのちにベッドから出て紫暮の前に立った。

「あんたの願いは叶わない」

まっすぐな視線が眉間を突き抜けていくようだ。しなる力強い声に、紫暮は体を動かせなかった。瑞は人差し指を紫暮に突きつけて、責めたてる様に続ける。